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小島健輔の最新論文

ファッション販売10月号
小島健輔の経営塾10
『G.U.に見るビジネスモデルの本質』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔


 ファーストリテイリングがついに低価格業態を立ち上げる。この10月から首都圏に25の直営店を開設するという「G.U.」(ジーユー)がそれで、「ユニクロ」の下を潜るロワーポピュラープライスで短サイクルのトレンドMDを展開するという。低価格・高品質定番・補給・自社開発の「ユニクロ」に対して最低価格・高鮮度トレンド品・売り切り御免・外部活用開発と位置付け、異なる狙いと仕組みのSPAで新たなマーケットを開発せんとするものだ。

「ユニクロ」と対極のビジネスモデル

 基幹業態の成長力を超えて企業が成長すべくプロモーショナルな低価格業態を開発するというのは、これまでファーストリテイリングがお手本として来たギャップ社の軌跡をまたも辿るものだ。ギャップ社が93年から本格展開した低価格ファミリー業態「オールド・ネイビー」は急成長を続け、06年1月期末では959店舗/年商68億6000万ドル/全社シェア42.8%に達し、「ギャップ&ギャップキッズ」(シェア33.6%)を大きく凌駕している。私は99年7月刊行の「SPAの成功戦略」(ファッション販売別冊)において「ユニクロ」に続く低価格業態開発を提議しており、一兆円構想実現には遅きに失した感さえある。 
 「ユニクロ」は高品質定番品を継続補給する(実態は大ロット調達品を売り減らすという事)事業形態ゆえ、事業規模の拡大とともに川上の供給確保が避けられず調達射程が長期化し、高鮮度・高回転という対極の理想からはますます懸け離れていった。そこに新たな事業チャンスを見い出したのは当然の帰結と言えよう。 
 高品質品の大ロット調達という足枷に縛られて川上まで遡ることなく短射程でOEM調達すれば、‘旨い安い速い’が容易に実現出来る。この対極のビジネスモデルへの進出はハニーズの買収で実現すると見ていたが、自社による「G.U.」開発という選択となったのは意外な気さえする。昨夏までならほんの700億円ほどでハニーズの全株が買えたのだから。 
 意外と言ったのは、このビジネスモデルを買収に匹敵する速度で拡大するのは極めて難しいからだ。‘旨い安い速い’のOEM事業を立ち上げる事は容易いが、手軽なだけに類似業者との競争も激しく、規模メリットも出し難い。百億円二百億円までは短期に伸ばせても、千億円の大台に乗せるには10年という歳月を要するのではないか。初年度百億円もともかく、5年以内に千億円という目論みには無理が在る。多業態展開で実現する手もあるが(ワールドの06年3月期の小売SPA事業総売上は904億円)、ファーストリテイリング社の望む手法ではないだろう。 
 ギャップ社における「オールド・ネイビー」の役割を担うには「ユニクロ」に匹敵する突出したインパクトが必要で、「G.U.」が‘旨い安い速い’のOEMビジネスを超える何を備えているのか、10月半ばに開設される第1号店を見た上で論じたい。
 
ビジネスモデルを規定するもの

 「ユニクロ」と「G.U.」の対比に見るように、ビジネスモデルはマーケットサイドとサプライサイドの両輪のからみ方で位置付けられる。突出した競争力がこの両面にあれば成功の確率は極めて高いが、片側に限られるようだと強力なコンペティターや情勢変化によって失速するリスクを抱える。ましてやマーケットサイドとサプライサイドが矛盾するようでは離陸も覚束ない。この両輪を連係するのがマーチャンダイジングであり、ロジスティクスも含んで店頭と調達を時系列な流れに組む必要が在る。どちらかを変えると対応して対輪も変えざるを得ず、両輪の連係性は極めて強い。
 マーケットサイドでは実質的独占が形成出来るか否かが最大のポイントであり、商品自体の完成度か鮮度/価格/品揃え構成と提供方法/ターゲットと立地、の少なくとも2点以上で独占的ポジションを確保する必要がある。サプライサイドではコスト/品質/速度(マーケットサイドの価格/完成度/鮮度に相当)が問われるが、自社開発とアウトソーシングのバランス、川上への踏み込み程度で射程距離も含めて三要素が連動するから、一体で捉える必要がある。
 現実のビジネスモデルでは、これにロジスティクス(物流)、エンプロイメント(雇用体制)、ファイナンス(資金調達)の3面が加わって優劣が定まる。COOの領域はマーケットサイド/サプライサイド/ロジスティクスまでだろうが、CEOではすべてが領域となる。全5面をどうバランスしてビジネスモデルを組むか、何を優先して突出させるか、匙加減はCEOのキャラクター、すなわち鬼神の領域に属する。
 直感的にイケると判断されるビジネスモデルも、この両輪のからみ方、3面の裏付けを検証すれば意外な弱点も見えて来る。だからダメと言うのではなく、必要な段階までに弱点を是正出来るか否かを判断すればよい。離陸さえすれば規模拡大とともに是正出来る事も多いから、やる気になってる現場の梯子を外すか背中を押すか思案のしどころだ。



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