小島健輔の最新論文

オリジナル原稿 2007年6月
『売上を創る営業的VMD』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 ビジュアルマーチャンダイジングは様々に定義されていますが、多くはスタッフワークであって売上に直結するライン業務ではなく、コストと効果の関係が明確でない点が指摘されます。どのような業務であれ手間とコストをかける以上、売上や利益に直結するライン業務に位置付けられないと継続は困難ですから、企業に定着するビジュアルマーチャンダイジングはライン業務であるべきと考えます。
 ビジュアルマーチャンダイジングを直訳すれば「視覚に訴えるマーチャンダイジング」となりますが、今日的には「視覚を中心とした五感に訴える売場環境演出・陳列訴求業務」とした方が正確でしょう。五感に訴える売場環境演出という面では、店舗デザイン/照明から音響、空調、ディスプレイ、スタッフアクションまでエンバイロメンタル(環境的)に演出する技術体系と定義する事も出来ます。これには百貨店などで発展した、ワールド>ゾーン>ブロック>カセットと誘導するレイアウト/VP技術体系も含まれるでしょう。但し、これらは陳列ラックの外で展開されるサービススタッフ業務であって、売上に直結するライン業務とは言えません。
 では、売上に直結するライン業務に位置付けられるVMDとはどのようなものでしょうか。それは品揃えの陳列表現を中核に、消化を促進する編集運用、補給や在庫管理を一貫する営業的VMD業務だと考えられます。何ヶ月か前に設計された品揃え展開は直近のシーズン進行やスタイリング傾向とズレがちですから、定期的に最適な品揃えに修正表現する必要があります。現実の在庫を売れる構成に再編集するには営業的センスとトレンド感度に加え体系的な編集技術・陳列技術が不可欠で、店頭在庫と後方在庫の意図的運用や最適な配分・補給が伴えば編集効果は確実に増幅されます。
 営業的VMDを担うのは数値責任を持った店長やエリアマネージャー、ブランドビジネスなら営業(スーパーバイザー兼ビジュアルマーチャンダイザー兼ディストリビューター)で、数値責任のないサービススタッフたるディスプレイヤー的ビジュアルマーチャンダイザーでは有り得ません。
 もちろん、営業的VMDであっても今日ではブランディングの視点が欠かせません。ブランド/ストアのコンセプトやテイスト、クラス感を表現する美術的演出・陳列技術を同時に持ち合わせる必要があります。営業的VMDとブランディングVMDを兼ね備えたライン業務こそ、今日のファッションビジネスに求められるVMDではないでしょうか。

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 当社ではこのような考えに基づき、『即時売上向上VMD編集ショップ運営ゼミ』『ブランディングVMD技術革新ゼミ』を春秋開催(07年春期は終了致しました)する一方、個別企業と契約して店頭の売上向上/消化促進/ブランディングから発してMD展開を改善していく『VMD編集クリニック』パッケージを提供しています。お問い合せはメールにて御連絡下さい。

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