小島健輔の最新論文

ダイヤモンド・チェーンストアオンライン
『コンセも逃げ出すほど凋落する量販店衣料品はどうなるのか』
(2026年06月17日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

量販アパレルサプライヤーの25年度決算を検証していて顕著だったのが店舗小売事業の不振で、主力の卸し事業(ODM/OEM事業を含む)やEC事業が健闘する一方で業績の足を引っ張る構図が際立っていた。コロナ前までは利幅の薄い卸し事業(一般に粗利益率は20%前後)から利幅の厚い自社企画開発型小売事業(SPAなので同50%以上)を志向するのが量販アパレルサプライヤーのトレンドになっていたが、状況が一変している。

 

■店舗小売事業の業績悪化

際立ったのが、2020年に破綻したレナウンの主要5ブランドを買収して小売事業を拡大した小泉グループの業績悪化だ。有価証券報告書(小泉株式会社連結決算)によれば、26年2月期は売上が531億2200万円と前期から0.9%増加したものの、営業利益は4800万円と96.1%減少、当期純利益も6億8800万円と39.9%減少した。前々期からは営業利益が97.3%減、純利益も72.9%減と2期連続して悪化している。

業績悪化の要因はアパレル直販小売事業子会社の低迷だ。コスギは売上が122億1400万円と8.3%(前々期からは12.8%)減少し、経常利益も1億7900万円と77.0%(前々期からは79.9%)減少。レナウンも売上が92億2600万円と4.3%(前々期からは23.7%)減少し、経常利益は9700万円と70.6%(前々期からは83.6%)減少している。

クロスプラスの26年1月期は売上が598億5200万円と3.5%減少しても営業利益は13億9500万円と35.6%増加したが、ECが32億4400万円と16.1%伸びた一方で店舗売上は94億1200万円と0.3%減少している。28年1月期をゴールとする中期計画でもアパレル卸し売で26年1月期から10.9%増、ライフスタイル卸し売(ドラッグストアやコンビニ向け化粧品など)で94.0%増、ECで同54.1%増を目論む一方、店舗小売は4.4%減と縮小を見込んでおり、採算に課題があるようだ。

量販店の衣料フロアではブランドコンセの価格帯は突出しているから販売員なしでの販売消化は困難だが、客数が限られて絶対売上額が小さく、販売員を常時に張り付けるのは採算的に難しい。

クロスプラスが400店舗(うち販売員付きは270店舗)を展開するコンセショップの一店平均売上は年間2353万円で、販売員付き270店舗の一店平均運営人員は社員0.50人+パート0.78人(8時間換算)の計1.28人とほぼワンオペだから無人の曜日や時間帯も多く、販売消化と販売員人件費負担の相剋はギリギリだ。小泉グループでもエレメントオブシンプルライフ160店の一店平均売上は1562万円、里麻150店の一店平均売上は1267万円とクロスプラスのコンセショップ平均(2353万円)を大きく下回るから、売上が下がれば直ちに採算を割り込んでしまうのは容易に想像がつく。

 

■業績悪化の背景は量販店衣料品の凋落

 小泉グループは業績悪化の要因を「最大取引先のイトーヨーカ堂の閉店や衣料品撤退」と説明しているが、それはクロスプラスとて同様で、小泉グループの場合は地方百貨店の閉店や衣料品売場の縮小も響いたと推察される。

 チェーンストア衣料品売上は00年からコロナ前19年で68.6%(1兆9264億円)も減少したが、23年からの2年間でも19.3%(1426億6200万円)減少しており、イトーヨーカ堂の閉店や衣料品撤退など量販店衣料部門の縮小を反映している。全国百貨店衣料品売上も00年からコロナ前19年で52.5%(1兆8642億円)も減少したが、23年からの2年間では3.3%増加して19年の89.4%まで回復している。とは言っても百貨店売上はインバウンド需要が押し上げた一面があり、25年は免税売上が9.99%(総額対比)含まれていたから19年比の実勢は8掛け強と推察される。

