小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年04月15日付)
『ECのVMDって限界がある』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 3月末に開催したSPAC『最新オムニコマース総研究』でECモール各社のテンプレートを調べてみたら、どこも編集フレーミングでブランドの「顔」を申し訳程度に作っているだけで、単品の羅列でしかないと痛感させられた。楽天やヤフーへの場所借り出店や自社ECならテンプレートも選べるし、フレーミングでブランドの「顔」やキャンペーン訴求も作り込めるけど、ECモールではお仕着せのフレームに押し込まれて申し訳の域を出ない。
 テンプレートが単品編成なのはカートが単品登録だからで、単品登録でないカートなんて機能上あり得ないと思う。それゆえECフロントのVMDは品番ごとの表現に制約され、写真で色違いや各方向からの見えがかり、お勧めスタイリングは見せられても、サイズごとの各部寸法/重量やSKU在庫を表記できても、複数品番に渡るMD展開を面表現するのは難しい。
 店頭ではアイテムやルックはもちろんカラーや素材、テイストで切り出す出前訴求が自在で、スキルとセンスがあれば面の展開も時系列な展開も表現できるが、物理的な陳列替えは相応の作業量を要するから即はもちろん高頻度も難しい。店頭と違ってECフロントでは「検索」が使えるから、カテゴリーやアイテム、カラーやサイズ、新規投入品やセール商品、オフシーズン品など自在にピックアップして即時に切り替えて一覧できるが、面のMD展開や時系列なMD展開を表現するのは難しく、画面の狭いスマホではほぼ不可能だ。
 単品登録のカートと切り離せないテンプレートの構造から編集や展開表現には限界があるとは言え、どこのサイトも単品表現にお勧めスタイリングをくっつけるだけでMD展開が見えないのは購買利便を欠くし、ブランド横断で単品を並べるECモールのフレーミングでは価格訴求に流れがちだ。店頭なら一見して売場全体の品揃えや企画ごとのMD展開を見せられるのに、ECフロントではそれが出来ないで済ませて良いものだろうか。
 カートが単品登録でもテンプレートのフレーミングを面展開型にプログラムするのは可能なはずで、「ルック」や「企画」、「素材」や「カラーグループ」などでピックアップし、編集選択でアイテム優先にしたりカラー優先に切り替えたりできれば店頭に近いVMDを表現できるのではないか。いっそ店頭のVMD展開写真を載せて、興味あるアイテムをクリックすれば瞬時に並び替わったり単品ページに飛ぶようなフレーミングが効果的だと思う。
 今は単品編成が露骨になったZOZOも初期は各テナントのファサードが並ぶモール表現を重視して好感度な顧客を集め成功の礎を築いた。ECフロントには店頭のショッピング感覚に近いVMD表現が必要なのではないか。
 技術的には十分可能だろうが、それを狭いスマホ画面で表現するのは幾らスクロールに組んでも限界がありそうだ。先週金曜に開催した『VMD技術革新ゼミ』の準備をしながら、そんな妄想に囚われていた。

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