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WWD 小島健輔リポート
『復調した「ワークマン」はユニクロに迫れるか 見えてきた可能性と限界』
(2026年06月01日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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5月11日に2026年3月期決算を開示したワークマンの業績が今期(27年3月期)に入っても好調だ。25年5月に公表した「中期成長ビジョン2030」で目標とした1300店舗/チェーン全店売上高2400億円を今期に3年前倒しで達成しそうな勢いで、ゴールの2030年3月期には長期目標としていた2000店舗/チェーン全店売上高4000億円に届くかもしれない。

 

注)フランチャイズチェーンのワークマンにはFC運営本部としての株式会社ワークマンの売上高、直営店とFC加盟店からなるチェーン全店売上高がある。

 

■再成長後の踊り場を抜けて再び成長軌道へ

 

吉幾三のコマーシャルで定着していた作業服チェーンのイメージを18年にスタートしたアウトドアカジュアルの「ワークマン プラス」で脱却して再成長軌道に乗り、20年には作業服を取り扱わない女性イメージのカジュアル業態「#ワークマン女子」を立ち上げて成長の再加速を図ったワークマン。

 

「#ワークマン女子」は期待に違わずブレイクしたものの、アウトドアイメージの強さで若い女性には浸透せず、「女子」と銘打ったゆえに男性客を遠ざけるなど反省点も多く、販売効率は高いものの新店舗の2年目が落ち込むなど人気の継続性に黄信号が灯った。顧客の間口を広げて売り上げを安定させるべくアウトドアイメージを脱した汎用デイリーカジュアルにシフトしたが、品質やスペックの強みを生かせず特色が薄れて競合に埋没し、かえって売り上げは伸び悩んだ。

 

作業服顧客の反発から「ワークマン プロ」、FC加盟店に配慮してローカル生活商圏狙いの「ワークマン プラスⅡ」を立ち上げるなど業態政策にも迷いが生じ、「低価格・高機能ワークウェアの開発力と調達力」を生かせないいまま、24年3月期は既存店売上高が前年を割り、23年3月期と24年3月期は営業利益、経常利益、最終利益とも減益となった。

 

26年3月期に入ってもシーズンで好不調の波があったが、最終四半期(26年1〜3月)に至って機能性季節商材の好調とリカバリーウエアの大ヒットで四半期既存店売上高が17.7%増と一気に加速。既存店売上高は3月の22.7%増から今期に入った4月も26.4%増と勢いが増しており、再び成長軌道に乗ったのは間違いない。

 

大変貌して再成長に転じた後、迷いが生じて踊り場に陥ったが、原点回帰して再び成長軌道に乗るという波瀾万丈な変遷を見せたワークマンだが、この勢いでユニクロに迫るカジュアルチェーンに飛躍していくのだろうか。

 

■一気好転して加盟店を潤した26年3月期決算

 

ワークマンの26年3月期は既存店売上が9.0%伸び、チェーン全店売上高は14.3%増の2092億3400万円と2000億円の大台に乗った。直営店売上高(ワークマンの「直営店」は自社で開発して加盟店に渡すまでの路面のトレーニングストアと商業施設内の運営委託店)が41.7%も伸びて平均売上高は3億円に迫り、加盟店売上高も11.4%伸びて平均売上高は1億9000万円に迫った。既存店平均年商も1億9166万円と前期から10.1%、19年3月期からは70.3%も伸びたから、加盟店の懐(ふところ)も相応に潤ったと思われる。

 

業態別では「ワークマン カラーズ」、「ワークマン プラス」の新店や既存店、改装店が売り上げをけん引。カテゴリー別ではリカバリーウエアがヒットした「メディカル」(9倍増でシェア5.6%)や「カジュアル・スポーツウエア」(48.5%増でシェア27.2%)が大きく伸びた。かつての主力だった「ワーク」は1.5%増にとどまってシェア49.9%とついに過半を割り、「アウトドア・スポーツ」は10.3%減少してシェアも17.3%に低下した。

 

24年3月期は「ワーク」が57.6%を占め、「アウトドア・スポーツ」が18.0%、「カジュアル・スポーツウエア」が24.4%だったから(「メディカル」は存在しなかった)、2期間で「ワーク」は7.7ポイント、「アウトドア・スポーツ」は0.7ポイント低下し、「カジュアル・スポーツウェア」は2.8ポイント上昇した。

 

