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『プロが教える「お宝」を見つけるコツ…オフプライス店より「古着屋」が狙い目!』
(2022年05月03日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

「オフプライス品」の”4つのタイプ”を見極める

これを言ってしまうと取り付く島もないが、「オフプライス品」の多くは過剰供給や商品企画の市場不適合などで「売れ残った」「購入されなかった」曲者であり、消費者が一度は「気に入って購入した」実績商品たる古着に比べると不確実な商品と言わざるを得ない。

オフプライス市場に放出される衣料品には放出経緯によって4タイプがあるが、お勧めできる商品は限られる。

A)訳あり放出品……輸入エージェントや販売代理店が交代や撤退、破綻して放出されたブランド商品で、魅力的なお買い得品が多い「宝箱」だが、滅多にないことだから供給は極めて限られる。

B)過剰供給品……商品に問題がある訳ではないが作り過ぎで売れ残ったり、販売業者が引き取らなかった商品で、オフプライス品としては色やサイズも揃って確実なお買い得品だが平凡な商品が多く、魅力ある「お宝」とは言い難い。供給量も多くオフプライス店の主力であり、米国では計画的?に供給するアパレル事業者も多い。

C)バラ残品……小売業者がセールして売れ残った色やサイズが欠けた商品で、オフプライス業者としては扱い難いが人気ブランド品も混じっており、手間かけて探せばお気に入りが見つかるかも知れない。ブランド品ではオフプライス流通に放出せず、欠けた色やサイズを作り足して自社のアウトレットで販売するケースも多い。

D)難有り不適合品……物理的には問題ない合格品だが、デザインとサイジングや素材が噛み合わなかったりでマーケットに全く受け入れられなかった不適合品。外で着るのは憚られるから、部屋着やリメイク材料として購入されることが多い。滅多にないと思われるかも知れないが、オフプライス流通では少なからず見られるから、アパレル企画のギャンブル性が伺える。

「煮ても焼いても売れないもの」がある

この中で「B)過剰供給品」は商品に難があるわけではないから、資金繰りにゆとりがあるなら翌シーズンに持ち越して再販売することが多く、それでも売れ残って「C)バラ残品」になって放出されるか、売り切れないほど残れば放出される。魅力はなくても難もない商品だから、再値下げすれば売り切れる。

問題は「D)難有り不適合品」で煮ても焼いても売れないから、300円、500円など均一価格で処分されるが、それでも売り切れず猫又で誰も引き取らず、衣類ゴミとして放出されるものも少なくない。古着にもウエスにもならないから焼却処分するしかなく、環境に負荷となってしまう。

「オフプライス品」は供給量が限られる

「お宝」は母数の絶対供給量が豊富な方が見つけ易いが、その点でもオフプライス品は難がある。

アパレル事業者としてはできるだけ有利に換金すべく、値引き販売したり翌シーズンに持ち越して販売するから、オフプライス市場に放出する商品は極めて限られる。

環境省が日本総研に委嘱した「ファッションと環境」調査によると、アパレル業界が年間に新規供給した81.9万トン(30億2200万点)の衣料品のうち、13.61%の11.15万トン(4億1100万点)が売れ残ったという(実際にはその3倍と筆者は推計する)。

うち自社で持ち越したのが6.25%の5.12万トン(1億8900万点)、自社のアウトレットで処分したのが3.16%の2.59万トン(9550万点)、卸や商社などに返品したのが3.59%の2.94万トン(1億850万点)で、処分業者に放出したのは0.09%の740トン(270万点)に過ぎない。

卸や商社などから放出されたものを併せても、オフプライス流通に放出された商品はせいぜい1000万点弱と推計される。

海外から調達されたオフプライス品を推計する統計はないが、輸入ルートが確立された古着でも輸入品は総供給量の5.4%(重量ベース)に過ぎないから、輸入品を合わせても1000万点を大きく出るとは思えない。供給が限られるオフプライス品に比べ、古着は圧倒的に供給が豊富だ。

