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『好調継続のしまむらと全米最高利益率のバックル、両社に見られる共通点』
(2026年04月10日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 

 しまむらは5期連続の増収増益、最高益更新で27年2月期も上方修正して6期連続の増収増益、最高益更新を見込むという勢いだが、何かと比較したくなるのが米国のジーンズカジュアルチェーン The Buckle(バックル)だ。

 

■好調継続のしまむらは「改善」の域を超えて飛躍するか

 しまむらの26年2月期は売上高が前期比5.2%増の7000億3400万円、営業利益は同3.8%増の614億8300万円、当期純利益は同6.1%増の444億6000万円と増収増益で、中期計画最終年度となる27年2月期の売上高を7291億円(従来目標+41億円)、営業利益を668億円(従来目標+3億円)と上方修正している。営業利益率は8.8%と同0.1ポイント低下したが純利益率は6.4%と同0.1ポイント上昇した。

棚資産回転日数は期初期末平均在庫で見ると47.1日と前期から1.0日短縮しており、前期末から在庫が7.2%積み増されても在庫効率は落ちていない。連結売上高の74.2%を占めるしまむら事業の値下げ率は6.2%と前期から0.2ポイント、22年2月期からは1.1ポイントも改善されており、期中の店間移動による適正再配置など運用精度が高まっているようだ。買掛債務回転日数は20.6日と22年2月期の27.0日からは6.4日短縮されており、速い支払いが商品調達の機動性を高めていると推察される。

粗利益率は34.8%と前期から0.1ポイントの上昇だが、JB※の拡大や単価上昇で年々、少しずつ上昇して過去最高の水準に達しており、19年2月期からは3.0ポイントも上昇している。在庫回転も期初期末平均法で7.75回転と前期から0.14ポイント、20年2月期からは0.86ポイント上昇している。

交叉比率は粗利益率34.8%×在庫7.75回転=269.9と前期から4.2ポイント、22年2月期から14.5ポイント上昇しており、最悪期だった20年2月期(223.9)からは46ポイントも上向いた。調達が機動化され在庫管理精度も高まっているが、縦売り※MDのサプライヤー連携や店舗間の機動的在庫運用は緒についたばかりだ。

過疎化と高齢化が進むローカルやエクサバン※から人口が集中するアーバンへ「都心型店舗」も拡大しており、好立地店舗では従来の枠を超えて客数や販売効率に見合ったフェイシング量を積み上げている。JBや機能訴求商品など重点販売する商品では、自社倉庫に在庫を抱えることなく(そもそもTC※なので在庫を棚入れ出来ない)縦売りを可能にするVMI※的取り組みを広げていくのではないか。

ECは「しまむらパーク」へ全ブランド一本化してモールサイト化したクロス効果や店受け取り利便で前期から52%も伸びて196億円に達したが全社売上高の3%にも満たず(2.84%)、国内ユニクロの1524億円(EC比率14.85%)とは格差が大きい。とはいえ、84%程度とされる店舗受け取り比率の高さはしまむら独自のリージョナル自社物流体制※と相まって、将来の店舗在庫引き当てOMOマーケティング※へのポテンシャルが期待される。EC比率が二桁に乗れば店舗と在庫の適正再配置が可能になり、ZARAのインディテックスのように飛躍的な高効率化と高収益化が実現するのではないか。しまむらは「改善」の域を超えて飛躍するのか、高橋維一郎社長の舵取りが注目される。

 

※JB(Joint Development Brand)とPB(Private Brand)・・・小売業が仕様書発注して一括調達するPBに対してJBはサプライヤーが企画と補給を分担する協業型のPBで、最低引き取り保証を付けたVMIで自動補給されることが多い。

※縦売りと横売り・・・同一品を備蓄補給して大量継続販売するのが「縦売り」、バラエテイを揃えて少量を蒔き切りで売り切っていくのが「横売り」。

※サバーバンとアーバンとエクサバン・・・・都市圏郊外の新興住宅地域を指す「サバーバン(suburban)」に対して都市圏内の旧住宅地域を指すのが「アーバン(urban)」で、前者の典型が住居専用の一戸建て住宅地であるのに対して後者は商業地域や工業地域が近接してマンションやアパートと一戸建てが混在する再開発期の住宅地。都市圏の拡大で田畑や工場、倉庫などが混在する周辺都市近郊まで広がった住宅地が「エクサバン(exurban)」。

