『SPA化が進むアパレル業界と外国企業の参入』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔
その一方で、売上対比の小売不動産比率(家賃、保証金金利、内装償却費など)は93年の14.0%から07年には20.3%に、販売人件費率は91年の10.7%から07年には14.0%まで上昇。本来ならこのコスト増が収益を直撃するはずだが、上場アパレル企業の決算に見る営業利益率は06年までは逆に上昇傾向にあった。消費景気が暗転した07年下期以降はさすがに急落に転じたが、この間の営業利益率の上昇をもたらしたのがSPA化による粗利益率の向上だった。
70年代まではアパレルメーカーと小売業の際ははっきりしていたが、80年代初期のDCブランドブームを契機にアパレルメーカーの直営店展開がメジャー化する一方、90年代には中国のアパレル生産基地化を背景にAMS(APPAREL MANIFACTURING SERVICE、企画開発機能を持ったOEM業者)が急速に台頭し、小売業のオリジナル開発は飛躍的に容易となった。
AMSは生産手配のみならず、デザイナーやパターンナーを抱えて商品企画から仕様開発まで代行し、小売業者は開発したい商品のイメージを伝えるだけでオリジナル商品が手に入るようになった。近年は機動的商品開発を志向してアパレルメーカーまでAMSを積極活用するようになり、アパレル業界の商品開発は一変してしまった。結果、アパレルメーカー、小売業の双方からSPA化が急進して両者の際は崩壊し、消費者が店頭で見ても両者の見分けは困難となった(業界人でも内情を知らないと見分けはつかない)。
製販を一貫する効率的で利幅の厚いSPAがバリュー(価格対比の商品価値)でも収益力でも突出する事になり、バリューでも収益力でも劣る卸業者と仕入れ依存の小売業者は急激に淘汰されて行った。SPA化はインショップ展開の百貨店ブランドでも急進したが、30%台半ばから後半という百貨店の高歩率(売上対比家賃比率にほぼ相当)が災いして割高となり、ほぼ半分の家賃比率で済む駅ビルやショッピングセンターに出店するSPAとのバリュー競争に敗北して急速にシェアを失いつつある。
工業的SPAがスタッフを抱えて企画・開発を自ら行うのに対し、ファーストSPAは様々な機能を持ったAMSに企画・開発の多くの部分を委嘱している。だからこそ社内の労務的限界に縛られる事なくクイックに市場対応し、開発に関わる固定費も低く抑えている。
ファーストSPAの強みはクイックな市場対応であり、工業的SPAの強みは圧倒的なバリューに他ならない。ファーストSPAは鮮度で勝負するも開発期間が短いだけに類似商品との同質化に巻き込まれ易く、工業的SPAはバリューで突出するも開発期間が長いだけに鮮度は訴求し難い。どちらもメリット・デメリットがあって甲乙を付け難いが、工業的SPAは大きな市場を大仕掛けで狙うビジネス、ファーストSPAは小さな市場を手軽な仕掛けで狙うビジネスであり、それぞれの特性を活かして市場を分け合っている。
この両者に加え、セレクトショップのバラエティやミックス感、SPAのバリュー感と収益性を兼ね備えたセレクトSPAという類型もメジャー化している。ユナイテッドアローズやシップスはその好例だ。
商品開発力やバリュー感に加えて店舗オペレーションやロジスティックス、イメージ戦略など、システムと経営戦略の総力戦になるから、ファーストリテイリングを筆頭とする国内SPAがどう闘うか注目される。









