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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『ECの出店戦略やいかに?』 (2018年02月03日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 ECにもリアル店舗同様、独立店舗とテナント店舗があって、運営方法やコストはリアル店舗以上に大差がある。

 独立店舗(自社EC)といっても、運営サポート業者やシステム業者に任せっきりのケースからエンジニアを抱えてかゆいところまで自製するケースまで千差万別だから、内部をのぞいて見なければ実態は分からない。『当社は全て自社運営しています』と胸張って言う企業の実態は情報システム関連を全てシステム業者からの出向社員に任せていたりする。早い話がIBMやNECにシステムを乗っ取られているわけだ。

 テナント店舗の方は独立店舗よりはパターン分けが分かりやすく、大きく3形態に分かれる。

(1)場所貸し型

 一番、お手軽で売上課金も数%ないしは名目無料だが、楽天やヤフーなど総合モールでは数千数万もの出店者がひしめく中を自社ページに誘導するさまざまなプロモーションが必須だし、既成パッケージを活用してもECフロント構築から出荷までほぼ自己責任だから手間もかかる。売上げを伸ばすには自助努力の積み重ねが不可欠で、内部の人件費や外注費用まで加えれば決してお手軽でも低コストでもないが、カード情報を除けば顧客情報も手に入る。

(2)フルフィル型

 在庫を預けてECフロントから出荷まで全てモール側にお任せするのが「フルフィル型」だが、人気のファッションモールは売上げは取れるが手数料率も25〜35%と百貨店並みにかさみ、複数モールに展開すると在庫の分散が避けられない。『在庫を預ける』といっても売上課金制だから消化仕入れみたいなものでモールというより百貨店に近く、顧客データも全く入って来ない。

(3)マーケットプレイス型

 両者の中間に位置付けられるのが、ECフロントのシステムと受注はモール側で“ささげ(撮影、採寸、原稿)”と出荷はテナント側という「マーケットプレイス型」。モール側の“ささげ”や在庫管理・出荷、宅配運賃の負担が無い分、手数料率は「フルフィル型」より10ポイント以上軽くなる。テナント側はそれらを自ら負担するから総コストはさほど低くはならないが、自社ECの“ささげ”や出荷の体制が整った事業者なら低コストに回せるし、何より在庫を分散しないで済む。顧客情報は「出荷伝票データ」に留まり、決済関連や属性情報までは入ってこない。

ECモール事業のトレンドも、「場所貸し型」⇒「在庫預り型」⇒「マーケットプレイス型」に

 初めは「場所貸し型」や「フルフィル型」の単店舗だったとしても、顧客を拡げるべく複数のモールに出店し「自社EC」も“運営”するようになれば、コスト圧縮と在庫分散の回避を図って在庫の物理的一元化(DCの集約)へと収れんしていく。データだけの一元化はDC間物流を要して時間もコストもかかるから現実的ではないが、物理的に一元化すればECに売れ筋が流れて店舗が干上がる弊害も生じる。

 ECフルフィルは取扱量の拡大とともに加速度的にコストが逓減するから、在庫と出荷を集約できる「自社EC」と「マーケットプレイス型」に絞り、突出した人気モールを例外として「フルフィル型」からは撤収して行くのが定石ではないか。ならばECモール事業のトレンドも「場所貸し型」⇒「在庫預り型」⇒「マーケットプレイス型」という流れが加速することになる。

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