※DCとTCとFC・・・入荷した商品を棚入れしてからピッキングして出荷する保管型のDC(Distribution Center)に対し、棚入れせず仕分けして送り出す通過型の物流施設がTC(Transfer Center)で、FC(Fulfillment Center)は通販の出荷用DC。

※VMI(Vendor Managed Inventory)・・・あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給・補充生産を委任する取引形態。同一商品を継続補給する「台帳型サプライ」が一般的だが、アクセサリーやベルトなど服飾雑貨では類似アイテムをリレー供給する「トコロテン型サプライ」も多い。

※リージョナルロジスティクス…中央のDC(Distribution Center)やFC(Fulfillment Center)から全国の店舗や顧客に物流(セントラルロジスティクス)するのではなく、生産地から各リージョナルのTC(Transfer Center)やDCに直送し、リージョナル内の各店舗や顧客に物流するロジスティクス手法で、ルート便によるローカルテザリングや地域の宅配業者による即日配送で在庫効率と顧客利便を高め物流費を抑制する

※OMOマーケティング…地域ごとに店舗利用とオンライン利用の顧客分布・交錯を掴んで、最適な店舗配置と在庫配置、物流手法と顧客アプローチを仕組むマーケティングで、販売効率や在庫効率、物流効率を飛躍的に改善できる

 

■全米アパレルチェーン最高利益率に返り咲いたバックル

 バックルと言っても知らない方もあるかも知れないが、「米国のライトオン」とでも言うべきジーンズカジュアルチェーンで、メトロジーニングのギャップとカントリージーニングで棲み分けている。

カントリージーニングとは昔ながらの土臭いワークウェアで、ウェスタンブーツを履いてカーボーイハットを被って大排気量のピックアップトラックに乗るカントリースタイルだ。メトロジーニングはアスレジャーに繋がる都市型のライフスタイルウェアで、スニーカーを履いてテスラやプリウスに乗るメトロスタイルだ。

そんな西部劇紛いのカントリージーニングなんて余程の田舎でしか見ないマイナーと思われるかも知れないが、バックルは全米42州に440店を展開して26年1月期で13億ドル近く(12億9784万ドル)を売り上げているし、ウェスタンブーツとワークウェアのブートバーン(BOOTBRN)も25年3月期で49州に465店舗を展開して19億1110万ドルを売り上げている。どちらも高収益で、バックルの営業利益率は20.14%と、前期から低下したルルレモンの19.91%を上回って全米アパレルチェーン首位に返り咲き、ブートバーンも12.52%と高い。

米国のカントリージーニングは決してマイナーではなく、メトロジーニングと対等に張り合っている。トヨタや日産だって米国向けには大排気量のピックアップトラックを現地生産しているほどで、トヨタの「タンドラ」は逆輸入されることになった。

 メトロジーニングと張り合っていると言っても、ニーズはカントリーエリアに偏っている。米国に行ってもメトロエリアのRSCでバックルを見かけることはまず無く、ローカルのタウンセンターやストリップモール中心に展開している。ブートバーンもローカルのロードサイドやストリップモールが主戦場だ。

 そのバックルをわざわざしまむらの引き合いに出すのはサプライヤーとの取り組み方が極めて「しまむら的」だからだ。

 

■ジーンズのJBを競わせるバックル

 バックルはギャップのようなSPAではなくブランド商品とオリジナル商品を組み合わすセレクトSPAで、セレクトブランドとオリジナルブランドのバランスは半々ほどだ。ジーンズはオリジナル主体、トップスやアウターはセレクト主体という分担が基本で、コーナーごとに壁面にPBジーンズを棚割り陳列し、その前や横にセレクトのトップスやアウターとPBジーンズをコーディネイト陳列している。

 このPBはサプライヤーと取り組むJBで、多数の(店舗で見る限りは10前後)サプライヤーを競わせている。競わせているのは企画と生産スペックだけでなく、棚割り陳列している以上は補給も問われると推察されるから、PBと言ってもVMI的な要素もあるJBの性格と思われる。

