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『ユナイテッドアローズが余命3ヶ月ってホント?』(2020年05月25日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 ダイヤモンドオンラインで『コロナ禍のアパレル24社、「余命」ランキング、ユナイテッドアローズは3ヶ月未満』と書かれて流石に驚いたが、私もプロだから早速、ユナイテッドアローズの20年3月期決算の貸借対照表からホントかどうか試算してみた。
 結論から言うと、3ヶ月で破綻する可能性はないが、秋冬にコロナの第二波が来れば21年3月までに破綻する。
 20年3月期決算では売掛け債権回転日数が26.3日、棚卸し資産回転日数が124.8日、買掛債権回転日数が51.0日だったから、運転資金回転日数は100.1日で、必要運転資金は432億円と年商の27.4%に及ぶ。期末のキャッシュフローは配当金の支払いや借入金の返済でカツカツで、57億2600万円しかなかった。
 そこにコロナ休業による売上の激減が生じた。4月の既存店売上は62.4%減だったから、5月も26日から営業を再開してもほぼ同率の減少になると見れば、4、5月に失った売上はほぼ160億円。その間の固定費負担を最小限に抑えたと見て80億円、計240億円のキャッシュが失われたはずで、57億2600万円のキャッシュフローは即、蒸発して180億円以上の借り入れが必要になったと推察される。
 株主資本386億3400万円の6割以上が2ヶ月で吹っ飛び、借入金は46億円から230億円に膨らんだはずだが、超過債務にはまだ距離があるから『余命3ヶ月』とはならない。業績が低迷していたわけでなく一過性の厄災だったから、180億円の借り入れが難しいとも思えない。
 ただし、緊急事態宣言が解除されても即、通常ペースの売上に戻るわけではなく、7掛け8掛けから徐々に回復していくことになるから、6月〜来3月の売上も9掛けに届かないと見る。となれば営業赤字は避けられないから、綱渡りの経営が続く。コロナの第二波が来なければ、徐々に回復して来期は通常ペースに戻るだろうが、もし第二波が来れば力尽きる可能性も残る。
 それはユナイテッドアローズに限ったことではなく、テナント出店主体のアパレルチェーン(日銭が4週弱遅れる)は皆、似たようなものだ。全社の決算書を洗う暇はないが、堅実に成長して来たユナイテッドアローズさえ綱渡りなのだから、危なっかしい経営をして来たアパレルチェーンは皆、瀬戸際に立たされている。えっ!と言うチェーンの破綻報道が続いても、もはや驚きはしない。テナント出店に偏った出店政策のツケが回って来たのだ。

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