小島健輔の最新論文

商業界オンライン 小島健輔からの直言
『コンビニの未来は断捨離が開く』 (2018年05月15日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 セブン-イレブンが北海道で実験運用していたスマホ注文で宅配する「ネット・コンビニ」の全国展開に乗り出す、という報道に接した第一印象は『またか!』という想いだった。商品販売やフードサービスという“本業”にさまざまな付帯サービスを加えて「銀行窓口」兼「チケット屋」兼「宅配窓口」兼……と『何でもサービス屋』化してきたコンビニに、またも新たな労働負荷を加えるのかの思うと、FC店の疲弊を無視した本部の植民地支配的収奪体質に一石を投じたくもなる。

  需要の伸びを上回る出店競争でコンビニ各社は客数減が続き、人手不足と人件費の上昇で省力化投資を急いでいるが、セルフレジやスマートバスケットなど無人精算が先行してマテハン軽減が後回しになっていることに加え、本質的な議論を欠いているように思われる。目先の売上確保に夢中で『コンビニの役割とは何か、ザーとジーの関係はどうあるべきか』という本質的問いを棚上げしたまま次々と付帯業務を加え、加盟店の労働負担を肥大させてきた歴史にピリオドを打つときがきたのではないか。

まずキャッシュを捨てよう

 売上げをどう伸ばすかはともかく、コンビニ運営が直面する最大の課題は人手不足と苛重なオーナー労働、繁忙時のレジ作業(客側からはレジ待ち)だ。その解消を期待されるのがセルフレジだが、ICタグか画像認識AIで瞬時に一括読み取りして袋詰めまで自動化するならともかく、バーコードスキャンやスマホ操作など顧客にややこしい作業を強いてはかえって手間取りかねないし(お客さまは若い人ばかりではない)、バイトスタッフにもスキルの習熟が必要になる。それもICカードなどワンタッチの無人精算ならともかく、現金を受け付ければ手間取るしキャッシュレスにならない。

 現金を扱えば警備や精算業務が避けられず、「コンビニ払い」を止めない限り現金管理業務は無くならないし、ATMを併設する限りキャッシュレス化は実現しない。現金扱いを全て止めてしまえば人が張り付く業務が減ってコンビニは画期的に効率化できるし、さまざまな犯罪の舞台となるリスクも激減する。まずはキャッシュを捨ててはどうか。

ラストワンマイルも捨てよう

 キャッシュレス化してもカウンター業務の多くが残ってしまう。それは「受取」「発送受付」など雑多な付帯サービスとファストフーズ的パントリー業務だ。

 ECが年々拡大し生活に追われて在宅受け取りが難しくなる中、コンビニの限られた運営人員とスペースでEC商品の「コンビニ受取」に対応するのは限界がある。「受取」だけでなく返品など「発送受付」もカウンター業務を滞らせて待ち列発生の要因となるし、荷物を保管するスペースも要する。ましてやネット・コンビニで在庫確認など受注対応やピッキング、店出荷まで求められては労働負荷が限界を超えてしまう。セブン&アイはイトーヨーカ堂のネットスーパーで店舗ピッキングの限界を知ってダークストア開設に至ったのに、その経験はなぜ生かされないのだろうか。

 店はフルフィルセンターではないのだから、コンビニにECのラストワンマイル拠点を期待されても、FC店から見れば手間の割に手数料が安いお荷物業務で、オープン型のPUDOや付加価値型のTBPPが普及すればコンビニの役割ではなくなる。ならば切り捨てるのが正解だ。

フードサービスは捨てられない

 お弁当のレンジ加熱や飲料のサーブなどはセルフサービスにできても、ファストフーズの最終加工パントリー業務は中食の拡大とともに増加するし、イートインのスペースを設ければクレンリネスの手間もかかる。ファストフーズ対応を広げれば作業量は増え続けるばかりで人手不足解消からも遠ざかるが、今やコンビニの集客と売上増進を支える屋台骨であり、何より付加価値が大きい。人手はかかっても見合う付加価値があり、付加価値を欠く受付・受取・支払いなど雑多なサービスを断捨離する分、収益の柱として捨てるわけにはいかない。

 今後も中食対応は広がり続け、コンビニとファストフーズ店の境界は限りなく曖昧になって行くから、さまざまな自動サーバーや自動食洗機、クイックパレットやダウンウォールなど省力システムの導入が急がれる。

急がれるマテハン労働の軽減

 コンビニに限らず店舗運営労務の大半を占めるのが搬入・棚入れ・補充・在庫管理などのマテハン業務だが、無人精算に比べれば業界の関心は薄い。そんな中、ファミリーマートが全1万7000店にスライド式陳列棚や後方自動補充陳列棚を導入すると発表したことが注目される。

 マテハンの省力化・自動化は物流センターが先行しているが、なぜか店頭では本気で取り組まれてこなかった。最低時給と大差ない時給でアルバイトが確保できた往時の感覚を引きずってきたからだろうが、自動化が難しいことも要因と思われる。搬入用の台車と仕分けパレットが活用される程度で、搬入・棚入れ時にはスタッフの作業が手間取ってお客のピッキングを妨げるという弊害も無視できない。理想は棚後方からの自動補充だが、後方回廊にスペースを取られてコンビニでは非現実的で、缶飲料など部分的な活用に留まる。スタッフの省力化にも補充時間(同時に顧客ピッキング妨害時間)の短縮にも棚入れ作業の効率化は急務で、ファミリーマートの取り組みは評価に値する。

 売上げを稼ぐためFC店の労働負担に目を瞑って付帯サービスを広げてきたコンビニだが、人手不足とFC店オーナーの労働負担が限界を超える中、コンビニの未来はFC店の“労働価値”を全ての基準とした業務の効率化と付加価値化、それができないサービスの断捨離に尽きると心得たい

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