量販店の衣料品売場が縮小する中、クロスプラスは化粧品企画問屋のアイエスリンクを買収(23年9月)するなどして化粧品や小物雑貨でドラッグストアやコンビニエンスストア、バラエティストアなどの販路を広げる一方、ECを拡大しているが(26年1月期は6.1%増の32億4400万円で全社売上の5.4%を占める)、外部モール依存が81%と高く収益貢献は限られる。小泉グループも直営店(コンセショップではない)とECを拡大するとしているが、クロスプラスのように具体的な数値目標は開示されていない。

量販アパレルサプライヤーでもタキヒョーの26年2月期は売上が639億7000万円と5.5%(前々期からは10.8%)、営業利益は19億4200万円と48.0%増加して(前々期からは2.74倍)8期続いた低迷を脱した感があるが、営業利益率は0.8ポイント上向いても3.0%と絶対水準はまだ低い。

業績浮揚を牽引したのはしまむら向け卸し売上の拡大で、26年2月期は251億200万円と13.1%(前々期からは29.5%)も伸ばして2期で57億2100万円も積み上げ、全社売上の44.2%に達している。一方でクロスプラスの卸し売上は5.1%(25億3000万円)減少したが、しまむら向け売上が178億9300万円と11.8%(24億円)減少したのが大きな要因で、全社売上に占める割合も24年1月期の33.6%から29.9%に低下している。

イトーヨーカ堂の閉店や衣料品撤退など量販店衣料部門の縮小が加速する中、量販アパレルの成長が期待できる卸し先はしまむら一択になっているのが現実だ。この2期間でしまむらの国内売上は626億8600万円増加したから、23年から25年の2期間で減少したチェーンストア衣料品売上1426億6200万円の44%近くがしまむらに流れた計算になる。チェーンストア衣料品の天敵というとユニクロが一番に挙げられるが、郊外やローカルの高齢層に偏る客層からすれば、しまむらの方が直接的に競合しているのではないか。

 

■百貨店からの販路シフトとOMO

 量販アパレルサプライヤーが凋落する量販店からしまむらやドラッグストア、コンビニ、バラエティストアへ販路を移し、EC拡大に注力しているように、かつて「百貨店アパレル」と言われたオンワードHDも量販アパレルサプライヤーを遥かに上回るスピードで百貨店から脱出している。

 コロナ前19年2月期連結の販路構成は百貨店が65.7%、SC他が13.9%で実店舗計79.7%、ECが14.0%(うち自社EC10.6%/他社EC3.4%)だったが、26年2月期では百貨店が24.8%と40.9Pも縮小した一方、直営店の出店やカジュアルチェーン(ウィゴー)の買収でSC他が46.9%と33.0Pも拡大。ECも28.3%(うち自社EC22.2%/他社EC6.1%)とシェアを倍以上に伸ばしている。百貨店からSCやECへ一気呵成の脱出劇だったが、百貨店内ショップの大量閉店には延べ260億円ほど、SCやECの拡大にもほぼ同額を要したと推計されるから、まさしくルビコンを渡る決断だった。

 単に販路を百貨店から直営店とECにシフトするだけでなく、支店軸で振り回して消化していた在庫を関東のDCに集中してFC※と一元化し(リージョナルロジスティクス➡︎セントラルロジスティクス)

、直営店をウェブルーミングストアとする OMO戦略を一体に仕掛けた戦略センスは大胆にして秀逸と評価される。ウェブルーミングストアとはオンラインから取り寄せ試着できる「クリック&トライ」を導入したオンワード・クローゼットセレクトで、26年2月期末で直営628店中の442店に達している。百貨店内のストアも未だ多く残るためか「オンライン決済」しての店舗受け取りではなく、取り寄せ試着しての「店舗決済」にとどめている。自社ECで他社商品の取り扱いを広げてプラットフォームを志向しているが、ドロップシッピング※ゆえ店舗受け取りのメリットを発揮できないという限界も指摘される。

 旧百貨店アパレルでもオンワードのような戦略的販路シフトを欠いているのが三陽商会で、コロナ前20年2月期と最新の26年2月期で販路構成はあまり変化していない。百貨店が62.3%から61.8%と0.5Pしか減っておらず、EC・通販も12.7%から15.2%へ2.5Pしか増えていない。直営店が11.1%から5.9%へ大きくシェアを落とした一方、アウトレットは13.9%から13.4%とほとんど変わっておらず、OMOも取り置き・取り寄せ試着の「トライ&ピック」の導入が23年9月と後手に回った(オンワードは21年4月開始)。

