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WWD 小島健輔リポート
『米サックス・グローバル破綻に見る百貨店とセレクトショップの行方』
(2026年01月27日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

ƒvƒŠƒ“ƒg 昨年末から連邦破産法の申請が噂されていたサックス・グローバルが米国東部時間の1月14日、連邦破産法第11条の適用を申請した。債権者から17億5000万ドルの資金を調達し、店舗の営業を続けながら再建を図るとのことだが、店舗網と人員の大規模な整理は避けられないだろう。ちなみに、現段階でニーマン・マーカスは子会社のバーグドルフ・グッドマン2店舗を含んで42店舗、サックスフィフス・アベニューはフルライン店33店舗とザ・フィフスアベニユークラブ(ノードストロム・ローカルに相当するOMOサテライト)16店舗、OFF・5TH(アウトレットストア)77店舗を展開している。

 

サックス・グローバルはサックスの親会社HBC(カナダの小売大手ハドソンズ・ベイ・カンパニー)が24年に同業のニーマン・マーカスを26億5000万ドルで買収して誕生したハイファッション・デパートメントストア・チェーンだが、期待したように売り上げが伸びずコストも抑制できず、買収に要した20億ドル(6億5000万ドルはアマゾンやセールスフォースなどの出資)の返済も重くのしかかり、キャッシュフローに窮して仕入れ先への支払いが遅れて商品調達が困難となり、連邦破産法の申請に至った。債権者にはシャネルやケリングからLVMHまで著名なラグジュアリービジネスが名を連ねているが、サックス・グローバルの破綻は百貨店とブランドビジネスのこれからにどんな影を落とすことになるのだろうか。

 

米国百貨店の劇的な凋落の実態

 

サックス・グローバルの破綻は業績が悪化していた同業(ニーマン・マーカスは20年5月に連邦破産法を申請して再建中だった)の無理な買収による資金繰りの悪化が直接の要因だが、米国の百貨店(「デパートメントストア」)はわが国以上の斜陽産業であり、業績の悪化した同業の買収が収益に寄与するはずもなかった。

 

日本の百貨店の売上総額は00年の8兆8200億円から24年は5兆7722億円と65.4%に、米国デパートメントストアと取り扱い領域を合わせたソフトライン(衣料品、身の回り品、化粧品を含む雑貨)合計売上高も00年の5兆6894億円から24年は3兆7809億円と同66.6%に減少したが、同期間に米国のデパートメントストアの売上総額は2316億7800万ドルから396億4700万ドルと、実に17.1%に激減している。

 

 

失われた20年の果てにリーマンショック以降は輸出競争力もかげり、デフレが長引いて実質賃金がほとんど伸びなかったわが国の百貨店より、はるかに経済が成長して実質賃金も3割近く上昇した米国の「百貨店」の方が売り上げが激減したと言うのは不思議に思われるだろう。米国商務省国勢調査局(US Sensus Bureau)が「デパートメントストア」と位置付ける業態は日本の「百貨店」よりかなり幅広く、大衆百貨店に当たる「GMS」(General Merchandise Store開発輸入型ソフトライン総合店)からラグジュアリーブランドまでそろえるハイファッションストアまで極端な幅があることも起因している。

 

米国の大衆百貨店はわが国の総合量販店(イオンスタイルやイズミ、かつてのイトーヨーカ堂など)からソフトラインだけを抜き出したようなGMS(こちらの方が「原型」ですが)、低所得層に手頃なNB(ナショナルブランド)衣料を値引き販売するコールズなどだが、前者は半世紀前が頂点でシアーズは18年10月、JCペニーも20年5月に破綻している。このGMS業態の衰退と消滅が00年以降の「百貨店売上高」を激減させた大きな要因だ。わが国でも「チェーンストア衣料品」売上高は00年の2兆8061億円から24年は6645億円と23.7%に激減しているから、米国に近い減少だった。

 

コールズは都市近郊(エクサバン※1.)の低所得層を対象とする大衆NB軸のソフトライン総合店で、立地や客層はしまむらに近い。とは言っても大型のワンフロア独立店で、標準型の平均店舗面積は8200平方メートルほどもあるから、しまむらとは規模感が異なる。そんなコールズまで含めて「デパートメントストア」だから、わが国と同じ目線で捉えるべきではない。ちなみに米国商務省国勢調査局の「デパートメントストア」にはシアーズやJCペニーもコールズも含まれるが、ウォルマートやターゲットは含まれない。

