小島健輔の最新論文

オリジナル提言(2006AW版MDディレクション”Lady’s Wear”より)2006年1月
『2006AWへのMD戦略』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 05AWではレイヤードとジーニングが急速に後退し、セクシー&グラマラスカジュアルもセレブデニムも縮小に転じた。替わってヤングではフェミニン&ワークなモードカジュアル、コンテンポラリーではナチュラル〜キレイ目のきちんと感あるエレガンススタイルが主流となった。この転調は予想外の厳冬で一段と強調され、獣毛系ウールコートやファー付きダウン/ブルゾンを軸としたキレイ目モードスタイルが市場を席巻した。
 06AWでは経済・消費の力強い回復を背景に表面的なリュクス志向よりクォリティやアイデンティティにこだわるクラス志向が一段と強まり、グローバルモードな価値観からトレンドやブランド/ストアを選択してきちんと感あるモードスタイルを構築する消費行動が主流となる。それはあたかもジーニングが世界を席巻した70年代以前のスタイル様式に回帰するかの感があり、80’Sリバイバル系を除く多くのテーマがレイト60’S〜アーリー70’Sのロンドンにインスパイアしたものだ。
 カジュアル化/ストリート化の繰り返しの中で行き着いたレイヤードの頂点から一転、きちんと感ある正統派モードスタイルへとドレス回帰する06AWは、ブランド/ストアのポジションやシーン編成から物の仕上がりを左右するソーシングまで全面的な再構築が避けられない。カジュアル化の長い波に乗って成長して来た短サイクル開発OEM型のビジネスモデルは根底から価値創造力を問われ、素材からの開発によるキーデバイス競争力(特に染色整理工程)、上質な仕上げを可能とするファブリケーション工場の確保が急務となるに違いない。
 目先を見たテクニカルな対応よりこれからの十年を勝ち抜ける開発調達プロセスの再構築こそ、06AWに向けて最重要な課題ではないか。基本さえ構築しておけば、目先のテクニカルな対応はファブリケーション段階でどうにでもなるし、土壇場の読み違いには製品買いOEMで対処すれば済む事だ。
 正統派モードスタイルのMD展開においては、デザインはもちろん素材・柄とカラーがキーになる。ポップアートやサイケデリックに彩られたレイト60’S〜アーリー70’Sロンドンが主流となる以上、当然の対応であろう。

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