小島健輔の最新論文

ダイヤモンド・チェーンストアオンライン
『存在意義とすれ違うチェーンストア衣料品』
(2026年05月14日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 衣料消費は2月以降、株高で潤った富裕層や賃上げで懐が暖かくなった女性や若者が牽引して上向いているが、チェーンストア衣料品は長期衰退を脱する気配もない。その一方で似たような価格帯のユニクロやしまむらは好調だから、チェーンストア衣料品だけがマーケットとすれ違っている。存在意義(レゾンデートル)が問われるほど本質的なすれ違いとは、いったい何なのだろうか。

 

■凋落が止まらないチェーンストア衣料品

 チェーンストア衣料品(肌着・用品を含む、以下同)の凋落が止まらない。26年3月まで25年11月(100.3)を除いて24ヶ月連続で前年を割り続け(店舗調整前、以下同)、暦年でも2012年以降、コロナからの回復局面だった22年(100.7)と23年(100.8)を除いて減少を続け、25年は5975億円とコロナ前19年の67.9%まで萎縮した。衣料品市場総体が8兆4200億円ほどとコロナ前の92%、百貨店衣料品も1兆5058億円と同90%まで回復したのと比べると衰退が著しい。

 長期で見ても、00年からの四半世紀で我が国の衣料品市場が6掛けに萎縮した中、チェーンストア衣料品は2掛け強(21.3%)に激減し、衣料品市場に占めるシェアは20.0%から7.1%に落ち込んだ。今やしまむら1社(26年2月期の国内売上6565億円、シェア7.9%)にも届かず、ユニクロ(25年8月期の国内直営店売上8692億円、シェア10.3%)には遠く及ばない。

 GMS(総合量販店)は衣料品売り場を縮小しコンセを拡大して直営売り場を圧縮して来たが採算は回復せず、イトーヨーカ堂が衣料品の直営から撤退する一方、イオンリテールはモール内イオンスタイルストアの大型衣料品フロアを試行錯誤しながら維持しているが、販売効率が低く採算には限界があるようだ。

 その一方でファミリーマートの「コンビニエンスウェア」やトライアルの「ROOM & OUT」など、「生活圏」で売り上げを伸ばす新勢力も台頭しているから、チェーンストア衣料品のレゾンデートルとは何なのかと考えさせられる。

 

■無理があり過ぎる広域志向・大型志向・おしゃれ志向

 米国のGMS(非食品総合店、事実上のPDS※)がディスカウントストアやカテゴリーキラーに圧されながらもまだ生き永らえていた90年代、来店客も疎な店内を視察しながら、こんな生活圏でこんなに巨大な衣料品売り場をどうして維持できるのかと訝しく思った記憶があるが、案の定、シアーズ(18年10月)もJCペニー(20年5月)も破綻してしまった。ファッション性で一世を風靡したターゲットも、低価格とOMO利便でアマゾンさえ脅かすウォルマートに圧されて勢いを失い、コロナ以降は食料品や美容関係を拡充して衣料品売り場が小さくなった。

商業立地には広域から買い回り需要の「遊民」(昼間人口)を集客するターミナル駅商業施設やリージョナルSC、地域「住民」の日常需要に応える最寄り駅商業施設やコミュニティSC、近隣「住民」の最寄り需要に応える路面店やネバフッドSC、さらにはコンビニや冷蔵庫がわりのミニスーパーまで多段階の購買局面があるが、「住民」の日常需要や最寄り需要に応えるのが「生活圏」立地の商業施設だ。

「食品」を核としたチェーンストアは日々の食材を持ち帰れる「生活圏」に立地するから、衣料品売り場は多様な好みの「遊民」の買い回り需要をカバーする必要はなく、しようとしても客数が限られるから運営コストや在庫消化が折り合わない。GMS(総合量販店)の衣料フロアで見られるブランドコンセは平場商品よりエクスクルーシブ(顧客を限定する)で高価格だから販売員を常駐させないと売れず、常駐させても人件費に見合う売り上げは稼げないから継続が難しい。ブランドコンセを運営するアパレルのコンセ平均月商は100万円に遠いケースが大半だから販売員を常駐させるのは困難で、採算も苦しい。