 

コールズから頂点のニーマン・マーカスやサックス・フィフスまで米国のデパートメントストアはソフトラインに特化したファッションストアで、食品やハードラインは取り扱っていないが、ギフト用の菓子類や理美容家電などは取り扱っている。「日本と違って買い取りの直営売場中心」というのは事実と乖離したナラティブで、昔から化粧品やジュエリー、靴はコンセッショナリー(消化仕入れの売場貸し)が大半だったし、近年はアパレルも日本的なブランドコンセが主流となりつつある。買取りの直営売り場でも消化が悪ければシーズン末に「プロモーション」(値引き協賛金)を要求されるのはザラだし、支払いが遅れることもある。今時は日本の大手百貨店の方がきちんとしているかもしれない。

 

米国では中間層が崩れて富裕層と大衆層・貧困層との二極化が進んできたが、最初に崩れたのが中間層で多くが大衆層に落ちてGMSの凋落を招き、中級百貨店の客層も減少して採算が悪化し、合併を重ねて最終的に2005年にフェデレイテッド(メイシーズ)にまとまった。そのメイシーズも業績が低迷して百店単位の閉店と人員整理を重ねており、中級百貨店の凋落も止まっていない。ウォルマートは突出したBOPS※2.利便もあって中間層から大衆層に落ちてくる人々の受け皿となったがターゲットはその役割を果たせず、コールズは経営の混乱もあって大衆層の貧困化を逆手に取って成長するチャンスを逸した。

 

そんな中で何とか生き残ってきたのが富裕層に特化したニーマン・マーカス(バーグドルフ・グッドマンも含む)とサックスフィフス・アベニュー、セレクト複合ライフスタイルストアのノードストロムだったが、富裕層のステルス・ウェルスな成熟(クワイエット・ラグジュアリー)によるブランド離れやブランドの選別で売り上げが伸び悩み、インフレするコストを吸収できなくなっていった。

 

※1.アーバンとサバーバンとエクサバン…都市圏郊外の新興住宅地域を指す「サバーバン(suburban)」に対して都市圏内の旧住宅地域を指すのが「アーバン(urban)」。前者の典型が住居専用の一戸建て住宅地であるのに対して後者は商業地域や工業地域が近接してマンションやアパートと一戸建てが混在する再開発期の住宅地で、東京でいえば環状6号線の外側で環状8号線のちょい外辺りまでだろう。都市圏の拡大で田畑や工場、倉庫などが混在する周辺都市近郊まで広がった住宅地が「エクサバン(exurban)」で、東京圏で言えば外環道から国道16号線辺りだろうか

 

※2.BOPIS…Buy Online Pick-up In Storeの略称で、ECで発注して店舗で受け取るショッピングスタイル。Curbside pickup(駐車場受け取り)もその一種

 

ハイファッションストアとセレクトショップ

 

多様な米国の「デパートメントストア」の頂点に立つのがハイファッション・デパートメントストアだ。その中でもサックス・フィフス・アベニューとニーマン・マーカスはブランドコンセと自営のセレクト売り場から成るデパートメントストアだが、ノードストロムはさまざまな切り口のセレクトショップを複合してカフェやスパまで備えたライフスタイルストアに位置付けられる。ワーキングガール向けの手頃なセレクトからラグジュアリーブランドのセレクトまで、ブランド揃えからオリジナル比率の高いセレクトSPAまで巧妙に構成されており、ベビーからアダルトまで、インティメイトからソワレまで、衣料品から靴やバッグ、化粧品までカバーしている。

 

かつては米国でも各地に著名なセレクトショップがあったが、ノードストロムなどデパートメントストアのセレクト売り場に圧され、全国展開するようなセレクトチェーンは消えていった。19年8月のバーニーズ ニューヨークの破綻と全店閉店(ブランドはAGBが買収)はそれを象徴する出来事だった(ライセンス契約だったバーニーズジャパンはラオックスHDに売却されて営業を継続)。

 

