小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年01月15日付)
『店頭の“かご落ち”対策?』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 ECの世界は日進月歩で次々と新たなシステムやスキルが開発されていくが、一方の店頭販売は百年一日で進化が停滞し、旧弊に拘って退化する分野も少なくない。ECではSEO対策やかご落ち対策でバグを潰していくのが日常のルーチンだが、店頭では“かご落ち”対策のルーチンワークは励行されているだろうか。
 店頭で“かご落ち”する主な要因は以下の3点だと思うが・・・・・
1)商品の編集・配置と購買プロセスの擦れ違い
 顧客が購買選択を進めようとする手順と陳列・配置の階梯誘導が擦れ違えば顧客は戸惑い、販売スタッフが説明したり商品探しを手伝ったりしないと“かご落ち”してしまう。購買選択は型→色→サイズとは限らず、サイズや色から入る方が買い易い場合も少なくない。ECなら如何様にも並び替えて検索できるが、店頭では逐一物理的に並べ直す手間を要するから非現実的だ。店頭の陳列が選び難くければ、顧客はスマホかタブレットを取り出してECサイトで自分の手順で検索し購買プロセスを進めることになる(多分、店頭には帰ってこない)。
2)商品情報の非対称性
 ECではささげによるビジュアルと言葉、色やサイズのMD展開、購入した顧客の評価(レビュー)など、これでもかと豊富な情報が提供されるが、店頭では一部の商品しか陳列されず(見てくれだけの定数定量陳列の弊害です)、モデルが試着して歩いてくれる訳でもないし、色やサイズのMD展開がタグやPOPに表示してある訳でもない(表示しているブランドも稀にある)。ましてやレビューなど知る由もないし、ひどい店ではタグを見えないように隠してしまう(恐ろしいことにそれが主流だ!)。やむなく顧客は自分のスマホでECサイトに情報を探しに行くか(そちらで買ってしまうかも)、諦めて店を後にしてしまう。
3)在庫情報提供の遅延
 ECならSKU別の在庫情報はもちろん近隣店舗の在庫まで覗けるが(リアルタイムとは限らないが)、店頭ではレジから検索しないと回答できないケースが多い(接客タブレットで即!という店も少しづつだが増えている)。話がややこしくなるのはPOS上は在庫があっても店頭フェイスに見当たらず、後方ストックに探しに行く場合だ。どこの店も『5分以内に済ませる』とかマニュアルには書いてあるが、きちんとストック棚管理なんかしている店は今時、例外的で、山積みしたパッキンを上げ下げして探す羽目になれば“5分”なんかじゃ到底戻れない。お客様は待たせるし、その間は売場人員が一名欠員して接客にも保守にも支障が出る。

 まあ店頭の典型的な“かご落ち”なんぞはこんなものでしょう。問題は、それが“例外”ではなく“主流”になっている事で、EC世界ならとっくに潰されているはずのバグが堂々と継続されている姿には怒りさえ覚える。店頭の日常運営手順とスキルが顧客視点で日々、検証・改善されていかないというお座なり体質を抜本的に変えない限り、店舗販売はECに駆逐されても致し方あるまい。ECが流通の主役となる中、店舗販売は顧客目線でECと競いカイゼンを急ぐべきではないか。

6a60c6b98bad4be5d805b16f59e816b1

論文バックナンバーリスト