ブランドコンセは直営のリスクやコストを回避して広すぎる売り場を埋めたい、バラエティを広げたいチェーンストア側の都合がもたらしたもので、買い回り性の高価なコンセ商材が「生活圏」のチェーンストアに必要なのか疑問を否めない。もっと低価格で汎用性、機能性の高い日常衣料のパワーコンセプトがいくつもあるのではないか。

 

家計消費支出中(25年の二人以上世帯)、食料支出が30.2%を占めるのに対して被服及び履物支出は3.2%でしかなく、買い回り需要は「遊民」となってターミナル駅商業施設やリージョナルSCに流出するから、「生活圏」の被服及び履物需要は食料品の十分の一にも遠い。SSMの上層階に同面積の衣料・服飾雑貨売り場を乗せても販売効率はSSMの4〜5分の1に留まるのは必然で、それでも食品の2倍以上の広域から集客している計算になるから、そもそも無理があり過ぎる。GMS(総合量販店)の衣料・服飾雑貨売り場はコミョニテイ立地でSSM(食品とHBA)の半分、ネバフッド立地ではSMの2割、コンビニではラックの5%が限界ではないか。

リージョナルSC内のGMS衣料品フロアでもモールからの導入客は期待値に遠く(SSMフロアからの昇降客も限られる)、売り場面積は内部通路に割かれるから、販売効率はモール専門店平均の半分以下になる。多くの場合、月坪売上は数万円にとどまるから、パワーセンター(コミュニテイ商圏相当)衣料店の販売効率と大差ない。

好調とされるファミリーマートの「コンビニエンスウェア」でも2ラック(ラック数の4%ほど)を使って200億円しか売っていないから、3兆3200億円のチェーン売上に対して0.60%に過ぎず、4%というフェイス量に見合っていない(26年2月期)。一店平均売上も年間122万円、ラック当たり61万円に過ぎず、日販58.5万円から推計される平均ラック効率(427万円)の7分の1にとどまるから、手放しで拡大できるわけではない。

私は「コンビニエンスウェア」の販売効率が低位にとどまる要因は価格の高さにあると思う。コンビニのラックに「パッケージ陳列」される日用衣料品の価格はロワーポピュラー(しまむら価格)以下であるべきで、品質やスペックにこだわった現状の価格では購入を思いとどまる人の方が多いのではないか。「生活圏」の食品を核とするチェーンストアで販売する衣料品の展開規模や価格にはおのずから限界があるようだ。

※PDS(Promotional Department Store)・・・大衆向けの手頃なNBやPBを揃えた部門別編成の大型ソフトライン店。JCペニーやコールズに代表される。

 

■「生活圏衣料」のパワーコンセプト

 構成する個々のショップはともかく、GMS(総合量販店)の衣料品売り場でもしまむらでも品揃えは至って総花的で、ひとつのコンセプトが全体を通底するわけではない。それが客数が限られる「生活圏」で顧客カバー率を確保する古典的なアプローチであることは否定しないが、今時の消費者に刺さるインパクトは望めない。後述する新手の「生活圏」衣料品がインクルーシブなパワーコンセプトとカバー率の高いSKU構成(色×サイズ)で顧客を広げているのと比べれば陳腐という指摘は免れないだろう。

 イオンスタイル衣料品でも多くは世代やカテゴリー、シーンに対応する総花的あるいは既存業態を模したショップだが、時間をかけて育成してきたコンセプトショップもある。とは言ってもサステナブルコンセプトを追求する「セルフサービス」は「生活圏」より広い商圏を要するし、インクルーシブなライフウェアを狙った「TVC」はベンチマークする「UNIQLO」と比べれば商品開発力やMD展開力の格差が大きい。イオンスタイル衣料品はイオンモールの核店舗として広域から集客する役割だからPDS志向が強く、「生活圏」の衣料需要をインクルーシブにカバーするという方向とは根本から異なる。