百貨店が自営のセレクト売り場から撤退していった日本では多くのセレクトチェーンが発展していったが、百貨店が自営のセレクト売り場を曲がりなりにも維持した米国では逆の結果となった。欧州ではハイファッションを扱う百貨店は限られ、各地に有力なセレクトショップが存在するものの欧州全域に展開するような大手チェーンはなく、ブランドビジネスとしてはオンライン販売や直営店、FC店を主販路とせざるを得なかった。

 

米国でもハイファッションストアの販売力が落ちる一方でフィナンシャルコストやインフレコストを吸収すべく納入条件や支払いが悪化して行き、オンライン販売や直営店へD2Cシフトするブランドが増えて行った。それがまたハイファッションストアの販売力を落とすという悪循環が広がっていったと思われる。

 

デパートメントストア、とりわけ自営のセレクト売り場が多いハイファッションストアの販売人件費負担は重く、他チャネルに顧客が流れて販売効率が下がるとてきめんに収益が圧迫される。それをカバーしたのが販売人件費を必要としないオンライン販売で、コロナ禍を経て大手デパートチェーンでは売り上げの30〜40%に達しているが、フルラインストアの営業赤字を埋めるのが精一杯で、アウトレットストアとクレジットカード手数料で稼ぐ状態になりかねない。

 

ローカルOMOマーケティングが勝敗を分ける

 

これで分かるように、打開策は不採算フルライン店舗の徹底的な撤収とローカルOMOマーケティング※3.による再配置で、フルライン店舗を置けない商圏には取り寄せ試着とBOPISに特化したOMOサテライトを配して顧客をカバーする。皮切りとなったノードストロム・ローカルは現在、7店舗にとどまるが、ザ・フィフスアベニユークラブは16店舗に達している。

 

ローカルOMOマーケティングではローカルあるいはリージョナルなロジスティクスが基本で(遠隔地のセントラルFC※4.から出荷してはコストが高く時間もかかって競争に耐えない)、地域の店舗在庫をテザリングによって顧客の近隣店舗やOMOサテライトに最短で届ける。わが国でも「オンワード・クローゼットセレクト」はお試しと受け取りのOMOストアだが、関東のFCから出荷するセントラル・ロジスティクスであって地域店舗の在庫をテザリングしているわけではないから、米国のOMOサテライトとは性格が異なる。

 

 

多忙な米国の現役世代ではオンラインで注文して店舗で受け取るBOPIS利便が必須で、店舗在庫も引き当てて最速で受け取れるウォルマートは富裕層も取り込んだ。食品やハードライン中心とは言え、マーケットプレイスではブランドアパレルも揃うから、デパートメントストアもウォルマートに対抗すべくテザリングを駆使して最速でお試しと受け取りの利便を競わざるを得ない。

 

不採算のフルライン店舗をカバーすべく、デパートメントストアのオンラインは自社在庫のみならず、在庫リスクの無いサプライヤーブランドも広く取り扱ってマーケットプレイス化している。アウトレットストアも自社の売れ残り在庫よりサプライヤー供給商品が多数を占めるオフプライスストア化しているから、デパートメントストアのみならずディスカウントストアやオンラインプラットフォームまで入り乱れてOMO利便を競っている。

 

オンラインストアやオフプライスストアで稼いでも、不採算フルライン店舗の撤収が遅れては利益が食い潰され、キャッシュフローも干上がってしまう。05年にフェデレイテッドがメイ・デパートメントストアを買収した段階で1000店近くあった(各業態を合算すると952店)のが、売却や大量閉店を重ねて今やメイシーズ450店(うちフルライン店は425店)、ブルーミングデール36店(他にアウトレット21店)、ブルーマーキュリー30店まで減少し(25年1月末)、フルライン店だけだと457店と半分以下になってしまった。閉店はこれからも続き、メイシーズは26年度末(27年1月末)までに350店に削減される。

 

メイシーズは大量閉店を続けても不採算化したフルライン店がオンラインストアの稼ぎを食い潰しかねず、コロナ明けの22年1月期(わが国より1年半早かった)こそ売り上げが急回復して営業利益率も9.3%と急浮上したものの、以降は減収が続いた。減損やリストラ費用がかさんだ24年1月期の営業利益率は1.26%、それらが軽かった25年1月期は同3.95%まで回復したが、クレジットカード手数料やメディアネットワーク(リテールメディア)の収入、減損やリストラ費用を除いた商品売上対比では、24年1月期で2.59%、25年1月期で2.33%に留まる。

