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ブログ(アパログ2018年05月14日付)
『ZARAのショールーミングストアは必見だよ』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 INDITEX傘下のZARAは1月末から実施したウェストフィールド・ストラットフォードシティSC(ロンドン郊外)でのポップアップ展開に続き、5月9日から六本木ヒルズで期間限定(7月末まで)のショールーミングストアを開いて注目を集めているが、私も早速、体験してきた。
 利用プロセスは多くの皆さんがフェイスブックやブログで報告しておられるので、ごく簡単に紹介すると、AppStoreから専用アプリをスマホにダウン⇒試着する商品のバーコードをスキャンしてサイズを選択⇒試着申し込み⇒待ち時間表示⇒案内通知⇒顧客コード確認⇒試着室へ⇒試着して気に入ればスマホから発注(レジ精算も可)⇒13時までなら当日18時〜翌日正午以降店舗受け取り(他店受取も可だが数日かかる)または宅配、という典型的なショールームストアのオペレーションだ。
 若いお客さんはスイスイやってるけど、アプリ慣れしてない年配の方やガラケーの方には貸出用のスマホが用意されていて、通常のお店より多数のスタッフが付きっ切りで親切にサポートしてくれる。それって「amazon Go」も似てて、“無人コンビニ”って言われてるけど、フツーのコンビニの4倍ぐらいのスタッフが張り付いている。新しい試みゆえの特別体制なのだろうが、多店舗での通常営業ではどうするのだろうか。

 ZARAのショールーミングストアを体験して“いいね”と思ったのが2点、“つらいね”と思ったのが2点。

いいね1)各一サンプルなので陳列が綺麗

 もとより1〜2色企画が多いZARAだけど、ここでは一色に絞ってシングルハンガーにカラーグループ別あるいはテイスト別に色環順配列でルック回転陳列(隣同士でルックになるよう連続配列)していた。販売在庫をサイズまで揃えてぎっしり陳列すれば綺麗に見せるのは難しいが、ワンサイズだけのサンプル陳列なら理想的な見せ方ができる。ラグジュアリーブランドの多くは端から見栄えにこだわるサンプル陳列で、接客でサイズを出してくる。バックヤードに在庫を積んで持ち帰りに対応しているからショールームストアではないが、陳列手法は似たようなものだ。

いいね2)試着待ちとレジ待ちのストレスを解消

 ZARAに限らずファストなファッション店で一番辛いのが試着待ちとレジ待ちで、待ちが長いと諦めてカゴ落ちしてしまうが、ここではどちらもストレスがない。試着待ちはミニマム5分、混めば10分以上かかりかねないが、在庫を積まない分、ゆったりとソファーを並べているから、座ってスマホで遊ぶか買い物客でも眺めていればストレスはない。発注と精算もスマホでするからレジ待ちもなく、後で発注するもよい。宮田理江さんのブログでは『試着後に意思表示しなくてよいから購入しない場合の気まずさ、販売員さんにとってはガッカリが避けられる』と指摘しておられたが、そんな面でもストレスフリーなのだろう。

つらいね1)通常店舗以上の人手を要す

 『試着待ちはミニマム5分』と言ったが、それはバックヤードで試着希望品のサイズを探してピッキングしフィッティングルームにセットする所要時間であり、順番待ちの時間は含まれない。混んで来ればピッキングも煩雑になり順番待ちも加わるから10分以上かかりそうだが、それでは『試着待ち解消』からは遠ざかってしまう。フィッティングスペースにはスタッフが張り付いており、試着してサイズが合わなければ数分で持ってきてくれるが、バックヤードのピッカーと試着サポートのフィッター、売場の販売員という三重配置では通常店舗以上に人手を要するのではないか。高販売効率な店舗では合理的な分担だから否定するわけではないが、ショールームストアの運営としては再考すべきかも知れない。

つらいね2)バックヤードがスペースを食う

 店頭はワンサイズのサンプルだけでもバックヤードには試着用のサイズを揃えたピッキングヤードを備えねばならず、結構なスペースを食ってしまう。在庫を積まない分、接客空間をゆったり取って買上率と客単価で売上を稼ぎ家賃負担を軽減するというショールームストアの基本的メリットが成り立つのかも疑問だ。

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 高級ブランド的な見栄えを優先してか顧客のストレスフリーを優先してか、展示用サンプルと試着用サンプルを分離したためスペースが二重になり試着までワンクッション入るが、全サイズ展示に割り切れば見栄えは劣るものの二重性は解決される。それはそれでスペースを食うし試着プロセスで別の問題も生じるから、どちらがベターか実証運営してみなければ答えは出ない。
 ロンドンも六本木も移転増床までの狭間のポップアップ展開で、ロンドンではもうすぐ4500平米に増床リニューアルされた旗艦店がオープンする。そこではロボットがピッキングする自動倉庫が備わるというから、六本木の新店でも同様にサイズピッキングの人海戦術とタイムラグは多少なりとも解消されると期待される。ポップアップ展開での実証結果がどう反映されるのか、むしろ本番の方に興味を惹かれる。
 ZARAショールーミングストアはクリック&コレクトを訴求するプロモーションと運営実験という性格が強いが、アパレル販売に関する興味深い課題を幾つも提議している。アパレル流通に関わる者には必見・必体験だから、お早めのお出かけをお勧めする。

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