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『75年目の終戦記念日に想う』(2020年08月15日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 本日8月15日は太平洋戦争の終戦から75年目の「終戦記念日」であると同時に、小泉改革からアベノミクスまで手を替え品を替え幾度も繰り出されて来た自民党政権の無理押しインフレ政策の「敗戦記念日」でもある。
 グローバル水平分業の潮流に乗り遅れた日本経済がバブル崩壊という「敗戦」を喫して以来、市場開放と規制緩和など、あの手この手のインフレ政策を各時代の自民党政権が繰り出し、少子高齢化で衰退していく我が国を無理押し若返らせようとして来たが、00年末のITバブル崩壊、08年秋のリーマンショック、20年のコロナ危機と、ほぼ10年毎に挫折し、その度に非正規雇用が肥大し社会負担が重くなって社会の互助余力も失われ、財政も太平洋戦争敗戦時(国家債務がGDP比250%)に匹敵するまで悪化してしまった。
 バブル崩壊後の「失われた10年」は20年になり30年になり、もはや常態化した感がある。少子高齢化が進んで生産力が衰え社会保障費が肥大して老いていく我が国を無理押し活性化しようとする試みは老体に鞭打つようなもので、いっときは上手くいくかに見えても所詮は仮需で、些細なきっかけで崩れてしまう。それがリーマンショックだったりコロナパンデミックだったのではないか。
 コロナ危機を契機に、継続性の怪しい仮需を無理押し泡立てるインフレ政策の繰り返しが雇用と生計のサスティナビリティを損ない、家計も社会も国家財政も疲弊させて来た顛末に目覚め、無理なインフレ政策に終止符を打つべきだ。美しき挙国一致の「ニッポン」を夢見るのは心地よいが、「進め一億火の玉だ」「クールジャパン」と意気がっても強大な米中に挟まれて「神風」は吹かず、無理押せば「一億玉砕」しかねない。
 過ぎ去った繁栄の時代にいつまでも未練せず、『無理なインフレ政策で疲弊するより、老いていく日本の自然なデフレに逆らわず、心安らぐサスティナブルな社会を築きたい』というのが「敗戦記念日」を迎えた国民の実感ではないか。75年前のあの日も、ラヂオから途切れ途切れに流れる昭和天皇の玉音放送を聴いて『死屍累々の戦勝よりささやかな平和が帰って来た喜び』を噛みしめたはずだ。
昭和生まれの一日本国民 小島健輔 

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