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WWD 小島健輔リポート
『TABAYAホールディングスへと変貌するユナイテッドアローズに問われる「覚悟」』
(2026年05月19日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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連休明けの5月11日12時30分に2026年3月期決算を発表したユナイテッドアローズは、好業績に加えて最大20億円の自己株式取得やTABAYAホールディングスへの商号変更・持ち株会社化も好感され、当日の株価は一時、大きく反発した。コロナ禍からの回復に手間取り、高コスト体質からの脱却に苦闘してきたユナイテッドアローズだが、商号変更・持ち株会社化を契機に本格的な再成長へと飛躍できるのだろうか。

 

■本格復調すれど、経営効率には課題

 

ユナイテッドアローズの26年3月期はECを含む既存店が6.8%伸び、売上高が前期から9.1%増の1646億円と6期ぶりにコロナ前20年3月期を超えて過去最高売上高となり、売上総利益も同9.7%増加して7期ぶりにコロナ前を超えたが、営業利益は同14.3%伸びても91億2600万円と、コロナ前19年3月期の110億6300万円には届かなかった。

 

当期純利益は26年3月2日付でコーエンの全株式をジーイエットに譲渡したことによる株式売却損など特別損失を譲渡に伴う税効果が上回り、同42.7%増の61億1200万円と大きく伸びたが、19年3月期の64億1700万円には届かなかった。ROEも15.3%と前期から3.5ポイントも伸びたが、19年3月期の18.0%には届かなかった。

 

粗利益率は52.4%と前期から0.3ポイント上昇し、19年3月期の51.4%も1.0ポイント上回ったが、販管費率は46.8%と前期から変わらず19年3月期の44.5%からは2.3ポイント高く、営業利益率は前期から0.2ポイント上昇の5.5%に留まって19年3月期の7.0%には届かなかった。営業利益はピークだった14年3月期の136億4900万円の66.9%、営業利益率は13年3月期の10.9%の半分ほどだから、コロナ禍からは回復しても往時の高収益体質には遠い。ROEも14年3月期の27.8%と比べれば12.5ポイントも低いから、資本効率も改善余地が大きい。

 

棚資産回転は127.8日と前期から2.9日伸びた。数日ずつだが年々長期化して23年3月期の119.7日からは8.1日延びており、期初期末平均在庫で見た棚資産回転数も3.01回と前期から0.10回、23年3月期からは0.13回、減速している。買掛債務回転は60日前後、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle、CCC)は92日〜94日と変化が少なく、純資産対運転資金率も100%を前後しているが、欧米アパレルのように100%近い(超えるケースも少なくない)配当率や自社株買いで自己資本を抑制してROE指標を稼いでいるわけではないから、棚資産回転の遅さゆえのバランス管理と思われる。

 

交叉比率は157.4と前期から4.8ポイント低下したが年々の振れの範囲で、23年3月期(157.5)とほとんど変わらない。商品財務指標を見る限り、「商品管理基幹システムの刷新で在庫配分を適正化し物流を効率化した」というアナウンスほどには効率化しておらず、マーチャンダイジングと在庫運用は従来踏襲の枠を出ていない。

 

後で詳説するが、コロナ禍の業績悪化から本格回復して健康体になっただけで、2012年2月期〜14年2月期のような高収益構造を再確立したわけではなく、32年の売上高3000億円を目指す高成長体質に変貌したわけでもない。現状の立ち位置とビジネスモデル、組織ガバナンスの中で改善と拡大に注力するというスタンスであり、それらの枠を超えて覚醒するわけではないのがもどかしい。

 

セレクトショップからセレクトSPA化して多業態・多店舗展開し、近年はブランド業態も広げているユナイテッドアローズだが、セレクトショップという原点から引きずる運営コストの高さと付加価値(顧客満足)の相剋を抜け出せず、事業規模は拡大しても往時の経営効率には遠い。卓越したビジネスモデルとメジャーなマーケットポジション、高収益体質を確立してグローバルに飛躍するファーストリテイリングやアシックス等とは比較すべくもないが、従来踏襲の枠を超える飛躍を期待するのは無理なのだろうか。

 

■営業指標は着実に改善され給与水準も上昇

 

「現状の立ち位置とビジネスモデル、組織ガバナンスの中で改善と拡大に注力」と言っても、営業指標は着実に改善され、給与水準も上昇して組織ガバナンスも向上している。

 

