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『トライアルの弩低価格・拡張性ワンマイルウェア「RIALT」が秘めるポテンシャル』
(2026年03月27日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 トライアルは自社のアパレルPB「ROOM & OUT」をSPA業態「RIALT」に発展させ、昨年の11月に西友三軒茶屋店に一号店(売場面積80坪)を開設した。同店は今年になって123坪に拡張され、インクルーシブMDのスケール感も見えて来たが、シーズナルなMD展開や商品開発体制は未だ試行錯誤の途上だ。それでも相応のインパクトがあるのはユニクロもしまむらも潜る弩低価格と「拡張性ワンマイルウェア」というコンセプトへの共感と発展性ではないか。

 

■西友三軒茶屋店「RIALT」のビジュアルインパクト

 昨年11月の開設時には早速、西友三軒茶屋店の「RIALT」を訪れて「三桁価格」とユニクロに張る単品量販陳列のインパクトに注目。意外と言っては失礼だが、価格の割に洗練されたカラーパレットとVMDに「素性の良さ」を直感した。それがトライアルのDNAなのか西友のDNAなのか、このプロジェクトに加わった外部人材(ユニクロやZARA、ユナイテッドアローズなどの出身者)の技量なのかは外部からは分からないが、長年、内外のSPAに関わって来た私の嗅覚が反応したことは間違いない。「RIALT」は立ち上がったばかりの「試作品」段階にしては只者ではない異彩を放っていた。

 まず目に付いたのは店頭の巨大4段テーブルに山積みされたシルキーフリースジャケットの「物量感」と「三桁価格」(税別998円)だが、ナチュラルカラーに絞ってトーンのコントラストを付けたカラーパレットがメンズとウィメンズで無理なく仕分けられていたこと、荒削りながらその色配列が「ZARA」並みに色環配列されていたことだ。ユニクロがほんの一昔前まで野暮なレインボー展開(同一トーンの多色相展開)だったことを思い起こせば、「試作品」段階でこの水準は評価に値する。

 せっかくのカラーパレットがさほど美しくは見えないのは、西友から居抜きの蛍光灯型LEDの4000k(kelvin)面照明によるもので(しまむらも同様)、近年のユニクロやジーユーのように3000kのHID型LEDスポットと組み合わせば格段に映えて見えるはずだ。「RIALT」はまだMD構成さえ試行錯誤段階で店舗環境まで一体のブランディングには遠いが、素性が良いのだからMDを確立するにつれ店舗環境も整備していくべきだろう。

 店頭の巨大テーブルの単品集積陳列だけでなく、アパレル各ユニットの棚割り陳列も下着類などパッケージ商品のフック棚割り陳列も相応に工夫されており、「三桁価格」商品を安っぽく見せないVMDスキルは一見の価値がある。

 

■「ROOM & OUT」から「RIALT」への発展

 「RIALT」はこれまでトライアルの平場で展開して来た衣料品のプライベートブランド「ROOM & OUT」をストア展開のSPA業態に発展させたもので、「ROOM & OUT」の既存商品だけではバラエティが足りず、現状では中韓の市場商品や国内専門商社のODM商品も加えて構成している。西友三軒茶屋店に続いて西友の大型店に出店していく一方、西友の衣料品平場にも導入し(3月下旬から40店舗)、トライアルのスーパーセンターでも平場展開を継続して調達ロットを稼ぎながらMDを広げていく方針で、多店化とともに「RIALT」専用商品を増やしていくことになる。

『快適な部屋着でそのまま外出できる』という「ROOM & OUT」のワンマイルウェア・コンセプトに『オシャレなアクティブスポーツウェアで外出する』というアスレジャー・コンセプトも加えて機能商品を広げ、都会的なライフスタイルに対応するラインナップを揃えていく方針で、「RIALT」専用商品を20〜30%に広げていく。弩低価格(アウターでも1990円まで)と多サイズ(全アイテム5サイズ)展開で生活商圏のスーパーセンターでも多くの顧客をカバーするインクルーシブ(顧客を選ばない)MDを基本に、西友の大型店など大都市圏の商業施設でも受け入れられるコンテンポラリーな「拡張型ワンマイルウェア」SPAを目指している。

ユニクロの「ライフウェア」というよりファミリーマートの「コンビニエンスウェア」に近い生活圏服に位置付けられるが、シンプルな汎用性のデザインとナチュラルカラー展開、幅広い体型をカバーする5サイズ展開はジャージ中心の素材構成も相まって世代も体型も選ばない。「ワークマンカラーズ」をZARAっぽいナチュラルモードに振ったようなオシャレ感もあるから、MD展開と開発体制を適切に確立していけば、生活圏服SPAマーケットの一角を占めると期待される。

 

■26SSのMD展開を検証する

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 80坪から123坪に拡大された今春の西友三軒茶屋店「RIALT」はVMD水準は高いものの、トライアル店舗で売られていた前年商品や当用仕入れ商品も少なからず混在して今シーズンのMD編成が見えないため(オンラインサイトも同様)、トライアルから26SSのMD投入計画を提供頂いて当社で季節切り替え/素材別に組み直し、MD展開を検証してみた。全体の構成はメンズ45%、ウィメンズ45%、シューズ6%、雑貨4%とアナウンスされるが、検証はアパレルに限定した。

