小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年09月14日付)
『退店戦略とポップアップストア』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 9月のSPAC月例研究会は毎年、出店戦略をテーマに開催して来たが、近年は出店より退店の方が多くなり、今年は実質、退店戦略とポップアップストアをテーマにする事態となった。
 テナントチェーン側には出店の抑制と出血の少ない退店、出店費用も(退店費用も)運営費用も嵩む常設店舗よりショールーミングなポップアップストアと提ずる一方、デベロッパー側にはC&C対応とポップアップストアの積極的な受け入れを働き掛けるという場になってしまいそうだが、それが現実なのだから致し方ない。
 『売れない店をどうして出店するの? 投資すべきは店よりECではないの?』と幾度も警鐘を鳴らして来たが、成長を競う業界は後先考えず皆で危ない橋を渡り、売れない店を増やし売れない商品を大量に調達し続けた。その結末が大量閉店と売れ残り在庫の山となったが、過てる10年、いや四半世紀の清算はこれからが本番だ。今年上半期は15〜16年に較べれば退店も一段落したように見えるが出店も限られ、来年以降は再び退店ラッシュとならざるを得ない。
 欧米の先行企業はECに投資を集中して店舗網の計画的縮小に転じているし、ユニクロとて国内店舗はECを拡大するに連れピークの841店から790店まで絞り込んでいる。販売不振で行き詰まる外資ファストファッションも不振店舗の整理撤収が避けられず、来年は退店が本格化するだろう。
 外資チェーンを筆頭にタグにQRコードを印刷して自社サイトに飛ばすのが当たり前になり、ショールーミングによる課金漏れは無視できない規模になりつつあるにも拘らず、大多数の商業施設デベは厳しく締め付けるか野放しのままで、店舗とECが一元一体の購買利便を提供するC&Cをサポートする体制にはほど遠い。
 このままではECが流通の主役となって損益分岐点の高い店舗販売は行き詰まり、テナントチェーンはECに主軸を移すにしても、商業施設デベは存続の基盤を失ってしまう。そんな危機感にはほど遠いのが恐ろしい。

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