小島健輔の最新論文

WWDジャパン2011年8月1日号掲載
『ファストファッションの終焉』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 一時のブームが去ってH&Mもフォーエバー21も店頭は閑散としている事が多くなったが、実際の数字はどうなっているのだろうか。  H&Mの11年度第1四半期(10年12月〜11年2月)売上は前年同期から1.4%減少、第2四半期(11年3〜5月)も2.2%増と伸び悩んでいるように見えるが為替のマジックで、現地通貨ベースでは第1四半期が109%、第2四半期が112%、既存店売上で見ても同101%、102%と堅調だ。INDITEXの最新四半期決算(11年2〜4月)売上も前年同期比11.1%増、既存店売上も103%と堅調で、両者の伸び率に大差はない。ただし、H&Mの第2四半期はマークダウンロスの肥大と調達原価の高騰で粗利益率が4.2ポイントも低下した反面、営業経費率が1.3ポイント上昇し、営業利益率は20.3%と突出しているものの前年同期からは5.5ポイントも悪化している。ファストと言ってもH&Mの商品回転は年間3.98回と国内ユニクロ事業の5.74回にも劣り、6割以上が値引き販売されて大量のマークダウンロスが発生していると推察される。
 目を日本に移せば、10年第4四半期以降、店舗が増え稼働売場面積が急増してもH&Mの売上はまったく伸びていない。08年9月の上陸直後は銀座、原宿の2店舗平均で月坪百万円以上を売り上げていたのに、店舗数が6店になった09年第4四半期には75万円、続く10年第1四半期には41万円と急落。10店となった10年第4四半期では売場面積が二倍に増えたのに売上は98.3と前年を割り込み、11年度第1四半期では25万円まで低下した。震災で大半の店舗が休業して売場稼働率が88%に低下した(それでも前年同期の三割増)第二四半期は32.6%も売上が減少し、11年上半期決算では稼働売場面積が44.4%も増えたのに売上は19.9%も減少するなど、もはや末期症状を呈している。
 売場面積が急増しても売上が減り続けると言っても即、日本撤退に繋がる訳ではない。急落したとは言えまだ月坪25〜26万円程度の販売効率に踏み留まっており、同社の60%前後という粗利益率から見て店舗段階の営業利益は十分に出ていると見られるからだ。都心店で30万円、郊外店で10万円を切るところまで行かないと営業赤字で日本撤退という結末には至らないのではないか。とは言え、店舗を増やしても売上が減るのでは新規投資の意味がないから、2ダースを超えるとスクラップ&ビルドで店舗数は頭打ちになると思われる。ブームが終わって販売効率は急落したが営業利益は確保しており、量販モードカジュアルチェーンとして定着を模索する段階にあるようだ。
 08年9月に銀座に上陸したとき、あまりに大味で低品質な商品を見て(前から欧米で見て安物を派手なプロモーションで売る量販チェーンと喝破していた)ブームは続かないと予見したが、07年春に進出した中国では既に50店舗に到達しても成長に陰りは見られないものの、遥かに成熟した日本市場では短期間のブームに終わってしまった。フォーエバー21は都合の良い数字しか発表しないが、多店化による販売効率の低下はH&Mと大差ないと推察される。海外はともかく日本におけるファストファッションブームは一過性のもので、メジャーマーケットとして定着するのは難しいというのが結論ではないか。
 ただし、アジア的衣料市場(いちば)を業態化した日本的ファストファッションとしてのしまむらの地位は日本の貧困化とともに揺らぐ事はないし、自社開発で完成度の高いZARA(INDITEX)はお手頃モードブランドであってファストファッションという分類にははまらない。もちろん、開発期間が長い自社開発ベーシックSPAのユニクロは何処から見てもファストではない。H&Mとフォーエバー21、それに刺激されて開発された幾つかの国内ブランドをファストファッションと限定した上で、ブームの終焉を宣言したい。08年9月の上陸からたった二年余りでファストファッションは終焉したのだ。
 一時はメディアが騒ぎ立てて大変なブームとなり、ユニクロや大手カジュアルチェーンのMD戦略にも好ましくない影響を与えたファストファッションだったが、結局は短命に終わってしまった。一時のブームに乗って安易に導入したデベロッパーの姿勢には疑問を感じていたが、臍を噛む結末になるのかも知れない。

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