 1月投入から6月投入までメンズは44型、990SKU、ウィメンズは49型、895SKU。どちらも5サイズ展開だからメンズの方が色展開が多そうだが実は大差なく、Tシャツのモチーフ展開(アニメキャラと刺繍キャラ)の多さがウィメンズよりSKU数が嵩んだ要因だ。価格はアウター(税別1990円、1490円)や機能素材ボトム(税別1990円、1490円、1290円)、ワンピース(税別1990円、1490円)、機能素材トップス(税別1490円、1290円)などを除けば大半が「三桁価格」(税別998円、798円)で、ウィメンズのレギンスパンツ(税別698円)やタンクトップ(税別598円)、メンズの七分袖Tシャツ(税別598円)など目を見張るような目玉価格も設定されている。

ユニクロどころかジーユーもしまむらも潜る弩低価格のインパクトは大きいが、店頭で見る限りはしまむらと大差ない中国素材で、縫製にも破綻は見られなかった。品質感はウイメンズよりメンズの方が一格高く、その分、調達原価率も一回り高いと推察する。

近年のオーバーサイジング好みもあってか、メンズとウィメンズを似たようなテイストで展開するカジュアル業態では私が知る限りメンズ商品購入客の半分前後が女性だから、メンズとウィメンズのMD展開量が半々だと実際の購入客比率は男性25%/女性75%に収斂してしまう。今時は下着や寝衣を除けば「代理購買」は死語に近いから、女性客のメンズ商品購入は当人がマスキュリンミックスして着ているケースが大半と考えられる。

多くのカジュアルチェーンはそんな女性客購買を意識してメンズのMDを組んでおり、女性客購買が取れないメンズ企画は売上が稼げないのが現実だ。「RIALT」のメンズ商品も多くは女性も着れるもので、Sサイズはほぼ女性客向けと推察する。

季節展開はメンズとウィメンズでかなり違う。メンズが春物(1〜2月投入)、夏物(3〜4月投入)、盛夏物(5〜6月投入)と明確なのに対し、ウィメンズは春物(1〜2月投入)と夏物(4〜5月投入)の間に少数ながらオケイジョナルな初夏物(3月投入)が挟まり、盛夏物(5〜6月投入)に続くという切り替えになっている。季節を超えて継続販売するコア企画がNOBIRUNOのストレッチボトムスを除けば見当たらず、季節で切り替わる単品MDに依存するバイヤー型のMD展開という過渡期の性格に見える。

メンズはカジュアルに徹してアクティブ・セットアップのようなビジカジアイテムは無いが(前年はあったようで持ち越し品がオンラインサイトで販売されている)、ウィメンズではアウターやパンツ、ブラウスでビジカジ対応が見られる。それらの投入タイミングは季節のオケイジョンニーズと必ずしも一致しておらず、メンズもウィメンズも季節のMD展開は試行錯誤段階というのが実情のようだ。

素材構成もリードタイムが短く低コストで開発し易いカットソーに偏っており、リードタイムが長く低価格に抑え難いニットはウィメンズのカーデガン1型しか見当たらない。総じてサプライヤーが持ち込む低コスト生産地素材が大半で、開発素材は限られる。

 

■商品開発体制の課題と「RIALT」のポテンシャル

 26SSのMD展開を見る限り、SPA型の開発素材軸アイテム展開(複数単品やセットアップ)は限られており、季節切り替えのパターンも確立されておらず、ウィメンズではスポット的なサプライヤー企画のODM仕入れも散見される。メンズでは季節MD展開のパターンが見え始めているがウィメンズではまだ試行錯誤段階で、素材メーカーと組んだ開発素材軸アイテムを継続販売する開発型SPAへの体制構築は緒に就いたばかりだ。

 ようやく専門人材が揃い始め、仕入れ型のバイヤー& DB.(ディストリビュータ)制からマーチャンダイザー& DB.制へ移行しつつある段階で、パターンや生産スペックはサプライヤーに依存している状況だ。開発チームを抱えて自社開発のパターンや生産スペックで完成度を高めていくのはこれからの課題で、先行する大手SPAとは格差を否めない。

 それでもポテンシャルが大きいと感じるのは『快適な部屋着でそのまま外出できる』という拡張性ワンマイルウェアのコンセプトだ。近年はアスレジャーの奔流に乗ってワンマイルどころか繁華街にまでジャージのトラックスーツで出掛ける若者が増えており、トラックスーツを軸に売上を伸ばすZ世代D2Cブランドも目に付く。韓流トレンドで言われる「空港スタイル」の典型で、Y2Kのジューシークチュールの再現でもあるが、TPOレスなアスレジャースタイルとして若者に限らずY世代以上の大人たちにも広がっている。

 ユニクロは「万人のライフウェア」に磨きをかけてディリーカジュアルのグローバルスタンダードまで飛躍したが、「RIALT」の拡張性ワンマイルウェアのコンセプトにも遜色ないポテンシャルがある。ユニクロがフリースブームの反動による落ち込みを契機にサプライヤースペック依存のマーチャンダイザーMDから自社開発スペックによる開発型MDに転じ、四半世紀をかけて「ライフウェア」を極めたように、「RIALT」も季節MD展開を確立して自社開発スペックによる開発型MDへとステップを着実に進めれば、必ずや化けると期待される。

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