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ブログ(アパログ2017年12月19日付)
『18AWは“リアル”で勝負!?』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 18AWテキスタイル展も11月の有力コンバーター展示会が“リアル”過ぎて新鮮な展望が見えないまま12月も半ばになって総合商社の展示会が始まったが、いつものEBiS303で開催された三菱商事ファッションのアパレル総合展は“リアル”を一歩も二歩も突っ込んだ提案と南アジアのローカルテキスタイルが目を惹いた。
 今回のアパレル総合展ではいつもに増して機能性とイージーケアが追求され、防寒アウターでは“軽さ”が訴求ポイントとなっていた事に加え、量産品かと思うほど完成度の高い製品サンプルがクライアントタイプ別に数百点も吊るされていたのが圧巻だった。OEM受注の叩き台なのだろうが、このままODM発注してしまうクライアントも少なくないと思えてしまうのがこのギョーカイの恐いところだ。いつものように同タイプの素材と生産背景を国内〜中国〜南アジアと価格帯別に揃えて巾広いクライアントに応える体制も力強い。
 そんなこんなで“リアル”を徹底追及する展示ゆえ、国内では見られない南アジアや中国の面白いローカル素材も目に入る。元々は先進国の意匠素材を低価格でコピる中、低価格マーケット特有のヤンキー?な嗜好で変異した面白意匠や行き過ぎ意匠がストリートトレンドっぽく見えて来る。こんなのを“キッチュ”と言うのだろうか。
 商談の傾向も伺ったが、価格も原価率もさらに切り下げるクライアントが多く、それにともなってロットも拡大しているとか。コスト優先の過大ロット調達で消化に苦しみ“集団自殺”とまで揶揄されても懲りないこのギョーカイは神々(消費者)に愛想尽かしされても致し方あるまい。衣生活の“リアル”を追って機能性とイージーケアが向上するのは好ましいが、“リアル”だけではロットを積んで価格も原価率も切り下げるというギョーカイの悪癖は改まらない。結果、消化率も利益も切り下げては元も子もないだろう。
 “リアル”だけで“華”が見えない18AWはいったいどうなるのだろうか・・・・当社が製作している18AW版『MDディレクション』でもレディス/メンズともリアルなエフォートレスモダンは強いけれど、レディスではフューチャーやファンシーとクロス、メンズではスペクテイターやガテンとクロスして目新しいスタイリングに事欠かないし、レディスではカントリーやロマンティック・ノマド、メンズではカントリーやノルディックといったナチュラル系も復活、レディス/メンズともモダナイズされたユーゲントシュティールが陰影をつける・・・・と予測している。

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