単体直営店の平米当たり売上高は前期から2.6%上昇して150.0万円と、19年3月期の158.8万円にあと少しと迫り、同一人当たり売上高は前期から5.8%上昇して 3766.1万円と、19年3月期の3375.4万円を11.6%上回った。小売既存店客単価が前期から4.1%、19年3月期から25.8%上昇したことを割り引けば、まだ回復途上というべきだが、14年3月期の平米当たり187.9万円はともかく、同一人当たり3814.7万円には今期は届くと思われる。一人当たり粗利益も前期から6.4%増えて1973.1万円と、19年3月期の1775.5万円を11.1%上回り、後述する賃上げを可能にした。ちなみに、コーエンは連結子会社で単体には含まれないから、譲渡による直営店効率指標への影響はない。

 

営業効率が改善された結果、課題だった人件費負担が連結で15.4%と前期から0.3ポイント低下。コロナ下21年3月期の18.3%からは2.9ポイント下がり、19年3月期の15.6%も下回った。対粗利益でも29.5%と前期から0.7ポイント、21年3月期の40.4%からは10.9ポイントも低下し、19年3月期の30.3%も下回った。

好調でも従業員数は3903人と前期から4.7%(193人)、20年3月期の4848人からは2割近く絞られた一方、一人当たり人件費は650.8万円と前期から12.4%(一人当たり人件費と平均年収の伸びは一致しない)、20年3月期の516.8万円からは25.9%も上昇。平均年収も501万円と23年3月期の429万円から16.8%(72万円)上昇し、エンゲージメントスコアが16.2ポイント上昇して離職率は15.0%から9.2%に低下した。

 

顧客満足を担保する人件費負担を運営の効率化と適正配置で抑制しつつ賃上げで給与水準を高め、コロナ下で崩れたかけた組織ガバナンスを取り戻したことは大きな成果だったのではないか。

 

■「中〜高価格帯特化」は進むのか

 

顧客満足と運営コストの相剋を解決するには客単価の上昇が不可欠で、新中期計画では「中〜高価格帯に特化」とうたっている。コーエンの譲渡もその一環だったと思われるが、26年3月期では高価格帯シフトは進んだのだろうか。

 

ユナイテッドアローズ単体の売上高はトレンドマーケットとミッドトレンドマーケット※の2つのビジネスユニットとアウトレットなどからなり、両ビジネスユニットは「小売」「ネット通販」「卸売等その他」の販路で構成される。

 

26年3月期は単体売上高が前期から10.6%、ビジネスユニット売上高は同9.9%、アウトレット等売上高は14.7%増加。「小売」のシェアは55.5%と0.1ポイント、「ネット通販」のシェアは25.8%と0.5ポイント、「卸売等その他」シェアは1.4%と0.2ポイント低下し、「アウトレット等」のシェアだけが17.3%と0.6ポイント上昇した。19年3月期と比較すれば、単体売上高は17.2%、ビジネスユニット売上高は15.0%、アウトレット等売上高は45.6%増加し、「小売」のシェアは65.2%から55.5%へ9.7ポイント低下、「ネット通販」のシェアは20.0%から25.8%へ5.8ポイント上昇、「卸売等その他」シェアは0.6%から1.4%へ0.8ポイント上昇、「アウトレット等」のシェアは14.2%から17.3%へ3.1ポイント上昇している。

 

「小売」から「ネット通販」へ5.8ポイント、「アウトレット等」へ3.1ポイント、シフトしたが、「ネット通販」の比率が高まると単価が低下し、「アウトレット等」の比率が高まればプロパー消化率の低下が推察されるから(棚資産回転の減速もそれを裏付ける)、高価格帯シフトとは逆行する。

 

ちなみに、アウトレットは事業として独立採算を採るべく、評価替えして移管される売れ残り品に独自の開発商品を加えて品ぞろえしているので(そうしないと月々の売り上げが激変して固定費を吸収できない)、アウトレットのシェア上昇が直ちにプロパー消化率の低下を意味するものではない。ユナイテッドアローズのアウトレットがどれほど開発商品を加えているかは開示されていないが、近年の大手セレクトでは4分の1から半分ほどだと言われている中では少ない方だと思われる。

 

高価格帯のトレンドマーケットと中価格帯のミッドトレンドマーケットのバランスはどう変化しただろうか。トレンドマーケットの売上高は前期から9.7%、23年3月期からは27.9%増加、ミッドトレンドマーケットの売上高は前期から13.1%、23年3月期からは36.9%増加した。結果、トレンドマーケットのシェアは65.3%と前期から0.7ポイント、23年3月期からは1.5ポイント下がり、ミッドトレンドマーケットのシェアは34.7%とその分、上昇したから低価格帯方向にシフトしたことになる。とは言っても19年3月期からはトレンドマーケットが1.1ポイント、シェアを拡大しているから、両マーケットのシェアを政策的にシフトしているわけではなく、好不調による結果的なものと推察するが、そこにこそ問題がある。

