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ブログ(アパログ2018年02月13日付)
『ローラアシュレイ難民の行く先は』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 イオンが「ローラアシュレイ」事業を18年9月17日で終了する。1月半ばに表参道店を訪れた時にはそんな様子は無かったから、急に決まった話なのだろう。顧客にとっては寝耳に水で、お気に入りのホームファッションの供給が途切れるとあって相当なショックだったようだ。先週末、有楽町交通会館で急遽開催されたファミリーセールには顧客が殺到し、初日は2時間のレジ待ちになったと聞く。
 我が国ホームファッションの双璧たる「ラルフローレン」「ローラアシュレイ」の一方が消えてしまうのだから、顧客のパニックも無理はない。しかも「ラルフローレン」は「ローラアシュレイ」の倍以上に高価な百貨店商材で男っぽく、お手頃なSPA価格でロマンティックな英国カントリー調ホームファッションが手に入る「ローラアシュレイ」は女性に圧倒的な人気があった。私も駆けつけた交通会館のファミリーセールでも来客の99%は女性で、お付き合いの男性が二〜三人目に付いただけだった。
 我が国のホームファッション市場はコーディネイト志向が強く、アパレルのようなリミックスやトレンドが志向されないため、ブランドロイヤルティが極めて強く、「ローラアシュレイ」に代わるブランドを探すのは容易ではない。「ラルフローレン」は男性的なアメリカントラッドがベースで好みが異なり、高価だから部屋を一新するとなれば負担も大きく、「ローラアシュレイ」からの乗り換えは限られよう。他の百貨店ホームブランドは欧州ファブリックデザイナー系にしても国内デザイナー系にしても「ラルフローレン」並みかそれ以上に高価だし、それぞれ“個性的”だから、「ローラアシュレイ」顧客の好みにも財布にも耐えないだろう。
 「ZARAHOME」は一見は魅力的だが、継続性・コーディネイト性を欠く“ファストファッション”ゆえトータル・コーディネイトが困難で、洗練されたリミックス・センスと気力がないと買い揃える前に挫折してしまう。SPAにしては「ラルフローレン」並みに高価で、着物の柄合わせに匹敵する高度なセンスを要するから、時間とお財布に余裕があるホームお洒落大通でないと手に負えない。
 SPAと言えば「ニトリ」の存在が増しているが、“お値頃”でも洗練にはほど遠く、無地物はともかく柄物はご遠慮したくなる。「ローラアシュレイ」のようなロマンティックな英国カントリー調は期待すべくもなく、乗り換え先とはなり得ない。
 「ローラアシュレイ」難民の行く先は五里霧中だが、ハッピーエンドなシナリオが無い訳でもない。それは新たな「ローラアシュレイ」事業者の登場に他ならない。イオンが採算の見通しがないとして終了するにしても、アパレルはともかくホームファッション市場におけるブランド価値は我が国最大級だから、大手商社か他の流通業が引き継ぐのは間違いあるまい。ホームファッション市場に橋頭堡を築きたいファーストリテイリングか、はたまたブランド価値ある柱が欲しいニトリか、それとも・・・・・ロスト・パニックに右往左往する「ローラアシュレイ」フアンのためにも早々の決定が待たれる。

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