供給豊富で調達ルートが確立された古着

前述した環境省の調査では年間に古着として国内でリユースされたのは15.4万トンで、輸入古着0.63万トンを加え、輸出に回った古着4.4万トンを差し引いた11.63万トン(4億3000万点相当)が国内市場に供給されたとする。

故繊維事業者(ウエス屋)が回収して古着として供給した数量が拾い切れておらず、実際は15万トン(5億5400万点)を上回ると推計される。

コロナ禍で古着が再びブームとなった21年には輸入が8700トンに急増し、05年の8080トンを抜いて記録を更新したが、世界の古着輸出総量は18年には437万トンに達しており、我が国の輸入量はその0.2%ほどに過ぎない。

我が国の古着輸出量は21年で22万5440トンと世界の5%強を占めるから、その差は26倍にも及び、廃棄物を一方的に輸出しているという批判を免れず、需要の高まりもあって輸入量の拡大は必至と思われる。

現状でも古着の供給はオフプライス品の50倍以上もあり、古着輸入が拡大すればその差はさらに開く。供給量が豊富だと選択肢も広く、「お宝」が見つかる確率は格段に高くなる。加えて、オフプライス品と古着では業界の供給体制にも格差がある。

「仕分け」と「編集」の供給体制に圧倒的格差

オフプライス品は二次流通業者(バッタ屋)がアパレル事業者の放出品を選別せずに一括調達する(その分、買い叩くが)業界慣習が根強く、需要別の仕分けや編集を経ることなく、単品毎や一括で転売されるのが一般的だ。

オフプライス店側も限られた供給からシーズンの適品を確保するのに精一杯で、きめ細かい仕分け選別や再編集までは手が届いていない。一次流通の売れ残りを、ほとんどそのまま引き継いでいるのが現実で、消費者が求める品揃えには遠い店が大半だ。

それでは売れるはずもなく、目玉の「訳あり放出品」が売り切れて仕舞えば魅力のない残品ばかりになり、いくら安くしても動かなくなってしまう。シーズンの立ち上げ直後はお客で混雑しても、それはほんの一瞬で、後は閑古鳥が鳴く日々が続く。

対して古着はA)国内ウエス屋ルート[衣類ゴミから選別する低価格品]、B)国内買取店ルート[消費者持込のブランド品]、C)海外直買付けルート、D)海外編集卸ルート、E)国内編集卸ルート、と調達の選択肢が豊富で、各ルートとも仕分け選別と編集の体制が整っている。

海外ルートも北米集散地(カナダ)、欧州集散地(オランダ、ポーランド)、アジア集散地(マレーシア、パキスタン、アラブ首長国連邦)と多様だ。

内外の編集卸ルートではアイテムやサイズはもちろん、年代やテイスト、ブランドまで指定して仕分けてもらえるが、指定が細かくなるほどベール(100ポンド/45kgの圧縮パック)の単価は高くなる。

「M〜LLのアメカジグラフィックTシャツ」といったシンプルなオーダーから「70年代のリーバイスジーンズ」「ポロ・ラルフローレンの長袖柄シャツ」といった絞り込んだオーダーまで可能なのが古着の編集卸だ。

調達ルートが多様できめ細かい仕分けオーダーが可能なだけ、古着店の品揃えも多様でデリケートな編集が可能で、仕入資金さえあれば供給が途切れることも無い。

「お宝」を探すコツは

供給が限られるオフプライス店ではシーズンの立ち上げ時が狙いで、その数日を逃せば「お宝」の確保は難しい。通常は年に2回か4回だが、世界的な在庫換金業者のゴードン・ブラザーズがバックに付いた「アンドブリッジ」(現7店舗)は2ヶ月毎にチャンスがある。

古着店で「お宝」を探すコツはタイプ別に異なる。新品に近いブランド品を狙うなら、「2nd Street」のような特定ブランドが強い地域の買取店を探す。マニア好みのヴィンテージ品を狙うなら、その手に強い古着店のECサイトをチェックする(ベールは随時、開梱されている)。

「掘り出し物」を手頃な価格で狙うなら、国内ウエス屋ルートに強い大型古着店の切り替え時期をマークする。といったところだと思う。

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