 

ミッドトレンドマーケットの一人当たり売上高は前期から6.5%増の3170.3万円とトレンドマーケットの75.8%にとどまり、前期からは0.6%上向いたものの19年3月期の88.1%からは格差が広がっている。ミッドトレンドマーケットのシェアが上昇すれば一人当たり売上高の低下に直結するから政策的にシェアを落としていくべきだが、売上高の推移からは政策的な切り下げは見出せない。

 

※トレンドマーケットには「ユナイテッドアローズ」「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」「ドゥロワー」、「オデット エ オディール」「ブラミンク」「ロク」「スティーブン アラン」「アストラット」「コンテ」「アティセッション」「オソイ」「ナイスウェザー」等、ミッドトレンドマーケットには「GLR(グリーンレーベルリラクシング)」と「シテン」が含まれる。

 

■「シテン」「GLR」とトレンドマーケットの新ブランド群

 

トレンドマーケットの客単価が23年3月期から16.9%、19年3月期からは33.8%上昇したのに対し、ミッドトレンドマーケットの客単価は23年3月期から0.6%(GLRのみだと8.5%)、19年3月期からも5.4%しか上昇していないから、ミッドトレンドマーケットのシェアが上昇した分、低価格帯方向にシフトしたことは否めない。ミッドトレンドマーケットの客単価が上昇しないのは「GLR」より低価格の「シテン」の拡大(国内17店、台湾2店)も影響しているようで、コーエンの代わりにボリュームゾーンの拡大を目論んでいるなら政策に逆行する。

 

「シテン」はメトロ圏MZ世代向けにアスレジャー感覚を取り入れた機能性デイリーウェアとしてスタートしたはずだが、地方や郊外の出店が増えてMDがブレ、かつての「GLR」と同じ轍を踏んでポジションを見失いつつある。「好感度・高機能なアスレジャー感覚の都市型デイリーウェア」に徹して出店立地をメトロエリアのターミナルに絞り、モデレートプライスを維持するべきではないか。

 

ミッドトレンドマーケットの中核である「GLR」にしても、団塊ジュニア世代向けのお手頃セレクトSPAとしてスタートしてミレニアル世代のビジカジ軸ワードロープ業態にリコンセプトして久しいが、ビジカジマインドに徹したメンズに比べてウィメンズはカジュアルな幅もあって総花的で(セレクト的ではあるが)、別の店かと思うぐらい異なる。ウィメンズもビジカジマインドに徹してミレニアル世代のユニフォーム化(メンズは既にそうなっている)すればマーケットポジションが確立されて客単価も高まると思うが、経営陣はどう見ているのだろうか。

 

24年秋冬以降の新ブランドは「コンテ」(3店で14.6億円)や「アティセッション」(2店で3.8億円)、韓国バッグブランドの「オソイ」(25年秋冬スタート、2店で3.3億円)などトレンドマーケットばかりで合計売上高も23.5億円に達したが、韓国発のセレクトショップ「ナイスウェザー」(25年春スタート、4店で1.8億円)にはトレンドマーケットらしからぬ違和感があり、人時効率の足を引っ張りそうだ。絶対店舗数は21年秋冬スタートの「シテン」がまだ優っているが、「シテン」が出店立地をメトロエリアのターミナルに絞れば今期中にトレンドマーケットの新ブランド群が追い抜き、価格帯は上方シフトしていくと思われる。

 

■海外展開とOMOの課題

 

13年10月末に1号店を開設した台湾は15店まで広がって売上高も22.2億円に達し、さらなる多店化が望める。25年1月に上海に1号店を開設し、26年3月に深圳に2号店、26年4月末に上海旗艦店を開設した中国も好調で、トレンドマーケット商品の価格と感性が受け入れられていると報告している。タイの2店、シンガポールの1店を合わせて26年3月期で30億円規模に達しており、25年9月にはグローバルECも立ち上がったが、中期計画に具体的な売上目標や利益目標は描かれていない。

 

