小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年02月19日付)
『新世紀JKリアル図鑑に異議あり』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

7208ブログ画像-上

 
 SHIBUYA109エンターテイメントと産業能率大学小々馬ゼミの共同研究プロジェクトが発表している一連のJK調査レポートはリアリティがあって大変興味深いが、長年に渡って客層タイプを研究してきた私から見れば、ライフスタイル検証はともかくファッションタイプ分類についてはステレオタイプを出ていないように思える。
 まな板にあげるのは19年1月公開の最新版「新世紀JK生活価値観調査2018」ではなく、前年2月に公開された「新世紀JKリアル図鑑 7つのおしゃれタイプ」。この7タイプの分け方は大きくは間違っていないものの分類基準に統一性がなく交錯しており、「一球入魂系」の位置づけは根本から外している。
 ファッションタイプ分類は当然「学外の私服」と規定すべきだが、「新世紀JKリアル図鑑」では通学の制服アレンジを「一球入魂系」タイプとみなしている。学外でも制服しか着ない娘は余程の例外で、通学の制服アレンジとプレップ系の私服がごっちゃになっているのはどうかと思う。そのかけ違いが地域特性の見方も曲げており、プレップ系比率の高い城南・横浜の特性(ローファーが目立つよね)を『「一球入魂系」は神奈川県民、私学が多い』と規定してしまっている。ファッションリーダーと位置付ける「LA❤JK」を『千葉県民が多い』とし、「サブカルJK」を『ファッションに無関心』『埼玉県民が多い』と断定する根拠も疑わしい。
 これらはごく一例だが、ファッションタイプと地域・属性の関係は表層的で誤解が多く、JKにファッションを売りたい業界にとってはすれ違いを招きかねない。「サンプルクラスター分析」の基とした26の質問項目を設定する段階でステレオタイプに誘導してしまっていることが根本的ミスで、今時のファッションタイプを分類したいならもっと直接的な問い方で質問項目を半分ぐらいに絞るべきだったのではないか。インターネット調査という方法も精度が疑わしく、グループインタビューと組み合わせてリアリティを高めているとはいえ、ボタンの掛け違えが残った感がある。
 ライフスタイルをファッションタイプに繋げるには価値観軸を見極めるべきで、JKとて例に漏れない。私もJKに詳しいわけではないが、JKもののアニメやコミック、ファッション誌の読者特集などから価値観軸を想定して主要なファッションタイプをプロットして見た。ばっくりした構図だが、参考になれば幸いだ。
 ファッションタイプ分類については異議ありだが、お小遣い(定期5000円+都度4000円)をアルバイト(4万円)で補填しないと支出(4万5000円)を補えないとか、服と服飾雑貨(5000円+3000円)、美容と化粧品(5000円+3000円)が拮抗しているとか、ファッションのお買い物は親同伴で買ってもらうのが6割近いとか、ライブや舞台、アーチストやアイドルグッズへのエンタメ出費(10000円)が最も多いなど貴重な情報も多く、JKライフスタイルレポートとしては興味本位に流れず極めて秀逸だ。それは以前に紹介した「新世紀JKおしゃれ生活インサイトレポート」(「新世紀JK生活価値観調査2018」に同じ)にも共通する。どなたでもダウンロードできるから、一読をお勧めしたい。
 

7208JKファションタイプ分類-下

論文バックナンバーリスト