小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年08月27日付)
『新品の服を買わなくなった』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

4f79b05d6f0ee8cdc6a6405e134a6968

 ひと昔前までは結構、ブランドにこだわって身分不相応な出費も厭わなかったものだが、年々ブランドにこだわらなくなり、お値打ちや使い勝手を判断して手頃なSPA商品で済ませることが多くなったが、最近はそれも割高に感じるようになり、カジュアルではリユースやデッドストックを漁るようになった。

 仕事着としてのビジカジはさすがに清潔感があって使い勝手もよい「メ—カーズシャツ鎌倉」、代替ブランドが見つからないパンツは未だ「PT01」や「INCOTEX」が手放せないが、出張には手頃でケアいらずのアクティブスーツで十分だし、自分を解放する週末のカジュアルは「KINJI」などリユース店で気に入るアイテムを探す。

 

■旧品は新品より格段にお値打ち

 どうしてユーズドやデッドストックを漁るようになったかと言えば、お値打ち感が新品より格段に高いからだ。今風のトレンドに染まった新品より賞味期間が長いのも有り難い。

 今風に切り詰めた原価率で作られたポリまみれの新品は薄っぺらくて愛着がわかず、手間もコストもかけた一昔二昔前の旧品に惹かれてしまう。昔の原価率は今より格段に高かった(90年代初期と較べると15ポイントほど切り下げられた)から元よりお値打ち感が高いのに加え、リユースやデッドストックは往時売価の何分の一かで売られているから、今の新品に比べれば桁違いの値打ちがある。ことカジュアルに関する限り、薄味で割高な新品を買う理由は見つからない。目利きに自信のある人はリユースやデッドストックに流れて当然だろう。

 

■リユースが拡大すれば新品流通は破綻する

 リユースのB2C市場規模はまだ金額ベースでは衣料・服飾流通の2%強(リサイクル通信の調査では2152億円、ブランド品2401億円は含まず)だが、メルカリ(18年6月期の国内衣料・服飾流通総額1840億円)などC2Cまで加えれば5%に迫り、数量ベースでは15%近いと推計される。米国のオフプライス市場規模が金額ベースで15%弱、数量ベースでは30%を超えるというのも空恐ろしいが、急拡大する我が国の衣料・服飾リユース市場も遠からずそれに迫るのかも知れない。日米ともギョーカイ都合のファッションシステムやSPAごっこの果てに流通が非効率化・高コスト化して価格とお値打ち感が見合わなくなり、新品の正価流通は既に崩壊している。

 価格にお値打ちが見合わないから値引き販売が当たり前になり、レンタルやリースで済ましたり、購入しても旬を楽しんだらメルカリなどで売ってリボルビングするツワモノも少なくない。ましてやリユースに抵抗のない人が増え、米国型のオフプライスストアまで氾濫するに至れば、ギョーカイはいったいどうなるのだろうか。その日は間近に迫っているのではないか。

論文バックナンバーリスト