 

※3.ローカルOMOマーケティング…地域ごとに店舗利用とオンライン利用の顧客分布・交錯をつかんで、最適な店舗配置と在庫配置、物流手法と顧客アプローチを仕組む

 

※4.DCとTCとFC…入荷した商品を棚入れしてからピッキングして出荷する保管型のDC(Distribution Center)に対し、棚入れせず仕分けして送り出す通過型の物流施設がTC(Transfer Center)で、FC(Fulfillment Center)は通販の出荷用DC

 

インバウンドが消えたら暗転する日本の百貨店

 

そんな米国デパートメントストアと比較して、日本の百貨店をどう見るべきだろうか。全国百貨店売上高総額は24年でようやくコロナ前19年を超えたが(+0.6%)、同衣料品は19年比92.0%にとどまった。都心の百貨店こそインバウンド消費や株高景気に押し上げられてしばらくは活況を呈していたが、中国人観光客が激減した25年12月は免税売上が大きく減少。25年通期の全国百貨店売上高総額は前年から1.5%減少して19年比も99.1%、衣料品は同2.2%減少して19年比は90.0%に落ち込んだ。

 

25年秋までの繁栄が実力だったのか、インバウンドに押し上げられた束の間の宴だったのか。全国百貨店売上総額に占める免税売上高比率は24年で11.24%、25年で9.99%だったが、都心の百貨店では25〜45%前後と格段に高かった。それが剥げ落ちれば業績は暗転してしまう。

 

三越伊勢丹ホールディングスの25年3月期では総額売上対比の営業利益率は5.85%と24年3月期の4.44%、23年3月期の2.72%、22年3月期の0.65%からうなぎ登り、25年3月期で総額売上高の92.8%を占める百貨店業のセグメント営業利益率も同じく5.34%、3.97%、2.01%、−0.74%とうなぎ登りだったが、25年3月期は1700億円(百貨店総額売上高の14.8%)、24年3月期は1089億円(同10.1%)、23年3月期は424億円(同4.4%)の免税売上高を含んでおり、これを差し引けば百貨店業の営業利益率はコロナ前19年3月期の1.38%以下に押し戻されてしまう。

 

売上高をコロナ前20年3月期の2740億円から1472億円も積み上げて25年3月期で4212億円に達した伊勢丹新宿本店とて、当事者が誇るような「実力」かどうか。19年の伊勢丹相模原店と伊勢丹府中店の閉店に続き、22年10月には小田急百貨店の新宿本館が営業を終了、23年1月には渋谷の東急本店が閉店、24年10月からは池袋駅の西武百貨店が全面改装工事に入るなど、伊勢丹新宿本店の商圏から推計2500億円が消えており、渋谷・新宿・池袋の他百貨店と分け合ったとしても1000億円以上が伊勢丹新宿本店に流れたと見て良いだろう。免税売上高の増加分も加えれば「積み上げた1472億円」をはるかに上回るから、どちらもなければ売り上げは大きく減少したことになる。

 

高島屋とて25年2月期の総額売上対比の連結営業利益率は5.57%、総額売上高の83.2%を占める国内百貨店業のセグメント営業利益率は3.32%と三越伊勢丹と大差はないが、免税売上高が1160億円(百貨店総額売上の13.5%)も含まれている。コロナ前20年2月期の百貨店業の総額売上高7752億円に免税売上高が687億円(同8.9%)含まれていても営業利益率は0.55%とカツカツで、連結総額営業収入の12.5%、連結営業利益の64.8%を稼いだ東神開発(商業施設デベロッパー)と高島屋クレジット(消費者金融)、高島屋スペースクリエイツ(建装業)に支えられても連結営業利益率は2.78%にとどまっていた。免税売上に押し上げられた25年3月期でもこれら非百貨店事業は連結総額営業収入の12.0%、連結営業利益の34.4%を占めたから、免税売上高が急減しても非百貨店事業が下支えするのが高島屋の強みだろう。

 

三越伊勢丹のEC売上高は25年3月期で8.7%増の460億円(百貨店総額売上高の3.80%)で、ようやく黒字に転換。高島屋は25年2月期で364億円という開示もあるがIRでは104.7億円(EC店舗)と同1.22%にとどまり、計上の変更もあって全容は掴みにくい。いずれも売上の30〜40%という米国デパートメントストアとはケタが違う。ギフトや外商お取り寄せのサテライトストアは以前から存在するが、オンライン商品の受け取りやお試し利便を担うOMOサテライトストアという次元には遠い。

