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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『止まらぬZOZO離れが屋台骨を揺るがす』 (2019年03月04日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 ZOZOARIGATOを契機とした出店アパレルの離反が止まらぬZOZOだが、とうとう屋台骨を揺るがす状況になってきた。NBアパレルの離反は売上規模の大きい大手セレクトの離反につながりかねず、再度の業績下方修正はおろか減収も現実味を帯びてきた。

NBアパレルの離反でドミノ倒しが始まる

 オンワードやライトオンに続き、アウトドアの人気NB「ザ・ノースフェイス」が2月18日でZOZOTOWNでの販売を止めた。最大手スポーツNBの「NIKE」も非公式ながら、取引先小売店に対し20年6月以降のZOZO出品を自粛するよう要請している。「ザ・ノースフェイス」を擁するゴールドウインは「へリーハンセン」も撤退し、「アディダス」などスポーツ・アウトドアやスニーカーのNBに離反が広がりかねない情勢だ。

 オンワードやミキハウスは百貨店との価格差を避けるべく離反したが、NBに依存するライトオンは他卸先との価格差でNBメーカーと軋轢が生じるのを回避すべく離反したと推察される。直販展開だけのブランドやSPAはZOZOに出品する品番を直営店や自社ECと仕分ければ価格差による混乱を回避できるが、多数の小売店に卸しているNBはZOZOARIGATOで生じる価格差を回避する手段がなく、他の小売店やEC店が価格で対抗することになればブランド流通が根底から崩壊してしまう。

 よってブランドをZOZOから撤退するだけでなく、卸先小売店のZOZO出品もやめてほしいのが本音だろう。「ザ・ノースフェイス」を展開するゴールドウインは『卸先小売店のZOZO出品は制限しない』としているが、ブランド取引の業界常識として“自粛”が広がるのは避けられない。

 有力NBのZOZO離れが広がり、出店を継続するセレクトショップなども退店したNBを出品しなくなればPBだけでは売上げが稼げないし、著名NBが消えては ZOZOTOWNのイメージも劣化してしまう。クーポンやZOZOARIGATOで値引き訴求してもZOZOの取扱高はいずれ減収に転ずるのではないか。

有力アパレルもいずれ離反する

 ZOZOSUITとPBの空振りによる赤字で19年3月期予想を大幅に下方修正したZOZOだが、これにはZOZO離れによる減収はほとんど加味されていない。当初の予想を超えて出店アパレルの離反が広がれば、さらなる下方修正を余儀なくされるし、PBの不振在庫と原材料も来期は減損処理せざるを得ないだろう。

 それを埋めるべく出店アパレルの裾野を広げ手数料率をかさ上げ、ZOZOARIGATOのような値引き訴求を重ねれば、出店アパレルの離反はさらに広がることになる。ZOZOTOWN創成期からの有力テナントは格段に低い手数料率で優遇されているが、低価格の新規テナントが増え価格訴求が氾濫すれば離反を決断するところも出てくるのではないか。

 有力アパレルは自社運営ECを軸に店舗とECを一体運営するオムニコマース体制を着々と築いている。自社ECは売上規模が百億円を超えれば運営コストが下がり、優遇されたZOZOの手数料率と遜色なくなるから、在庫の一元運用やC&C利便を考えれば、いずれ離反を決断することになる。

 在庫の一元運用を進める有力アパレルはECモールとは受注データ連携して在庫を預けない方式(移送・宅配委託型/マーケットプレイス型)に移行しており、在庫を預けるフルフィル型のZOZOはネックとなっている。EC売上げのZOZO依存率が一定ラインを切ればやめたいのが本音だろう。そんな実情を直視するならZOZOとて移送・宅配委託型に対応すべきだが、強気一辺倒で来たZOZOはクライアント対応の柔軟性を欠いている。

 有力アパレルがC&Cなオムニコマースを推し進めるほどZOZOがお荷物になり、ZOZOが上から目線の覇権を主張するほど利害も離れていく。そんな関係がいつまでも続くはずがない。有力アパレルは売上規模も大きいから、離反が広がればZOZOの屋台骨も崩れていく。

急がれる撤回と撤退

 ZOZO離れが屋台骨を崩しかねない段階に進む中、果たして前澤氏は撤回と撤退という決断に至るのだろうか。出店アパレルの反発を見てZOZOARIGATO非会員の値引き表示を選択制にするなど懐柔策も模索しているが、そんな小手先の対応で流れが変わるとは思えない。前澤氏のマスコミ露出も災いしてマスメディアまでZOZO離れをやかましく拡散しているから、一般消費者にまでマイナスイメージが広がるのももはや避けられない。顧客の“ZOZOTOWN離れ”にまで至れば来期の減収も現実味を帯びてくる。

 急成長してきたZOZOが一転して苦境に墜ちた要因は寡占的地位と高収益に慢心して取引先をないがしろにしてきた果ての“自滅”であり、これまで振り回されてきたアパレル業界はもちろん、メディアや顧客まで冷ややかにはやし立てている。

 寡占的地位をよいことにコストを切り詰める努力を惜しみ、販売手数料率をかさ上げ続け、成長力を維持するためイメージを損なうような低価格テナントまで裾野を広げ、「ツケ払い」やZOZOARIGATOなど形振り構わぬ拡販に走った挙句、出店アパレルの堪忍袋の緒が切れてせきを切ったようなZOZO離れを招いたのではないか。このまま事態を放置してはZOZOは屋台骨まで揺らいで坂を転げ落ちてしまう。ならば一刻も早いZOZOARIGATOの撤回とPBの撤退を決断するしかない。

 ブランド流通やアパレルのものづくりへの不見識、安易なテナント拡大と値引き訴求による拡販政策、経営者の暴走を制御するガバナンスの欠落を反省し、ZOZOARIGATOの即時撤廃、PBからの完全撤退、プラットフォーマーとしての利便追求とコスト抑制、手数料率の切り下げを宣言すべきではないか。それを躊躇すれば事態は現経営陣の手に負えない段階に進むかもしれない。

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