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ブログ(アパログ2018年11月16日付)
『渋谷は吉祥寺化するのか?』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 かつては若者の街として人気を集め、近年も大人ライフスタイルの街として「住みたい街」の上位にランキングされ続ける吉祥寺も商業的には次第に寂れ、静かな郊外ターミナルの街になってきたが、最近の渋谷の雰囲気はなんだか吉祥寺に似てきたように思える。
 吉祥寺が新宿と立川に挟まれて寂れ伊勢丹もなくなって東急百貨店だけが残るが、渋谷も新宿や池袋と横浜/みなとみらいに挟まれて通過駅になり、パッとしない東急百貨店(東横店と本店)と西武渋谷店が賑わいに取り残されたように存在する姿はしばらく前の吉祥寺と重なって見える。吉祥寺だって駅のアトレは繁盛しているが、駅から離れれば人通りは寂しくなるし、渋谷だって駅前に集中が進んで坂の上は次第に寂しくなっている。吉祥寺も飲食はまだ賑わっているが物販は厳しく、渋谷もそんなローカルターミナルになっていくと思うと寂しくなる。
 若者は駅前のスクランブル交差点からせいぜい109やメガドンキ、センター街や井ノ頭通りを回遊するのみで、かつては若者で賑わった公園通りやイエローストリート、ファイヤストリートは人通りも疎らだ。19年の9月にパルコが建て替えられて再開業しても、そこから先へ人通りを伸ばすのはもう難しいだろう。
 JRと東急が進めている再開発は駅上・駅前に商業とオフィス、南側の明治通り沿いにオフィスを集中するもので、かつての渋谷文化を支えた北側の坂と丘は寂れるばかりだ。駅に集中してビルが上に伸びるほど面の広がりが縮まり、街の多様な魅力は損なわれていく。オフィスビルが集積され昼間人口が増えても若者文化が戻るわけでなく、オフィス勤務者の消費は駅周辺にとどまって坂と丘に賑わいは戻らないだろう。
 吉祥寺はまだしも生活圏としての魅力があって、静かな郊外ターミナルになっても「住みたい街」ランキングの上位を維持しているし、駅の乗車客数が減っているわけでもない(17年は首都圏22位だが1.2%増)。渋谷は13年3月の東横線と副都心線の相互乗り入れを契機に乗り換えの不便さもあって通過駅化し、乗車客数も17年は首都圏6位まで転落して上位30駅で唯一減少するという寂れ様だ。生活圏としての評価も低く、恵比寿が吉祥寺と「住みたい街」ランキングの上位を争っても渋谷は17年の10位が最高ランクにとどまる。
 生活圏としての魅力を欠く渋谷が街の個性を失い、オフィスビルと駅商業の何処にでもある機能的な街になっていくとしたら商業地としての魅力も一段と削がれ、もはや坂と丘に賑わいは戻らないだろう。吉祥寺は魅力ある生活圏ターミナルとして残っても、渋谷は忘れられた街になっていくのかも知れない。

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