期末店舗数は「ワークマン カラーズ」が「#ワークマン女子」からの転換31店、「ワークマン プラス」からの転換1店を含めて70店増の87店、「ワークマン プラス」が「ワークマン」からの転換55店を含めて66店増の711店となった一方、「#ワークマン女子」は半減して31店、「ワークマン」は62店減の255店と19年3月末の825店からは3掛けに減少し、合計41店増の1094店となった。中期目標では「ワークマン」(最大200店)と「ワークマン プラス」で1100店、「ワークマン カラーズ」で400店(「#ワークマン女子」からの転換を含む)、計1500店としているが、26年3月期末で10店あった「ワークマン プロ」は存在しない。

 

商業施設の直営店(実態は運営委託)が増えたせいでFC店比率は92.0%と前期から0.7ポイント、23年3月期からは3.7ポイント低下したが、今後は「ワークマン カラーズ」の商業施設店舗が増えてもFC店比率は下がらないと思われる。これまで封じてきた法人FCを25年9月から解禁したからで、今年中に10社が商業施設の16店舗を担うと開示している。

 

ワークマンのFCは個人事業主を対象とした運営委託型(労働力だけで資本の負担は求めない)だが、商業施設内店舗は資本力も店舗運営組織も持つ法人FCに任せるのが合理的という判断になったようだ。法人FCによって好立地の商業施設店舗が拡大すれば成長が加速し、チェーン全体の販売効率や在庫効率も向上が期待される。ワークマンの商業施設内直営店はこれまで地域の販売代行業者に運営を委託していたのだから必然的な帰結で、「ワークマン プラス」立ち上げ直後から法人FCの解禁を提言していた私としては細やかながら溜飲を下げた。

 

■株式会社ワークマン(FC本部)も過去最高益

 

株式会社ワークマンの売上高(「営業総収入」)は直営店売上高と加盟店向け商品供給売上高からなる「売上高」、加盟店からの収入その他からなる「営業収入」で構成される。26年3月期は「売上高」が19.6%増の1192億4600万円、「営業収入」が11.7%増の416億600万円、「営業総収入」は合計して17.5%増の1608億5200万円だった。

 

このうち「加盟店からの収入」と「加盟店向け商品供給売上高」を合算して加盟店売上高で割れば調達原価を含む本部側の取り分率が計算できるが、前々期の73.45%から前期は72.07%、当期は71.14%と前期から0.93ポイント、前々期からは2.31ポイントも圧縮されたことが分かる。ワークマンは業績の拡大に上乗せして加盟店に報いたわけで、「ホワイトフランチャイザー」という世評を裏付ける善行が決算書から見て取れる。

 

こう説明されてもワークマンのFCシステムを知らない方には意味がわからないと思うので、釈迦に説法をさせて頂く。ワークマンのFCシステムは「運営委託型」で、加盟店は店舗開発の投資も開業資金(3年均等償却)も在庫資金(低利貸付して分配粗利益の10%を返済していく)も不要で、ワークマンが立地選定して開発した店舗を家族労働中心(+パート&バイト)に運営する。粗利益の分配率は加盟店側40%/本部側60%だが、加盟店側には他に加点式のさまざまな報奨金が加わり、本部側は店舗投資の償却と地代(賃料に相当)や広告費を負担している。加盟店からの収入が粗利益の60%より1.4%ほど多いのは在庫貸付金の金利や開業費の償却などと推察する。

 

加盟店向け商品供給売上高(948億4900万円)と本部側の加盟店向け売上原価(約840億5000万円と推計)の差は「海外仕入れ利益」(直貿手数料と為替リスク保険か?)と推察されるが、108億円と開示しているから株式会社ワークマンの営業利益296億7600万円の36.4%に相当し、加盟店向け商品供給売上高に対しては11.4%に相当する。

 

為替リスク保険と予備収益の性格と見られるが、アパレルコントラクター大手のマツオカコーポレーション(ユニクロの主要サプライヤー)の26年3月期でも為替損益は為替調整後営業利益の過半を占めるから、直貿の為替リスク保険としては妥当な範囲と思われる。これはワークマンがコントラクター並みに海外生産・調達に深入りしている証左でもあり、再成長戦略の要である「マス化製品政策」を成功させる調達側の要件を相応に満たしている。

 

もうひとつ、本部と加盟店間には外部が知らない大きなギャップがある。計算すれば分かるが、加盟店売上高に加盟店粗利益率(36.9%)を掛けて売上高から差し引いて売上原価を算出すれば、本部の加盟店向け商品供給売上高より217億8300万円も多くなる。実はこれ、加盟店が本部指定サプライヤーから直接調達している品番の仕入れ原価で、加盟店仕入れ高の18.7%に相当する。本部はシステム上で掌握して在庫と帳合いを管理しているが、未だ2割近い売り上げがサプライヤー品番指名買いなのは「作業服ブランド神話」が生きているからだろうか。

