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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『「無人店舗革命」に死角あり!』 (2018年02月14日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

確立された既存技術を活用して、中国で急進

 米国の「Amazon Go」(画像認識AI×RFIDタグのレジレス第三世代型)がようやく一般客対応の1号店開業(1月22日シアトル)にこぎ着けたという段階なのに、中国では露店の屋台まで「QRコード×スマホ決済(アリペイ/WeChatPay)」のキャッシュレス化が普及し、「アプリ登録×QRコード認証×バーコード読み取りセルフレジでスマホ決済」という第一世代無人コンビニ(「Bingo Box」)が広がりだしたと思う間もなく、RFIDタグ読み取りセルフレジ決済後の商品持ち出しをRFIDダグの絶対単品認識で精算検証する第二世代(「Well Go」)が登場し、画像認識AIとRFIDタグを組み合わせて支払いゲートを通過するだけで決済されてしまうというレジレスの第三世代(アリババの「淘珈琲」で「Amazon Go」とほぼ同様)が発表されるという過熱ぶりで、無人店舗時代が到来したかの感がある。

 米国やわが国の小売業が「オムニチャネル神話」の幻想に惑わされたままECに売上げを奪われて凋落し、ECのフロントと物流を活用して販物分離を果たす「ショールームストア革命」にもほとんど手を付けられないうちに、今やIT&フィンテック先進大国と化した中国では確立された既存技術を活用して「無人店舗革命」が急進し、アリババなど『ポストECは無人運営のニューリテイルだ』とまで豪語している。

 が、「無人店舗革命」のシナリオには根源的な死角がある。

無人店舗の死角は「マテハン」にある!

『レジがセルフレジになりレジレスになって店頭から運営人員が消える?』というシナリオは視野狭窄も甚だしい。レジが消えてキャッシャーもサッカーも不要になるだけで、荷受け・棚入れ・補充・棚整理という店舗労働の過半を占める「マテハン労働」はそのまま残ってしまう。「販物一体」流通である限り、いかに精算プロセスを自動化・無人化しても店舗運営の効率化には限界があるのだ。

「販物一体」ゆえ、売る側も買う側も労働とコストの負担が大きい前世紀のチェーストア流通を、「販物分離」ゆえ、売る側も買う側も圧倒的に労働とコストの負担が軽いECが駆逐していくという目の前の現実を直視するなら、中国で急進する「無人店舗革命」はマテハンと物流というチェーンストアの暗黒を解決するものではないと喝破できるはずだ。ECの覇者たるアリババが「販物分離」のEC物流と「販物一体」の店舗物流の根本的違いを認識していないとは到底思えないのだが……。

ニューリテイルの幕開けに必要な「両面のリテラシー」

「チェーンストアのがん」たるマテハン労働とコスト負担を最終的に解決するのは「販物分離」の「ショールームストア革命」に他ならないが、「販物一体」のチェーンストア物流とマテハンをカイゼンせんとする試みは1980年代から行われてきた。イトーヨーカ堂のネットスーパーで店頭陳列棚からのピッキングが顧客のピッキングを妨害するとしてダークストアが設けられたのは記憶に新しいが、棚入れ補充とて買物客のピッキングを妨害するのは同様だ。それを解決せんと後方自動補充方式を大々的に試みた1983年の「メカトロスーパー」(西友能見台店)の先進性が今更ながら評価される。

 ECの世界でもAIやフィンテックの華々しい技術革新が注目されるフロントヤードとマテハンと物流のバックヤードは必ずしもうまく連携されず死角になりがちだが、店舗流通の世界でもそれは同様だ。精算プロセスというフロントヤードだけ無人化してもマテハンと物流を革命的に効率化しない限り、ECと対抗できる「ニューリテイル」の幕は上がらない。フロントヤードとバックヤードの両面をにらんで革命の構図を描けるリテラシーが経営陣に問われているのではないか。

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