小島健輔の最新論文

販売革新2018年10月号掲載
作業着のワークマンが高機能カジュアルに進出
『「ワークマンプラス」ららぽーと立川立飛店』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング 代表取締役

 FC店主体に全国825店を布陣するワークウエアの最大手チェーン「ワークマン」が高機能と低価格を両立させる商品開発力と量販力を武器に、ついに高機能カジュアル分野に進出した。9月5日にららぽーと立川立飛3Fにオープンした1号店(198平米)にその実力を探ってみた。

 アウトドアブランド店かと見紛う白に木目調をアクセントした店内は明るく清潔感があり、機能訴求でありながら暖かみもある照明は好感が持てる。これならアウトドアマニアに限定されない巾広い客層にアピールできるのではないか。

 商品構成は向かって左側が「ファッション性アウトドア」、右側が「機能性アウトドア」、後方が「機能性雑貨」(靴/スパッツ/ソックス/アンダーウエアなど)で、右側壁面前部が女性を意識した「ガーデニング」になっている。「ファッション性アウトドア」と言っても防風・撥水・防寒・伸縮・軽量など機能性は他カテゴリーと遜色なく、ストリート感覚のグラフィックが加味されたデザインが目を惹く。惜しむらくは女性向け商品が各カテゴリーの一角に埋没していることで、「ウィメンズアウトドア」としてまとめた方がインパクトあるだろう。「ファッション」「機能」に加えて「ライフスタイル」のカテゴリーがあれば女性やファミリーにもアピールできるのではないか。

 マネキンや半身トルソーを多用し、ハンギングもフェイスアウトを活用し、POPも適確に表示するなどVMDにも気を配っているが、スタイリングのリミックスやフィット、カラー配列や出前訴求などカジュアル分野のトレンド感度やVMDスキルは研究が必要だ。

 プロ向けワークウエアとして確立された機能性は半端なく、アウトドアブランドやスポーツブランドの機能性商品の三分の一、四分の1という低価格がライダーやアウトドアフリークにも支持されたのは当然だろう。ユニクロなどSPAの機能性商品より本格的でアウトドアやトレッキングぐらいなら十分耐用できる。

 かつては機能本位でダサかったワークウエアが近年の人手不足で若者を惹き付けるべくスポーツウエアやアウトドアウエアのグラフィックデザイン、スケーターなどストリートのスタイリングを取り込み、我が国でも若者に広がった“ガテン”など世界的なワークファッションのムーブメントも追い風となり、ワークウエアで培った機能性低価格商品がカジュアルマーケットで受け入れられると見て世に問うたのが「ワークマンプラス」だ。初年度は有力SCに10店舗、その後は地方のSCやGMS、ロードサイドにも拡げて三年で100店舗、将来はワークマンとワークマンプラスそれぞれ1000店舗体制を目指すという壮大な計画の成算はどうだろうか。

 ワークウエアで突出した寡占企業の強みで中国やミャンマー、ベトナムなどの大規模工場で10万点単位で計画生産して低コストに抑えているのに加え、セールなしのEDLPによる高いプロパー消化率も高機能低価格の実現を支えている。カジュアルに進出しても下手にトレンド商品などに手を出さず、EDLPを堅持して欲しい。

 ひとつだけ懸念があるとすれば、ワークマンはSCの不動産コストを甘くみているかも知れない事だ。1号店は認知度を高めるために多少は目を瞑ったのかも知れないが、これからの10店舗は家賃のみならず付加される共益費や共同販促費などにも目を配り、短期(4〜6年)定期借家契約のリスクにも留意してコスト肥大に陥らないよう慎重に出店して欲しい。

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