 

「ワークマン」の在庫効率を支えたワークウェアサプライヤーによる多品種小在庫・継続販売のVMI※が、「ワークマン プラス」以降のカジュアルシフトとPB比率拡大(26年3月期は3.4ポイント上昇の71.9%)で崩れていく中、職人顧客の要望に応えるべくサプライヤー品番の直接調達が残されているのが実情だ。

 

それはともかく、FC本部たる株式会社ワークマンの営業利益は21.7%増の296億7600万円と、チェーン全店売上に対して14.18%、株式会社ワークマンの営業総収入に対しては18.45%、当期純利益は22.1%増の206億1800万円と同9.85%、12.82%となり、営業総収入、営業利益、経常利益、当期純利益、一株利益とも過去最高を更新した。ROEだけは14.3%と前期から1.3ポイント上向いても22年3月期の18.9%に届かず、資本効率には改善の余地があるが、踊り場から抜け出したばかりの決算期としては合格点と言えよう。

 

棚資産回転は期首期末平均法で3.71回と前期から0.23回改善されたが、踊り場前の22年3月期の4.79回に比べれば1.08回も落ちている。Cash Conversion Cycleも117.5日と前期から11日近く延び、22年3月期からは32.5日も延びている。運転資金は22年3月期の1.9倍に肥大し、純資産対運転資金率は33.7%と同7.5ポイント上昇している。交叉比率は140.6と前期から10.7ポイント上昇したが、22年3月期からは50ポイント近く落ちている。

 

商品財務の減速はPB比率と直貿比率の上昇によるところが大きいにしても、棚資産回転は物流も含めて改善の余地が指摘される。再成長戦略の要となる「マス化製品政策」と生産から販売までのロジスティクスをどう整合するかで商品財務が効率化するか否か決まるのではないか。

 

※VMI(Vendor Managed Inventory)…あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給・補充生産を委任する取引形態。同一商品を継続補給する「台帳型サプライ」が一般的だが、アクセサリーやベルトなど服飾雑貨では類似アイテムをリレー供給する「トコロテン型サプライ」も多い

 

■業績好転の契機は原点回帰とマス化政策

 

業績好転の契機となったのはワークマンが得意としてきた機能性季節商品(前期第4四半期の場合は防寒系)の好調とリカバリーウェア「メディヒール」の大ヒットだったが、それらに共通するのが「機能性商品の低価格開発力」と「マス量販へのメジャーな仕掛け」(マス化政策)だ。

 

前者は「ワークマン」専業時代からサプライヤーと取り組んで培ってきたもので、「#ワークマン女子」以降は中途半端なカジュアルファッションに流れ「元来の強み」を失って迷走した嫌いがあったが、ハイテクも加味した低価格の高機能商品という「原点回帰」がワークマンの価値をマーケットに再認識させる契機となった。リカバリーウェアの長期的継続性はともかく、突破口となったのは間違いない。

 

この評価が継続するかどうかは今後の商品開発力次第だが、サプライヤーの商品開発力と補給力に依存したVMIからPB主体のSPAに転換した以上、自らスペック(生産仕様)を開発し補給体制(生産管理と物流)を担う必要がある。商品開発では外部スペックを借用する小売業のマーチャンダイザー制から開発チーム※2.を抱えて自らスペックを開発するメーカー型の開発体制へ、補給体制ではサプライチェーンの直接管理と物流体制の確立が問われる。

 

前期末時点で1094店を展開して遠からず2000店を目指す4ケタ・ナショナルチェーンとしては各地域に遅滞なく補給するリージョナルロジスティクス※3.が不可欠で、現行の東・中流通センター(群馬、伊勢崎、竜王のDC※4.)体制から27年稼働の岡山流通センターを加えて東・中・西3DC体制へ、当日着荷で全国をカバーするには北海道や九州が加わる5〜6DC体制、最終的には現在のしまむらに匹敵する10DC体制が望まれる。DCと断ったのは「マス量販へのメジャーな仕掛け」には消費地に在庫を積んでの欠品なき補給が不可欠だからで、横売り型のしまむらのようなリージョナルTC体制では対応できない。

 

