『バナナ・リパブリックの日本上陸に何を学ぶか』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔
「ギャップ」の進出から10年を経て「バナナ・リパブリック」がついに日本上陸を果たしたが、その米国市場におけるポジションの変遷と日本市場への進出手法には興味深いものがある。
「バナナ・リパブリック」はギャップ社が展開する4業態(他に「ギャップ&キッズ」「オールドネイビー」、8月24日に第一号店を開設した「フォース&タウン」)中、ハイエンドに位置するボリュームベター級コンテンポラリーカップル業態。カジュアル〜ビジカジに加えてランジェリーやフレグランスまで、上質で洗練された商品をハイグレードな店舗環境で提供している。米国及びカナダに462店(7月末)を展開して22億7000万ドル(05年1月決算)を売り上げているが、海外進出は今回の日本が初めてだ。
標準店は約800平米だが、大都市ダウンタウンのフラッグシップ店は1,200平米を超える。オフホワイトの壁/天井にダークウッドの床を基調としたモダンクラシックな店舗は「ギャップ」とは一線を画したハイグレードなもので、ハロゲン系の点照明とウォールウォッシャーで上品な陰影をつけている。日本での店舗も、やや小振りで壁面陳列高が低く抑えられている事を除けば基本的に米国と大差ない。
米国ではコンテンポラリーなカジュアルラグジュアリー業態に位置付けられており、アバークロンビー&フィッチ社の「RUEHL」もこのカテゴリーに入る。日本的に言えばナチュラルモード系トランスキャリアブランドか同クラスのメーカー系セレクトショップに相当するが、最初からこのポジションにあった訳ではない。その創業からギャップ社傘下になっての変身と洗練の歴史を振り返っておきたい。
外資企業は何から何まで本国のやり方を押し付けるケースが多いが、悲惨な結末をもたらしたケースも少なくない。カルフールの撤退はその最たるものだが、今も四苦八苦している進駐軍が目に付く。ギャップ社とて10年前の「ギャップ」進出時には月度の販売指数/アイテム構成、サイズバランスの調整だけで済まそうとして出足がもたついた。その苦い経験を活かし、「バナナ・リパブリック」の進出にあたってはローカル対応の手を尽くしている。その要点は以下の5項だ。
1)全商品のパターンをニートな日本仕様に変更
2)約3割の商品は日本向け高級素材に変更
3)約3割の商品は米国にない日本専用企画
4)日本市場のトレンドに合わせたルック訴求
5)セレクトショップ的なルック回転陳列の徹底
商品の日本対応においては本社のデザインチームがオリジナル企画を全面的に見直し、フィットのみならず素材から裏仕上げのディティールに至るまで日本の消費者に受け入れられる高い品質を追求したと聞く。ほとんどライセンス供与によるローカル対応と言って良いほどの徹底ぶりだ。昨秋には模擬店舗を開設してテストマーケティングを行い、専任のマーチャンダイザーを日本に常駐させるなど、ローカル対応にベストを尽くしている。
これほどのローカル対応を行いながらも各商品の生産工場は変えず、パターンとディティール、素材、一部商品については染色(革製品)や仕上げ加工(洗いやプレス)まで変えたというのだから、かつてのギャップ社からは考えられない手の込んだ仕事ぶりだ。恐らくは日本市場プロジェクトに例外的な権限移譲が行われたのであろう。
店舗設計では米国の基本デザインに細かな仕様とサイズの修正が加えられ、運用においても日本市場に対応したキメ細かいルック訴求とセレクトショップ的なルック回転陳列が徹底されている。そこまでやりながら販売スタッフによる他店在庫の端末検索を容認していないのは全社のシステム変更を伴うからなのであろう。国内大手セレクトショップでは常識の販売サービスとなっているだけに残念な事だ。
手を尽くしたローカル対応もあって販売成績も好調に推移しており、デベロッパー各社も今後の出店政策に注目している。米国でも「ギャップ」より4割増しの販売効率を上げており、ブランドイメージとローカル対応の差を考えれば日本では倍近い効率が期待される。「ギャップ」も今回の「バナナ・リパブリック」なみにローカル対応を徹底すれば大幅な販売効率の改善が見込めるだけに、デベロッパー各社から要望が殺到するのは避けられないだろう。