 路面店舗やSC店舗に比べれば百貨店内コンセショップは規制が多く、オンライン決済しての店舗受け取りは難しいようだが、SCと同様な定期借家契約なら可能なのだろうか。

 店舗展開するならオンライン(ECやSNS)から店舗を支援するOMO(ウェブルーミング)は不可欠で、オンラインと店舗物流をクロスするロジスティクス戦略まで仕組む必要があるが(5月28日掲載の『アパレルOMOの現実的正解とKPI』を参照されたい)、量販アパレルサプライヤーはオンワードのような戦略センスを欠いている。それではコンセショップの売上と採算の改善は難しいのではないか。

※DCとTCとFC・・・入荷した商品を棚入れしてからピッキングして出荷する保管型のDC(Distribution Center)に対し、棚入れせず仕分けして送り出す通過型の物流施設がTC(Transfer Center)で、FC(Fulfillment Center)は通販の出荷用DC。

※フルフィルシッピングとドロップシッピング・・・ECプラットフォーマーが在庫を預かって棚入れからピッキング・梱包・出荷仕分けまで受託するフルフィルシッピングに対し、在庫を預からず受注と決済・代金回収を受託し、受注情報を得て出品者が顧客に直接出荷する方式がドロップシッピング。在庫を預からず毎日の受注分を定時に一括して出荷倉庫に荷受けし、出荷仕分け以降を受託する中間の方式もある。

 

■皆が逃げ出す量販店衣料品はどうなるのか

 アパレルが逃げ出して衣料品売上が減少しても、都心の百貨店は化粧品やラグジュアリー雑貨を伸ばせば良いし、デパ地下食品の集客力には衰えが見えない。円安が続く限りは外国人売上も期待できるし、外商軸で富裕層を取り込めば客数が減っても客単価で売上は伸ばせる。地方百貨店や郊外百貨店はそんなロジックが効かないから、自前の売り場を圧縮して定期借家契約のテナントを広げSC化していくしかない。

 量販店も食品やドラッグ・化粧品を拡充する一方、自前の衣料品売り場を圧縮してコンセやテナントに切り替えて来たが、対症療法の域を出ず、自前の衣料品売り場は消滅の危機に瀕している。自前の売り場を圧縮した分を埋めて来た量販アパレルのコンセショップも前述したように採算の悪化で行き詰まりつつあり、もはや担う業者がいなくなるのも時間の問題だ。

 量販店の衣料品は存亡の瀬戸際に追い詰められており、「量販店」のレゾンデートルをどう定義するかという原点から再構築する必要がある。生活圏で日常生活を支える食品やグローサラント、ドラッグや化粧品、生活雑貨を軸として「衣料品」をどう扱うかと考えるなら、ホームセンターやワークマン(「プラス」や「カラーズ」)の衣料品のように高機能で低価格(当然にしまむら価格以下)な顧客を選ばない汎用衣料品に絞り、スーパーマーケット型のレイアウトと棚割りVMDのマテハンに収まるカテゴリーMDの範囲で展開すべきと思われる。

 日常生活にそれなりに映えるカラーリングやオシャレ感は否定しないが(ファミマの「コンビニエンスウェア」は上手いと思う)、価格の一線を超えたり機能性や汎用性を逸脱しては採算がとれる効率に届かない。多くの生活者に刺さるデイリーウェアたろうとすればファミマの「コンビニエンスウェア」やトライアルの「ルーム&アウト」のようなSPA型にならざるを得ないが、自社企画開発調達型とは限らず、自社企画でもチームMDによるVMI※型(かつての「ワークマン」)も成り立つのではないか。

※VMI(Vendor Managed Inventory)・・・あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給・補充生産を委任する取引形態。同一商品を継続補給する「台帳型サプライ」が一般的だが、アクセサリーやベルトなど服飾雑貨では類似アイテムをリレー供給する「トコロテン型サプライ」も多い。

 

 

 

 

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