 米国というとロット発注の完全買取というイメージがあって、サプライヤーに期中の補給を期待するのは無理と思われがちだが、必ずしもそうではないようだ。契約上では「買取」でも売上消化が厳しければプロモーション(値引き分担)が求められるし、支払いが遅延することもあるから、サプライヤーは危ない取引にはファクタリングを使う。今時は我が国アパレル業界の方が取引ルールがフェアかも知れない。

最終的な引き取りと支払いが確実であれば補給在庫を抱えるサプライヤーもあるようで(だからオフプライスストアが成り立つ)、多少なりとも補給を分担するVMIが成り立っている。バックルの場合、在庫回転が速く(年度で多少は振れるが90日前後)、支払いも32〜33日と速く、高収益企業で取りっぱぐれが無いから、VMIを取り組むサプライヤーも少なくないと思われる。

そんなPBがしまむらのJBと似ているから引き合いに出したが、バックルの高収益の仕組みには量販店衣料部門やアパレルチェーンが学ぶべきことが少なくない。

 

■プロフィットセンターはエリアマネージャーという分権

 しまむらはリージョナル内店舗間の自動的なテザリング(在庫融通の店間移動)で欠品を防止し消化を促進して値引率を6.2%(26年2月期のしまむら事業)に抑制しているが、客数相応にフェイシング量を積む「都心型店舗」が増えてくればSKU単位の自動振り替えだけで無く、店舗特性を活かした機動的な在庫集約なども課題になって来る。本部コントローラー(DB.※)がアルゴリズム設定によるEOSで動かして来た自動振り替えに加え、エリアマネージャーやリージョナルコントローラーが意図的に仕掛ける店間移動が問われることになるが、それが卓越しているのがバックルなのだ。

 半分がセレクト仕入れのバックルの粗利益率が59.0%(26年1月期の概算※)と元祖SPAたるギャップの52.9%(26年1月期の確定値)より6ポイントも高いのは値引き率に大差があるからで、エリア分権運用のバックルの方が本部DB.集権のギャップより値引き率が格段に小さいと推察される。

 ギャップでは配分・補給も店間移動も値引きも本部DB.に集権しているから、品番単位、SKU単位のアルゴリズムやAIの効果は期待できるが、店舗毎のアナログな品揃えバランスや店舗特性を活用した在庫の集約移動などは不得意だ。対してバックルはDCの補給在庫があるうちは本部DB.主導でも、補給在庫が切れればエリアに在庫運用権が移る。

 エリアマネージャーが店舗特性を掴んで、売り切りサイクルの品番を特定店舗に集約して欠品を回避し、販売消化を進めることで値引きを抑制している。エリア内で集約・売り切りが難しい場合はリージョナルマネージャーが調整してリージョナル内で移動する。ゆえにバックルでは全店共通の値引き販売が行われず、値引きロスが低く抑えられるのだ。店舗毎の損益管理とせず、エリアを経営単位と位置付けてエリアマネージャーの経営能力、運営能力を引き出すガバナンスだと推察される。

 これまでミニマムなフェイシング量で低コスト運営してきたしまむらも、「都心型店舗」が増えるにつれ店舗間のフェイシング量(後方ストックを持たないしまむらではイコール在庫量)と販売効率の格差が開いていくから、エリアの店舗間で機動的に在庫を移動・集約して値引きロスを最小化し消化を最大化する運用力が問われるようになる。しまむらにはリージョナルTCを軸としたルート便体制があるからフィジカルな運用は効率的にできるが、何を何時、何処に移動・集約するかは本部の営業政策とエリアマネージャーの営業センスが問われる。習熟にはPDCAが不可欠で、経験を積んでスキルを高めて行けば良い。

 

※DB.(Distributor)・・・一般には在庫を所有して配送する卸業者(所有しない卸御者はBroker)を意味するが、チェーンストア運営では調達した商品を多数の店舗に最適配分・補給・移動する在庫運用責任者を指し、値入れの減耗率をマーチャンダイザーやバイヤーと連帯して評価される。

※粗利益率・・・米国のアパレルチェーンは原価にオキュパンシイコスト(賃料や減価償却費)を含むケースが多く、その分、粗利益率が低く開示される。そのため、原価からオキュパンシイコストを差し引いて販管費に移し計算し直す必要があるが、オキュパンシィコストはSEC10-Kファイルで開示されるため、開示の遅いバックルは過去2年間の平均率で概算した。

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