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『アウトドアとオフプライスが氾濫する 「ららぽーと愛知東郷」』(2020年09月09日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 台風10号が接近した7日の月曜日、14日に開業する「ららぽーと愛知東郷」のプレス内覧会に行って来たが、過剰な時流対応に驚いた。
 「アルペン・アウトドア」(二層4460平米)、「コンプ・アス」(ムラサキスポーツのアウトドア新業態)、「コロンビア」「ノースフェイス&HH」「マーモット」「アウトドアプロダクト」「ワークマン」と総店舗面積6万4000平米の1割近くをアウトドア関連に割いているのは過熱気味で、業種構成のバランスを崩している。
 「アルペン・アウトドア」以外にも「ニトリEXPRESS」「Loft」「TSUTATA」「 コロニー2139」「ABCマートGRANDSTAGE」「H&M」「スポーツDEPO(アルペン)」「アカチャンホンポ」「エディオン」「NAMCO」と1000平米超のサブ核と食品スーパーの「平和堂」に店舗面積の43%以上を割いており、6万3900平米に201店(単純平均で318平米)ではAEONSTYLEが過大な面積を占めて専門店テナントのバラエティが制約されるイオンモールに対するアドバンテージが損なわれる。家賃が安い大型店が大きな面積を占めては一般専門店テナントの家賃が割高になったのではと心配にもなる。
 これほど大型店とアウトドアに偏っては業種・業態の欠落は避けられず、足元占拠率が不安定になり、地元のサントムーン柿田川に圧される沼津の二の舞も危ぶまれる。
 もうひとつ、サプライズだったのがワールドが自社ブランド処分アウトレットの「NEXTDOOR」を600平米級で2Fのメイン区画(トミーヒルフィガー隣)に出店していたこと。「アンタイトル」や「インディヴィ」など百貨店ブランドの昨シーズン品を6〜7割引で叩き売っていたのには正直、驚いた。「コーチ」や「ラルフローレン」も出店しているアップスケールなSCなんだから、違和感がすごかった。
 ワールドも在庫を抱えて背に腹は変えられないのかも知れないが、名古屋の都心百貨店は激怒しているに違いない。三井さんもよく許したものだ。「NEXTDOOR」と名付けても内装も陳列もオフプライスストアの「アンドブリッジ」で、ワールドにとっては一体の戦略なのだろう。
 コロナ危機を引きずって、持ち越し在庫を半額ほどで叩き売るアパレルテナントも幾つか目に付いたから、郊外大型SCの価格感覚もホームセンターに近づいているのかも知れない。
 「ららぽーと愛知東郷」は様々な意味でコロナ後のSCのあり方を考えさせられる施設だから、是非とも自分の目で見て実感してもらいたい。

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