小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年03月26日付)
『MDとサプライのリアルな革新』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 TFL(Tokyo FASHION-technology LAB)の卒業プレゼンテーションの審査に参加して、異分野からファッション業界に転じようという秀才たちの14事業提案を二時間ほど拝聴したが、「もの」の夢とアイデアは熱くても、マーケティングやマーチャンダイジングには見るものがなく、二人を除いて事業構想も凡庸でプラットフォームという視点も欠いていた。
 なんでそうなってしまうのかは明白だ。ビジネスモデルや実務の要となるそんな知識は大学でも専門学校でもIFIでもTFLでも教えていないからだ。ビジネスの現実には遠い基礎的な「学問」か注目を集める点のニューテクか注目ビジネスのライブ鑑賞にとどまり、とかく「ものづくり」に偏って流通プラットフォームへの関心は薄い。
 近年ブレイクしたニュービジネスの要は流通プラットフォームのD2Cなデジタルシフトとタイムリーな需給調整を可能とするサプライチェーンであり、一方通行で個客を見ず需給調整を欠くクリエイションやSPAとは対極にある。個客あるいはテロワールな使い手側のニーズを捉えてサプライチェーンを逆組み立てするのが肝であり、作り手都合のマーチャンダイジングやサプライチェーンを押し付けては需給ギャップが肥大してお値打ちが切り下げられ、顧客が離反するばかりだ。
 G3スマホによるモバイル革命を経てノームコア以降のファッションマーケットは使い手主導が極まり、クリエイションもSPAも空回りするばかりで年々非効率化し、新たなマーケットを切り開くパワーは期待できなくなった。その壁を越えるのがデジタル装備のニューリテールやD2Cだが、ハイテクばかりに目が行ってリテーリングやサプライチェーンのリアルプロセスから乖離し、「リープフロッグの罠」に陥るケースが後を絶たない。その意味ではファッションビジネスのプロもTFLの秀才くんたちも大差ない。
 個客から生産へリバースするサプライロジックには、オムニコマースな店舗運営や物流はもちろん生産工程までリアルな実務プロセスを熟知してデジタルとアナログの乖離を埋める知見とスキルが不可欠だ。最先端の知見に基づいてマーチャンダイジングのスキルとプロセス、サプライチェーンのロジックを提ずるのが4月11日(木)に開催する『バイヤー/MD/DB育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』なのだ。前年踏襲を脱してマーチャンダイジングのスキルとプロセスをアップデイトしたい実務者、原点からビジネスモデルとサプライチェーンを一新したい経営者のご参加をお勧めします。

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