[販革の眼]
岐路に立つSPA
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔
小売価格を上げないで(実際には07年〜10年間に平均購入単価は逆に14.5%も低下している)原価率を切り下げれば品質は確実に低下するが、OEM/ODMに依存するカジュアルチェーンの商品を見ると縫製はともかく素材は間違いなく切り下げられている。高騰する羊毛や綿の混率を下げて露骨にローカル合繊比率を上げた商品が急増しているのだ。
かつて70年代に米国でKマートの商品を見た時、こんな合繊(途上国生産のローカル合繊)だらけのガサガサした商品を日本人が受け入れる事は決してあるまいと思ったものだが、ファストファッション上陸以降、日本の若者は嬉々としてそんな商品を受け入れるようになった。業界の玄人には嘆かわしい変化とも感性の退化とも受け取れるが、事実として正視するしかない。
品質と原価率を切り下げ、宣伝費をかけてブランディングする企業が勝ち組になる世相は世界共通のようだが(とりわけ中国では一般的で、原価率は20%を切る)、流通革命の理想とは大きく掛け離れている。ファストファッション以降のSPAは『製販一貫の効率的なビジネスモデルで良品を廉価に供給する』という理想を見失っているのではないか。
振り返ってみれば、94年から02年にかけて百貨店業界で似たような退化現象が進行した事が思い出される。バブル崩壊からの売上減少に直面した百貨店業界は売上減少を粗利益の嵩上げで穴埋めようと百貨店アパレル業界に歩率の積み上げを要求し、8年間でほぼ8ポイントも歩率が高騰してしまった。百貨店アパレル業界はそのコストを吸収すべく原価率を切り下げ、同期間に平均して33%から25%に8ポイントも低下してしまった。その過程で国内生産から中国生産への移行が急進して国内産地が衰退し、品質も相応に劣化して割高になって行った。結果、駅ビルなどとの価格やお値打ち感の差が顕著になって顧客離れを招き、百貨店の衰退が加速していったのだ。
理想を見失って調達原価率切り下げに走るSPA業界の体たらくを見るにつけ、かつて百貨店が辿ったと同じ道を転落して行くのではと危惧せざるを得ない。
初期配分は統一フェイス効率別配分方式を基本に、スポット商品や追加投入商品は投入枠設定傾斜配分方式を使い合わせて最適配分を図るとともに、シーズン在庫を計画通りに強制回転させていく再編集運用と店間移動のルーチン体系を整備し、ロスを極小化するマークダウンの手順を仕組む。このプロセスを効率的に回すには、什器体系とそのレイアウトパターンを標準化して陳列フェイスを統一制御する一方、エリア毎にフラッグシップ/標準店/集約処分店を計画的に布陣し、エリア内の店間移動手順を定型化しておく必要がある。
このようなプロセスと技術の精度を磨いて行けばシーズン在庫の消化回転が滑らかになり、ロスは加速度的に圧縮されて行く。現場の運用精度が高まればロスに加えてコストも低下し、少ない利幅で高収益が稼げるようになる。
バリュー追求の究極はファクトリーダイレクトSPAだが、アイテム特化のシングルライナーあるいはトップ&ボトムのダブルライナーでないと実現は難しい。メーカーズシャツ鎌倉(シャツ)やバリュープランニング(パンツ)がその好例で、中間業者を入れずロスやコストを抑えて調達原価率を例外的なほど高く保っている。シャツやパンツに加え、かつてはスカートのシングルライナーも存在したし、ニット/ジャージのシングルライナーやそれにパンツを組み合わせるダブルライナーも有望と思われる。素材の差別化や機能訴求に加えて特有のMD展開が欠かせないが、低ロスで高バリューなファクトリーダイレクトSPAは高コスト化した現世代SPAに代わる究極のSPAとして注目すべきであろう。










