小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年03月19日付)
『無人店舗ブームって怪しくね?』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 3月14日に亡くなられたホーキング博士が『AIは人類の終焉を招く』と警告していたことはよく知られているが、世界はAI活用に突っ走っている。IBMのワトソンなど人智を超えてHAL9000を凌駕する“人格”の域に入っているし、「aibo」や「Robi」に心を通わすのだからALEXAやSiriとて・・・・と先日の『ALEXAとイヴの時間』で懸念を表したが、それ以前に画像認識AIの急速な普及は別の問題を拡げている。
 公共施設から店舗まで画像認識AIのカメラだらけになればプライバシーも何もなくなってしまう。防犯には必要だが、流行りの無人店舗で四方八方から数百台のカメラに一挙手一投足まで監視されるのは気持ちのよいものではあるまい。
 「amazon Go」が何百台使っているかは知らないが、ディスカウントストアのトライアルカンパニーが2月14日に福岡に開業したスマートスーパーではパナソニックの700台のカメラが棚の陳列と顧客を隅々まで撮し、欠品防止と顧客行動分析に活用するそうだ。買い物客はプリペイドカードを購入した上で、タブレットとバーコードキスャナーを備えたショッピングカートを押し、購入する商品のバーコードをスキャンしてカートに入れタブレットで精算する。これではセルフレジがカートに乗っただけで、顧客には何のメリットもない。それでいて四方八方からカメラで覗かれるのだから、よほどの新し物好きでないと遠慮したくなる代物だ。
 トライアルカンパニーもさすがに過渡期の試みと解っているようで、本社構内の実験店舗でウォークスルー型スマート決済システムの実証実験を開始している。それとてプリペイドカードの購入は同様で、バーコードがRFIDになってスキャンしなくても精算ゲートが一括自動読み取りして決済するだけで、それがどうしたの?という感は否めない。
 明らかに過渡的なトライアルカンパニーのスマートスーパーや「Bingo Box」「Well Go」など中国の無人コンビニはもちろん、最先端AI装備第三世代の「amazon Go」やアリババの「淘珈琲」にしても、数百台のカメラと画像認識AI、RFIDと絶対単品認識スマートゲートという重装備を施して得るものは“無人運営”には程遠い“無人精算”でしかない。それも第二世代までは出口で人が監視する必要があり、最新スマートゲートの第三世代とて顧客の善意を前提としたものだ。
 それで果たせるのはキャッシャーとサッカーが不要になり、店頭を占拠していたレジやセルフレジのスペースが無くなって代わりにスマートゲートが並ぶだけだ!!!精算業務が店舗運営人時に占める割合はせいぜい15%で、搬入・棚入れ陳列・補充整理などマテハン業務が過半を占める。精算だけAI装備でスマート化しても、マテハンを自動化するか、無在庫化してマテハン作業をゼロにしない限り、店舗運営は無人化できない。
 顧客は四方八方から数百台のカメラに覗かれる心地悪さの一方、レジ待ちやセルフレジ作業から解放されるぐらいしかメリットがない。加えて、過渡期型では自分でスキャンしなければならないし、最新のスマートゲートとて自分で袋詰めしなければならない。流行りの無人店舗(実態はレジレス店舗)は実用性・実効性が疑わしく、このままではAIブームに乗せられた一時のトレンドに終わるかも知れない。顧客本位、マテハン本位で再構築する必要があろう。
 4月12日に開催する「ポストECのニューリテイル戦略ゼミ」では、膨大な投資を要するそんなギミックではなく、発想を変えた無在庫・省人時の革命的ビジネスモデルを詳細に解説したい。

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