小島健輔の最新論文

オリジナルトピックス 2005年5月
NY/W.DCインプレッション
“RUEHL”&“RUGBY”
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

ruehl01.jpg4月半ばに毎年恒例のNY/W.DC地区定点観測を行ったが、過熱気味の消費景気にも関わらず新たなモールやブランド/業態の開発は極めて少なく、既存店の

売上伸長をネタにしたM&Aばかりが盛り上がっていた。そんな中、ごく限られた新業態に業界の関心が集中して視察や調査が重なり、店側もナーバスになっていた。
 最も注目を集めていたのはアバクロ社が“Abercrombie&Fitch”の大人向け上級業態として立ち上げた“RUEHL”で、まだNJのガーデンステートプラザ、IL(イリノイ)のウッドフィールドモール、FL(フロリダ)のインナショナルプラザ、MI(ミシガン)のトゥエルブオークスモール、OH(オハイオ)のイーストンタウンセンターの5店しかなく、OPENING SOONと聞いて駆け付けたVA(バージニア)のタイソンズコーナーモールではまだ工事中でがっかりさせられた(8月開店予定)。
 レンガ張りの外観は50年代裏町の曖昧宿風で、狭いステップを昇った入り口にはちょっと年増なお姉さんが立っている(HOLLISTER Co.の爽やかギャル&ガイを期待する向きには落胆かも)。内部は西麻布の隠れ家BAR風で、小部屋に区割られた売場は飲み屋かと思う程ほのかな照明しかなく、フラッシュを炊かない限り撮影は不可能だ。小部屋を繋ぐ暗い廊下の片隅には無造作にグラフィックアートが立て掛けてあったり、その奥にはイサムノグチ風の和紙ペンダントライトの下にゆったりとしたソファーが置かれていたりと、無国籍な和み空間が演出されている。何処かに拗ねたポーズで壁に寄り掛かるジミー青年がいても不思議ではない雰囲気だ(映画「エデンの東」)。

ruehl02.jpg商品はアバクロをベースにちょいセレブな装飾トップスを加えた程度で、凝ったレザーバッグ群を除けば期待したほどのインパクトはない(“カイラニ”のセレクトはデリケートだと感心する)。シルエットこそタイトだがサイズ展開は太めで、トップスはへそを出せないほど長めと大人向けに徹している。独特なヴィンテージ加工も控えめで、メンズには薄くトラ味が、レディスにはどことなくエレガンス味が加えられており、凡庸なナチュラルモードに堕した“BANANA REPUBLIC”に飽き足らない若手ベビーブーマー層(主に40代)には支持されるだろう。
 住宅風のクローズドなエントランスや商品選びに窮するほどの暗がり、“Abercrombie&Fitch”より二回りも高いベタープライス(ジーンズの中心プライスは98$〜128$)を考えれば一般消費者の人気に火が付くには時間がかかりそうだが、店舗数が限られる現在は業界人のサンプル買いとセレクトバイヤーの店頭買いで結構な売上になっているようだ。
 “RUEHL”の影で目立たないが、業界通の間ではラルフローレンのキャンパスカジュアル実験店の“RUGBY”も密かに注目を集めている。昨年の10月23日にボストンのニューベリーストリートに1号店が開設されたばかりで、今年2月開設のチャペルヒル(ノースカロライナ)、3月開設のシャーロッツビル(バージニア)とも学生街にロケーションしている。今夏の終わりまでにNYのユニオンスクエア、ニューカナーン、イーストハンプトンにも開設される予定で、7月にはPOLO.Comのサイト内にRUGBYのページが立ち上がる。

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