 ファッションデザイナーの落合宏理氏を起用して「いい素材、いい技術、いいデザイン。」にこだわって若者向けにおしゃれなカジュアルウェア(ほぼワンマイルウェア)を訴求するファミリーマートの「コンビニエンスウェア」は、コーポレートデザイン(とりわけファミマカラー)を「推し」感覚で打ち出すマーケティングが注目を集めたが、麻布台ヒルズ限定商品を除けば「ユニクロ価格」に収まり、こだわったとは言っても基本はワンマイルウェアだ。トライアルの「ROOM & OUT」も大半がジャージ素材のスウェットアイテムで、『部屋着の楽さと外出着のデザイン性を両立』と謳うだけに「生活圏」の衣料需要をインクルーシブにカバーするインパクトがある。

 

 前世紀のデイリーカジュアルはジーンズとアメカジの「綿系ワークウェア」がベースだったが、リーマンショック以降はアクティブスポーツウェアの機能性がデイリーカジュアルに波及した「合繊系アスレジャー」が台頭して「綿系ワークウェア」に取って代わり、デイリーカジュアルは軽量で高機能なライフウェアに進化した。その意味で「UNIQLO」は旧世代であり、デイリーカジュアルはアスレジャー軸のライフウェアに交代していく公算が高い。

 「UNIQLO」をベンチマークして来た「TVC」は旧世代を否めないし、「スポージアム」はスポーツブランドの品揃えを出ず、どちらも「生活圏」をインクルーシブにカバーする新世代ライフウェアとはなり得ない。ターミナルの商業施設ではマッシュHDがデザイン性の高いアスレジャーブランドを広げているが、「生活圏」をインクルーシブにカバーするものではない。トレンド性の女性向けカジュアルなど試行錯誤の果てに高機能デイリーカジュアルという「正解」に帰着したワークマン、あるいは「ROOM & OUT」のパワーコンセプトと圧倒的な低価格、環境色(ナチュラルなベーシックカラー)に色を絞ってサイズを広げる単品MDで「生活圏」にフォーカスするトライアルの「RIALT」に注目するべきだろう。

 

■「生活圏衣料」に求められる軽人時運営VMD

 客数が限られる「生活圏」では顧客を選ばないインクルーシブなコンセプトに加え、幅広い顧客を捉えるイージーなフィットやサイズ展開、日常に溶け込む環境色が問われるが(「#ワークマン女子」は派手なアウトドアカラーで顧客を限定した)、食品を核とするチェーンストアでは買い易く運営し易いVMDも重要だ。

 ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」はコンビニFCに無理のない軽人時運営が可能なパッケージ陳列を選択したが、今や広域商圏に登った「UNIQLO」はフェイシング管理やマテハンに大量の人時を要する畳み陳列主体の棚割りVMDを踏襲しているし、「UNIQLO」をベンチマークする「TVC」は「生活圏」の需要を上回るフェイシング量で畳み陳列主体の棚割りVMDを訴求している。その点では「RIALT」も同様で、単品集積VMDのインパクトも必要だが、客数の限られる「生活圏」で展開するなら軽人時運営可能なVMDに移行するべきだと思う。

 肌着や部屋着・寝衣、定番的なアパレルはサンプルを添えてパッケージ陳列するのに加え、デザイン性のアパレルやルックもハンガー陳列で棚割り訴求するのが原則で、「UNIQLO」のようにフォールデッド(畳み陳列)を積み上げるのはパワー単品に限定するべきだが、しまむらのようなスリーブアウトばかりの心太陳列になってはVMDのインパクトが期待できない。その回答として、最近の「ジーユー」や「coca」のVMDが参考になるのではないか。

論文バックナンバーリスト