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『最低保証家賃がコロナ不況下のテナントを追い詰めている』(2020年03月19日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 コロナ不況の売上減少に苦しむ小売店や飲食店に追い討ちをかけているのが商業施設の「最低保証家賃」で、3月末の家賃天引き後売上金入金の急減に蒼ざめる経営者も少なくないと危惧される。
商業施設の家賃負担は通常でも、家賃や共益費に加えて内装投資の償却や急増したキャッシュレス決済の手数料負担で売上対比20%を超えているが、出店契約で決められた最低保証売上を下回ると売上が低くても規定の最低保証家賃を天引きされ、負担率が跳ね上がってしまう。
AIマーケティングサービスのアベジャが全国700店のファッション店を対象とした調査によれば、来店者数は1月16日以降減り始めて2月25日以降は前年同期比53.9%まで落ち込んでいるが、アパレル各社の店頭売上も直近ではアウトドア系を除き40%前後も落ち込んでいる。
例年なら売上が高まる3月は最低保証に引っかかることはないが、40%も落ちては流石に大半の店舗が最低保証売上を下回り、売上は6掛けでも商業施設からの家賃天引き後売上金入金は例年の半分を割り込んでしまう。これでは泣きっ面に蜂で、資金繰りに窮するチェーンも出てくると危惧される。
コロナ不況は誰のせいでもなく皆にふりかかる災難であり、皆で支えあって克服すべきもので、商業施設だけ最低保証家賃を徴収してテナントが窮するという不公平が、こんな緊急時に許されて良いものだろうか。
『百姓は生かさず殺さず』と言われた幕藩体制下でも飢饉時には年貢が減免され、お救い米まで放出されていた。商業施設とテナントが建前の共存共栄なのか収奪関係なのかはともかく、天災時には年貢を減免し、お救い米を放出する徳政が行われて然るべきではないか。
もしもどの商業施設デベも今のテナントの苦境を見殺しにするなら、商業施設とテナントの共栄関係は根底から崩れ、デジタルプラットフォーマーに向いていた公取委の目線が商業施設デベに向けられる契機となるのではないか。
※三月末に危機が迫る中、拡散にご協力ください。また、最低保証賃料徴収の一時停止に踏み切る商業施設の事例などがありましたら、是非ともコメントしてください。
※本論に関連して賃料設定自体の問題にも言及しています。
http://shogyokai.jp/articles/-/2570

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