小島健輔の最新論文

商業界オンライン 小島健輔からの直言
『最新情勢 アパレル業界「ECモール評価ランキング」』 (2018年04月03日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 当社では2013年以来、毎年3月に主要ECモールをクライアントのアパレル企業に評価してもらいランキングをまとめているが、今年の注目傾向をご紹介しよう。回答企業は45社と限られるがアパレル大手の過半を占めるから、大勢を反映していると見てよいだろう。

「ゾゾタウン」が断トツ首位を継続

 アパレルメーカーやアパレル専門店が出店しているECモールは「ファッションモール」、アマゾンや楽天市場のような「総合モール」、駅ビル/ファッションビル/百貨店など商業施設デベロッパーが運営する「デベ系モール」に分類される。評価項目は「集客力」「売上げ伸び率」「ファッション感度」「ささげサービス」「物流機能」「マーケティング情報の提供」「顧客データの提供」「店舗への顧客誘導」の計8項目で、主要16モールが挙げられた。

 ゾゾタウンが調査開始以来5年連続して断トツ首位を継続。中でも「集客力」「売上げ伸び率」「ファッション感度」は圧倒的に他モールを突き離している。17年3月期のゾゾタウンの取扱高は1919億円、スタートトゥデイ全体では2121億円、18年3月期は2700億円に迫ったとみられる。経済産業省試算の16年国内衣料・服飾雑貨EC売上げは1兆5297億円だから17年3月期のゾゾタウン取扱高はその12.5%、自社EC支援事業の扱い高まで含めればスタートトゥデイ1社で14%に迫る突出した寡占企業だ。

「マルイウェブチャンネル」「アマゾン」が続く

 2位はデベ系モールで最高評価されたマルイウェブチャンネルだが「売上げ伸び率」「店舗への顧客誘導」を除けば突出した項目はなく、17年3月期の小売売上げは211.3億円とスタートトゥデイの1/10に留まり、平均ショップ売上げはゾゾタウンの1割に満たない。3位のアマゾンは「集客力」が評価されたが「物流機能」の評価はロコンドやゾゾタウンの後塵を拝する5位に留まり、「ファッション感度」は楽天市場と大差ない低さが指摘された。

 4位はファッションモールのマガシークだが、「ファッション感度」を除けば高評価項目はなく、同じNTT系のアウトレットピークは11位、dファッションは14位に甘んじている(KDDI系のWawmaはランク外)。5位はファッションモールの楽天ブランドアベニューだが突出した項目はなく、総合モールの楽天が6位で続く。7位には百貨店系で唯一、タカシマヤファッションスクエア(セレクトスクエアをリニューアル)が入ったが、やはり突出した評価項目は見当たらない。

 昨年と較べると2位だったマガシークが4位に、4位だったアイルミネが8位に、7位だったアウトレットピークが11位に、10位だったdファッションが14位に、11位だった集英社フラッグショップが16位に落ち、6位だったマルイウェブチャンネルが2位に、9位だった楽天市場が6位に、17位だったモバコレが10位に上がり、ランク外だった渋谷109ネットショップが9位に食い込むなど、変化が大きかった(3位のアマゾンと5位の楽天ブランドアベニューは変らなかった)。新参モールではデベ系モールの&モール(三井不動産)が「店舗への顧客誘導」が評価されて12位に食い込んだが、ストライプデパートメントは参加を見送るアパレルが大勢(出店は2社のみ)でランク入りには遠かった。

ファッションECでは「感性」も売上げを左右する

 ECモール評価の最大項目は「集客力」だが、ECフロントではカゴ落ちさせないスムースな操作性や分かりやすさ、決済方法の多様性や決済入力の容易さ、バックヤードでは出荷の速さや受取方法の多様性なども問われる。加えて、アパレル・服飾分野ではサイトページの「ファッション感度」、とりわけ写真の感性が売上げを大きく左右する。 

 モデルの選択やポーズ、構図やアングルはもちろん、照明の当て方やレンズの選択、絞りとシャッター速度の設定など、センスとスキルで大差が生じる。それも時間に追われてテキパキと高速処理しなければならないから、照明設定などが自動化された最新のスタジオユニットが不可欠だ。アマゾンジャパンがファッション分野の拡大を賭けて開設した巨大スタジオの設備を報道写真で見る限り、「ファッション感度」の飛躍的向上は望めそうもない(スタジオ機器が旧式で高感性での高速処理は難しい)。

ハイブリッド型の急増に注目!

 ECモールとの取引で注目すべきは、在庫を預けずECモールの受注商品を自社DCでピッキングしてモール側のフルフィルセンターに送り、モール側が顧客に出荷する「ハイブリッド型」が急増していることだ。在庫を預けてモール側が出荷する「フルフィル型」と受注データ(宅配出荷伝票)を得て自社で出荷する「マーケットプレイス型」の中間的性格で、販売機会の拡大と在庫分散の回避を両立させる知恵だが、手数料率は「フルフィル型」と変らないし、DC間物流のタイムラグが生じる。

 新参モールでは、三井不動産の&モールが「店舗への顧客誘導」とともに、在庫を預からず手数料率を実店舗の課金率に抑える「マーケットプレイス型」を評価されたが、ストライプデパートメントは在庫を預かって手数料率も高くなる「フルフィル型」が敬遠され、出店したアパレルも「ハイブリッド型」で在庫の分散を回避している。

 売上規模の拡大とともに年々低下してきた自社ECの売上げ対比運営コスト(支払い手数料や外注費のみならず社内の人件費や経費までトータルしたもの)も宅配料金の値上げなどで前年より0.7ポイント上昇したが、それでも在庫を預けるフルフィル型ECモールより4.6ポイント低く、実店舗の運営経費率より平均して10ポイント以上、最大17ポイントも低い。

 店舗販売に対するECのコスト的優位性は変わらないが、ECモール出店では手数料でコストが高くなるのに加え、在庫の分散が「がん」になる。それを回避すべく「マーケットプレイス型」へのシフトが進むとともに、「フルフィル型」でも在庫の分散を回避する「ハイブリッド型」取引が急増しているというのが最新情勢だ。

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