 

EC売上比率の2ケタ乗せとOMOサテライトストアの布陣はニワトリと卵の関係かもしれないが、それを進めるにはセントラルFC商品のマーケットプレイス化によるラインナップの拡充、店舗受け取りや店舗出荷とサテライトストアへのテザリングの仕組み、オンラインのスタッフスタイリング投稿やSNS投稿による店舗誘導とコミュニケーションの仕組みを確立する必要がある。地域別のOMOマーケティングがその第一歩であることは言うまでもない。

 

苦境の米国デパートメントストアとしばらくは明暗を分けた日本の大手百貨店だが、周辺百貨店の相次ぐ閉店と棚ぼたの免税売上がなければ米国百貨店同様に追い詰められていたはずで、ECのマーケットプレイス化もOMOマーケテイングによる店舗網の再編もOMOサテライトストアの布陣も手付かずというのが実態だ。買うべき「実力」も「将来性」も見出せないと言ったら、誇り高き百貨店人の怒りを買うだけだろうが、現実を見るべきではないか。

 

日本型百貨店とセレクトショップの役割

 

ブランド販売において、米国ではセレクトショップがハイファッションストア(高級デパート)に競り負けてマイナーな存在になり、欧州ではD2Cも含めて三者が競い合っているが、わが国の状況をどう捉えるべきだろうか。

 

百貨店が自営のセレクト売り場を放棄していく中、さまざまなセレクトチェーンが成長していったが、「地域市場における個性的なブランドの受け皿」という本来の役割を担うのは一部のニッチなローカルチェーンだけで、大手は「自社開発のPB(プライベートブランド)にセレクト品が華を添える」逆転した性格に徹しているように見える。その方が個性的な商品をセレクトできるが、アクセント的な性格ゆえ比率は限られるから、ある程度の売上規模を期待するブランド側としては限界を感じるだろう。

 

かといって百貨店は売り場を貸すだけだから、自前の運営スタッフでコンスタントに一定以上の売り上げを回していけるブランドしか出られない。実力もないのに無理して出れば固定費を補えず、在庫も回らず、追い詰められてしまう。コンセ出店は固定費を確実に上回る粗利益を毎月、コンスタントに稼げるMDの流れを確立したブランドだけの選択であり、季節が偏るアイテムやニッチなキャラなど安定した売り上げが望めないブランドはセレクトショップの品揃えに組み込んでもらうのが現実的だ。そんなセレクトショップは「顧客の顔が見える」ローカルチェーンがほとんどだが、大手でもそんな役割を意識した「ローカルチェーン」を手掛けているケースがある。

 

D2Cを志向するファクトリーブランドなどは「期間限定店」を煩雑に展開して地域ごとに顧客を掘り起こしていく必要があるが、運営するスタッフ全員を地方へ何日も貼り付けてはコスト負担に耐えられない。1人か2人が立ち上げと撤収に行って、その間はローカルのスタッフに安心して運営を任せられないと成り立たない。地元の手慣れた運営スタッフを抱えて販売代行やFCもやっている、遠方からの「期間限定店」の運営を担えるローカルのセレクトショップが育っている地域も少なくないはずだ。

 

自営の売り場をなくしてコンセばかりにし、いずれはテナント構成に切り替えてもっと少ない人員で運営しようとする今時の百貨店とは逆行するが、地域市場でブランドを育てるには人手を掛けた抱卵が必要だ。逆に、過剰な人員を抱えた地方百貨店が販売代行やFC、セレクトショップ運営に目覚めても良いのではないか。

 

巨額の資本を投じて運営効率を追求する大規模なリテイルビジネスと、人材を資本として手作りで回していくマイナーなリテイルビジネスでは、競争論理は全く相反するが、私はそれが並立するべきだと思う。人がそれぞれの価値観で人生を選択していくように、ビジネスの進め方もそれぞれが選択することで多様性が広がり、面白くなっていく。それは小さな組織の特権であり、効率や配分のガバナンスが問われる規模になればメジャーなルールが求められるにしても、それまでは好きにして輝けば良いと思う。

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