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『日本の商業施設デベは幸せだね!』(2020年07月07日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 日本ではコロナパンデミックによる長期休業や客数減で売上が激減したテナント企業が家賃の減免を求め、大手デベの多くが減免に応じたが、それでデベの経営が危なくなったと言う話はとんと聞かない。ところが、米国ではコロナ危機で家賃が入らなくなって破綻が危惧される商業施設デベが少なくないと言う。
 なんでかって言うと、日本の商業施設は売上金を預かって家賃や共益費を天引きしてからテナントに振り込む「売上金預かり制」だが、米国の商業施設はテナントに売上金が直接入り、そこからデベに家賃を振り込む「売上金直接収納制」だからだ。
 破綻が囁かれるCBL&アソシエイツプロパティは108も商業施設を運営する日本なら大手に入るデベだが、コロナ危機で売上が落ちたテナントの多くが家賃の減免を要求して滞納しており、4月は27%しか家賃を回収できず、5月も似たような状況だと言う(YAGI USA伝)。最大手のサイモン・プロパテイも家賃の滞納に苦しんでおり、6,600万ドルを滞納しているギャップ社を告訴している。
 日本では家賃を天引きされるテナントがデベに減免をお願いする構図だが、米国では『売上が減っては払えません』とテナントが実力行使している。
 我が国の「売上金預かり制」を大手外資チェーンは受け入れておらず、国内企業でもサブ核のカテゴリーキラーやユニクロなど大型ファッション店は直接収納していると見られる。
 建前は共存共栄だが、最低保障家賃や様々な共益費、キャッシュレス手数料の上乗せ徴収、内装監理費や退店時のペナルテイ徴収、定期借家契約の一方的な運用など、デベとテナントの関係は対等とは言い難く、この機会に抜本から見直されるべきだろう。 

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