小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年02月07日付)
『百貨店PBの破綻は必然』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 そごう・西武は「リミテッドエディション」などPB売場を二月末で閉め、自主事業部と自主商品部を解散して自主商品開発事業から全面撤退する。09年に立ち上げた「リミテッドエディション」は著名デザイナーとも取り組み、衣料品・服飾品中心にターゲット別にブランド展開してピークは100億円を売り上げたが直近は60億円ほどに落ち込み、採算が見込めないとして撤退に至ったと報道されている。三越伊勢丹も既に前社長が拡大した自主商品開発を縮小に転じており、百貨店の衣料品・服飾品PB開発はまたもや頓挫した感が在る。
 百貨店の衣料品・服飾品PB開発は買取MDスキルが曲がりなりにもあった60〜70年代はともかく、消化仕入れが主体となった80年代以降は上手くいった試しがない。ロットの小ささや消化率の低さから取り組みアパレルとの関係もギクシャクして立ち消えになるケースが多かった。そんな壁を越えようと百貨店各社は量販アパレルと取り組んだり、縫製工場直の開発を試みるケースも見られたが、どれも続かなかった。その要因は以下の3点だと推察される。
1)消化仕入れや個店帳合いの限定的買取しか経験のない百貨店には在庫の最適配分・店間移動のDB(ディストリビューション)ノウハウが無く、店舗数の少なさや売上の旗艦店への偏りもあって消化が進まず、不振在庫が積み上がってしまう。セントラルバイイング(=DB)の体制とスキルなくしてPB開発など元より不可能だ。
2)ロットが限られるため開発コストも生産コストも割高でバリュー競争力が無く、消化歩留まりの低さからさらに割高になってしまい、売上の拡大が見込めず採算の目処がつかなくなる。端から外販できる商品力とブランディングと競争力あるロットで仕掛けない限り離陸は不可能だ。
3)開発コストも販売コストも在庫リスクも負担せずに30%以上の手数料が稼げる消化仕入れに較べ、それらのコストとリスク(ロス)を背負って歩留まり率が低ければ大幅な持ち出しになってしまう。アパレルNBの百貨店販売コスト(歩率+販売人件費+販売費)は店頭売上の50%以上にも達するから、歩留まり率が百貨店NB並みとしても(百貨店がそんなにDBが上手い訳がない)20%前後の原価率に収めなければ収益は望めない。それではNBと変らぬ価格となり、価格を抑えれば品質を落とすしかなく、どちらにしてもPBとしての競争力が得られず存在が難しい。

 というわけで、百貨店のPBは採算の見通しが立たず、拡大どころか存続さえ難しい。PBを成功させるには、それ以前に米国デパートメントストアのようなセントラル・バイイングと多店舗DBのシステムとスキルを確立するのが先決だ。我が国の百貨店は個店帳合の消化仕入れに留まって世界の有力ブランドをエクスクルーシブ・バイイングする体制を確立出来なかったゆえ、世界に類のないセレクトSPAチェーンという徒花の台頭を許してしまった。我が国百貨店がノードストロムにもニーマンマーカスにもなれなかった後悔は既に手遅れで、コンテンツで闘う意味はもはや局地戦(ローカル)にしかない。
 勝算のないPB開発の消耗戦を繰り返すのも、出来もしないセントラル・バイイング(ロット丸ごと独占買取!!)を夢見るのも、もはや時間の無駄でしかない。ブランド流通のプラットフォーマーとしてアマゾンやZOZOに張り合って生き残るべく、総力を挙げてオムニチャネル利便と競争力ある運用効率を実現するのが先決だ。それには24時間オンライン単品管理・受注引き当て最優先のシステム“革命”が必須で(巨額の新規投資と旧システムの除却損が不可避)、努々在庫預り型に踏み込んで物流の白兵戦に陥るような致命的戦略ミスを犯してはならない。

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