ユナイテッドアローズのOMO戦略は今ひとつ構図が見えないが、マイレージクーポン制のUAクラブ会員の拡大で顧客基盤を広げていくLTV戦略を基軸に店舗販売とECを連携している。アクティブ会員数が23年3月期から25.6%増えて164.1万人に達し、会員売上高は同43.7%増えて844億円と全売上の54.8%を占めるが、うちECと実店舗のクロスユーザーは24.5万人と14.9%にとどまるから、OMOを拡大する仕掛けとしてはさほど機能していない。

 

EC売上高は405億6400万円と23年3月期から33.6%、19年3月期からは54.0%増加し、単体売上高に対するEC比率は26.3%と19年3月期の20.0%から6.3ポイント上昇したが、コロナ禍を挟んだアパレル企業の上昇幅としては低い方だ。ちなみにアンドエスティHD(旧アダストリア/2月決算)は19.6%から29.5%に、オンワードホールディングス(2月決算)は14.0%から28.3%に、パルグループホールディングス(衣料品事業のみ/2月決算)は15.8%から40.8%に上昇している。

 

ZOZOの立ち上げ時から手がけて来ただけにEC比率の絶対水準は低くはないが、ECから実店舗に取り寄せ試着出来る「クリック&トライ」でクロスユーザーを伸ばしたオンワード、スタッフスタイリングとSNSでECと実店舗の連携を高めたパルグループと比べれば、OMO戦略の実効性は心許ない。

 

OMOのキーKPIたる「店受け取り比率」の開示はこれまでに一度もないが(しまむらは84%と開示している)、クロスユーザー比率が14.9%にとどまる以上、高くはないと思われる。「店受け取り」にはオンライン決済しての店舗受け取り、店舗に取り置いたり取り寄せて(試着して)の店舗決済があり、前者は「EC売上高」後者は「店舗売上高」に計上される。

 

ユナイテッドアローズを含め大手アパレルのECでは顧客が最寄り店舗の在庫を検索して取り置いたり倉庫から取り寄せたりできるが(トランザクションラグで引き当てできずキャンセルメールを送る場合もある)、and STは「クィックピック」(単SKUの店在庫引き当て)と「マルチピック」(複数SKUの全在庫引き当て揃え)、オンワードクローゼットは「クリック&トライ」(取り寄せ試着)と銘打っている。

 

ユナイテッドアローズの公式サイトでは「オンラインストアから取り置き」と表記されているが、店舗在庫検索による「取り置き」に加えて倉庫在庫や他店在庫から「取り寄せ」もできる。オンライン決済しての「店受け取り」は案内がないが、EC客を店舗に誘導してクロスユーザー化する決定打であり、店舗物流に同梱して宅配コストをケタ違いに落とすメリットも大きいから、どうしてないのか訝られる。

 

ユナイテッドアローズのOMOはZOZOと組んだECで先行したゆえの固定観念を引き摺り、店舗小売業のメリットを活かし切れないでいる。5月12日の本誌に掲載された私のリポート「ECと店舗のギャップを埋めるOMOの威力」を一読すれば、固定観念による視野狭窄を自覚できるのではないか。

 

■セレクトショップの原点と固定観念からの解放

 

固定観念はECとOMOに限らない。セレクトショップを原点とする固定観念もユナイテッドアローズの成長と収益を阻害している。

 

松崎善則社長は「感動を提供できる接客と高付加価値の商品、高感度な顧客基盤が当社の強み」とセレクトショップの原点みたいな理想をうたうが、4000人近い従業員を抱えて1646億円を売り上げる東証プライム市場上場のユナイテッドアローズには投資家と従業員、顧客や取引先など複雑なステークホルダーの利害をバランスするガバナンスが問われるし、過去には何度も煮湯を飲まされる出来事もあった。内外の利害をバランスして大きな企業を引っ張っていくには理想を超越する成長への展望と周到狡猾なプロセスが必要で、「大きくなったセレクト企業」の枠を超えて変貌していかざるを得ない。

 

27年4月で社長を退任するビームスの設楽洋氏は繊研新聞のインタビューに答えて「好きを仕事にするのがセレクトショップの原点」「ビジネスの起点はヒト」「店毎に違う店を創り続ける」と語っていたが、うらやましいばかりだ。人時効率も資本効率も組織ガバナンスもシビアに要求される東証プライム上場企業にとっては理想を現実に昇華する叡智と力技が必要で、「セレクトショップの原点」を理想に抱きながら、これまでの固定観念を捨て去ってグローバル水準の企業へ変貌していくしか選択肢は無い。TABAYAホールディングスへの商号変更・持株会社化に当たっては、その覚悟が問われるのではないか。

 

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