小島健輔の最新論文

ブログ論文(アパログ2017年10月04日付)
『ライトオン赤字転落の構図』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング 代表取締役

 南充浩さんが9月26日のブログで『ライトオンの赤字転落は好調時の不振在庫を持ち越した事が災いしたのでは』と指摘しておられたが、まったく同感で「Jクルー」との類似さえ指摘したくなる。
 ライトオンは11年8月期以降、好不調の波はあるものの年商800億円前後で足踏んで来たが、14年8月期に大きく落ち込んだ後、15年第3四半期~16年8月期は好転し、16年の秋口以降は再び低迷を続けている。問題は17年8月期の赤字転落で、値引き処分した商品が当期の不振品だけなのか前期から持ち越した滞貨品が少なからず含まれるのかが問われる。
 決算書で見る限り09年8月期は4.52回だった在庫回転が11年8月期には3.46回に急落し、売上が落ち込んだ14年8月期には3.08回と一段と低下。売上が回復した15年~16年も在庫回転は2.85回、2.64回と落ち続けたから、売上の伸び以上に在庫が積み上がった事が解る。不振品を処分した17年8月期も在庫回転は2.52回転とさらに低下しているから処分は完了しておらず、来期も持ち越し品の処分が業績の足を引っ張ると危惧される。
 この間の売上と在庫の動きを四半期毎に追って行くと、在庫コントロールの稚拙さが浮かび上がって来る。14年の不調期に冬物処分と夏物処分に躊躇して在庫が積み上がり、15年は売上と在庫のバランスを取ったが、16年第1四半期は売上が17.3%伸びたものの在庫は32.5%も積み上がり、第2四半期も15.4%の売上増に対して在庫は55.8%増、第3四半期は6.3%増に対して50.4%増、第4四半期も2.8%増に対して26.2%増と在庫コントロールが出来ず、不振在庫を処分し切れず大量に持ち越したと推察される。この状態は17年第1四半期まで続いたが、第2四半期、第4四半期と大量の値引き処分を行って在庫回転は2.39回まで戻している。
 17年度に値引き処分されたのは好調だった16年度の在庫が大半で、一部は14年度から持ち越した在庫も含まれていたかも知れない。南さんが店頭の処分品を見ての直感は正解だった訳だ。
 そんな話は我が国に限った事ではなく、米国Jクルー社の転落劇とも共通する。オバマ大統領夫妻の御用達ブランドとして頂点を極め14年1月期まで二桁営業利益率を誇ったJクルー社が15年1月期は一転して巨額の除却損を計上して売上対比22.7%、翌16年1月期は同55%もの赤字に転落したのも、巨額の暖簾代償却を含むとは言え好調期に積み上がった持ち越し在庫が大きかったとされる。
 好不調に拘らず売上と在庫のバランスをコントロールして不振在庫はシーズン末までに処分すべきで、該当期決算を化粧すべく翌期に持ち越す誘惑に負けてはならない。持ち越し在庫は期末の半値以下に減価するのはバッタ業界の常識だから期中に処分するしかないし、翌期に持ち越してはキャッシュフローを圧迫して二重に災いを拡げるだけだ。
 ライトオンが在庫コントロールの失敗を繰り返して不振在庫を持ち越す羽目になったのは、店頭販売から半年も前の発注が多かった事も起因している。同社が引き付けた発注を増やすとしているのは当然だが、NBや雑貨でVMI比率を高める事も必須ではないか。ジーンズメーカーがVMIに対応するサプライ体制を持っていないとしたら、ライトオンに限らずジーンズカジュアル店の先行きは暗い。

ライトオン600

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