「マス量販へのメジャーな仕掛け」とは、かつての多品種・少量在庫VMI体制とは対極で、圧倒的低価格・高機能の重点商品をリスクを賭けて大量生産して補給体制を構える一方、オンライン(SNSやネットCM)とオフライン(店舗メディア)からマスメディアCMまで活用して需要を拡張するもので、ワークマンは「1企画でチェーン全店売上高の10%を目指す」と定義している。事実“メディヒール”は25年9月〜26年3月で約115億円を売り上げており、同期間チェーン全店売上の9.4%程度を占めたと推計される。

 

振り返れば98年のユニクロのフリース、09年のジーユーの990円ジーンズは爆発的成長の契機となったが、ワークマンは26SSで「メディエール」「Xシェルター」「UVカット」「ファンウェア/ペルチェ素子ベスト」「機能性インナー」の5アイテムを「マス化政策製品」に挙げている。

 

※2.開発チーム…デザイナー、パタンナー、生産管理を軸にテキスタイルデザインやグラフィックデザインのスタッフが加わることもある

 

※3.リージョナルロジスティクス…中央のDCやFCから全国の店舗や顧客に物流(セントラルロジスティクス)するのではなく、生産地から各リージョナルのTCやDCに直送し、リージョナル内の各店舗や顧客に物流するロジスティクス手法で、ルート便によるローカルテザリング(店舗間在庫融通)や地域の宅配業者による即日配送で在庫効率と顧客利便を高め物流費を抑制する

 

※4.DCとTCとFC…入荷した商品を棚入れしてからピッキングして出荷する保管型のDC(Distribution Center)に対し、棚入れせず仕分けして送り出す通過型の物流施設がTC(Transfer Center)で、FC(Fulfillment Center)は通販の出荷用DC

 

■ワークマンはユニクロに迫れるか

 

ワークウエアやアウトドアウエアの枠を超え、低価格・高機能商品の「マス化製品政策」でカジュアルマーケットのメジャーポジションを狙うなら、低価格・高品質な「ライフウエア」(顧客を選ばない汎用デイリーウェア)で今や国内直営店売上高だけで8692億円、国内衣料消費の10.3%を占めるユニクロ(25年8月期)とマーケットを争うことになるのだろうか?

 

26年3月期のチェーン全店売上は2092億3400万円と国内ユニクロ直営店の4分の1にも満たないが、ジーユーの3307億円(25年8月期)には63%、アンドエスティHDの3044億円(26年2月期)には69%に迫る。前期の国内ユニクロ事業の伸び率が10.1%、ジーユ事業の伸び率が9.7%、ワークマンのチェーン全店売上高伸び率は14.3%だから、この伸び率が継続すると見てもワークマン全店売上高の4期後は3570億円ほど、対してジーユーは4790億円ほど、国内ユニクロ直営店売上高は1兆2770億円ほどになるから差は縮まりそうもない。

 

ワークマンの今期会社予想ではチェーン全店売上高は13.7%増を見込んでいるが、そんなペースではユニクロに迫るメジャーポジションには永遠に届かない。「ワークマン プラス」がヒットした20年3月期(31.2%増)、あるいはフリースブーム時のユニクロ(3期連続で33.6%増、106.1%増、82.7%増)ぐらいの爆発的成長が必要だが、ワークマンに秘策はあるのだろうか。

 

ワークマンが本気でユニクロとカジュアルマーケットの覇権を争うつもりなら、ワークマン流の万人向け汎用カジュアルウェア(ユニクロが言う「ライフウェア」)を確立すべく、小売業の枠を超えてデザインチームを抱え、デザインとスペック(生産仕様)を自ら開発してアップデイトしていく必要があるが、今のところワークマンはデザイナーやパタンナーを採用しておらず、総合職のマーチャンダイザーが商品企画も仕様開発も兼務するというマーチャンダイザー制を出る気配がない。ということは、ユニクロと同じ土俵で競う意思がないと受け取るべきだろう。

 

ワークマンとしてはユニクロと「カジュアルウエア」で正面張るのではなく、より低価格で高機能な「機能ツール商品」で広範な顧客を捉えて独自のポジションを確立し、ロードサイド生活圏の個人FC店と商業施設の法人FC店を両立させていく方針だと推察される。綿系のワークカジュアルを機能合繊系のアスレジャーが侵食していく長期トレンド下ではユニクロは旧世代であり、ワークマンが「機能ツール商品」を深耕していくなら時間をかけて世代交代が進む。「ワークマンはユニクロに迫れるか」と問われれば、「交わることなく別の道を進む」と回答したい。

 

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