小島健輔の最新論文

Facebook
『ユニクロのジーンズはジャパンフィットじゃない!』(2021年08月23日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 ユニクロが桑田佳祐や綾瀬はるかを起用して秋冬ジーンズのTVCMを繰り出しているが、そのフィットは日本の国民服ブランドとは思えない違和感がある。
 これまでもそうだけど、ユニクロのジーンズはストレッチ訴求もあってか過度にボディコンシャスでヒップラインが強調され過ぎ、ゆる抜けたフィットでヒップラインをボカす近年のジャパンフィットとは大きく乖離している。深キョンを起用した春夏のパンツCMでも、深キョンの体型の欠点を露呈するようなフィットに悲しくなったが、ユニクロは「ノームコア」以降のオフボディ志向に敢えて立ち向かっているかのようだ。
 ジーンズの劇的退潮は00年代のセレブジーンズがヒップラインを強調し過ぎてリーマン以降のセクシー嫌悪の潮流に押し潰され、14年の「ノームコア」からゆる抜けてオーバーサイジングになっていくジャパンフィットに取り残されたからで、デニムでもゆる抜けたロガーパンツやサロペットはちょっとしたヒットアイテムになっている。
 コロナ禍もあってワーク&アウトドアが人気でジーンズも復活が期待されているが、ユニクロのキレイ目スリム〜ニートなジーンズは面もフィットも今の気分を外している。今求められているジーンズはゆる抜けたフィットに無理がないライトオンス、面に多少はヴィンテージ感があってナチュラルに馴染むもので、ユニクロのジーンズは「日本人離れ」した感がある。
 近年のユニクロは中国市場に嗜好をシフトしている感があり、北京好みの華北(ツングース)フィットじゃないのかと勘ぐりたくもなる。グレーターチャイナ(中華圏)市場を拡大するユニクロだが、「日本人の国民服」という成功の原点を忘れては日本人の「ユニクロ離れ」を招きかねない。中華圏はともかく、日本市場には日本人好みのぬる抜けたジーンズを投入してもらいたいものだ。

論文バックナンバーリスト