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ファッション販売2002年1月号 『専門店V字回復の構図』(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔九月の神風とV字回復専門店日曜が前年より1日多く営業日数も平均して0.4日多いことなどで3.4ポイントの押し上げ効果があったとは言え、バブル期に匹敵する神風となって販売低迷に苦しむ業界の救いとなったのは間違いない。ただし、前述した前比水準が平均だったのだから、それ以下の成績の店は回復したとは言えない。加えて、十月第二週以降は各業態とも急激に数字を落としており、九月の神風は単なる前倒しに終わる公算が高い。「ユニクロ」など、既存店売上が24.6%減、全店売上も5.3%減と急失速してしまった。 が、九月の神風の中でも水準を大きく上回り、十月も好調/堅調を継続している一握りの専門店がある。それもしばらくの低迷からのV字回復なのだから、低迷に苦しむ専門店業界としては『どうやって回復させたの?』と膝を乗り出したくもなる。 V字回復の主役はカジュアル専門店突出しているのがユナイテッドアローズで、5月以降、客数が急回復して九月の既存店売上は46.8%増に達し、九月中間決算の営業利益率は前中間期の5%から11.9%へと一気に回復。店頭公開当時の勢いを取り戻した。10月も既存店売上が32%増と好調を継続しており、V字回復を見せつけている。 この他にもマックハウスの九月既存店売上が31.3%増、レオも同33.4%増、シーズメンも同36.1%増と浮上/加速する店が続出し、カジュアル市場総体が久方ぶりに活気づいた。 V字回復の要因各社の公表している回復要因を要約すると、タカキューでは『店舗毎の立地や客層に対応したタイプ別品揃え』、ポイントでは『立地や客層に対応した業態の再編と個性化』、ユナイテッドアローズでは『特性別商品構成と売場オペレーションの再構築』という事になるが、基軸はほとんど共通している。その背景も含めて共通する回復の構図をまとめれば、以下の三点に尽きる。 1)価格競争と同質化からの脱却 数字の上では目立たないが、V字回復のすべての原点となっているのが価格競争と同質化からの脱却だ。「ユニクロ」的万人うけ幻想からの脱却と言ってもいいだろう。 過去二年ほどの間、「ユニクロ」の国民的人気に惑わされ、カジュアルチェーンから大手セレクトショップまで大なり小なり、低価格・高品質・万人うけ商品に流された事は否めない。それによって価格競争に巻き込まれたばかりか自店のポジションが曖昧になり、専門店としての顧客の支持を失ったのが最大の失速要因だった。V字回復各社はようやくその失策に気付き、自店のポジションを曖昧にする低価格ベーシック(万人うけ)商品をカット。自店のキャラを明確に打ち出す付加価値商品と自店ゆえのこだわり定番の再構築を急いだ訳だ。 「ユニクロ」フィーバー下で商品単価を二割以上も落としたカジュアルチェーンも多く、元ポジションへの回帰だけでその分の増収効果が出る。が、それには「ユニクロ」以前を格段に上回る付加価値創造力が不可欠で、次の二点が避けては通れない課題となったのだ。 2)NC的標準化幻想からの脱却 万人うけ幻想から脱却して自店のキャラとポジションを訴求する品揃えに回帰するとなれば、ナショナルチェーンという幻想からも脱却しなければならない。 多くのカジュアルチェーンは成長過程で郊外大型SC(モール)や量販店系箱型疑似SC、ロードサイドやパワーモールまで手を拡げてしまったし、大手セレクトショップにしてもダウンタウンの路面やターミナルのファッションビルから百貨店内、一部の郊外大型モールまで立地を拡大していた。これほど多様な立地に拡げては客層もテイストも価格帯も絞り切れず、中庸路線に収斂していく他はなかったはずだ。そこに「ユニクロ」的万人うけ幻想に付け込まれるスキがあったのではないか。 このNC的標準化幻想を脱して立地と客層別に業態、あるいは品揃えタイプを細分化再編し、対応困難な店は閉め、キャラとポジションを訴求出来る体制に組み直したのがV字回復の起点なのだ。タカキューではビジネスの「タカキュー」を量販店型、モールSC型、総合大型、特殊店舗、アウトレットの5タイプ、カジュアルの「ムービン」をEC型、AC型、トレンド総合型、ヤングレディス型(「ネットワン」)の4タイプに再編、ポイントは全百一店を「ローリーズファーム」「エヌフィロー」「グローバルワーク」等、三店から五十店までの七業態に再編している。 かつてナショナルチェーンと言われた大手専門店チェーンはあらゆる手を打ちながら凋落を止められなかったが、最後の最後になって一部はキャラを明確にした複数の業態に細分化再編して回復のチャンスを掴みつつある。これも今回のV字回復と共通する図式と見て良いだろう。 3)付加価値型SB開発への転換 「ユニクロ」幻想下では価格優先のベーシックMDが追求され、価格競争と同質化の泥沼に陥ったが、立地と客層別に業態や品揃えタイプを再編してしまえば、自店のキャラとポジションを訴求する付加価値型SBやこだわり定番SBを拡充出来る。事実、タカキューではPB比率が前中間期の20.7%から今中間期では48%に急伸して粗利益率が+2ポイントの48.6%に上昇、ポイントでもPB比率が前中間期の68.5%から今中間期では84.2%に伸びて粗利益率が+3.5ポイントの53.2%に上昇している。セレクト系ゆえにPB比率拡大には限界があるユナイテッドアローズでも、PB比率は前中間期の35.6%から今中間期では39%に伸びている。 いずれの場合でも単にPB比率が伸びたのではなく、高機能素材や高質素材を使ったり付加ディティールや後加工に凝った付加価値訴求商品がSBの主力となった点が共通している。「ユニクロ」的万人うけベーシック商品の幻想から、V字回復各社のSB開発はようやく脱却出来たのだ。 4)ポジションとコスト構造の再確立 「ユニクロ」の万人うけビッグサクセスの幻影に振り回された二年間でカジュアル専門店各社はすっかり自分のマーケット・ポジションを崩してしまったが、V字回復各社は前述した三点を克服して自社のマーケット・ポジションを再確立することが出来た。専門店はやはりナロウ&ディープに切り込んでこそ活路が開くものなのだ。 新手のセレクトショップや裏原系マイナーSPAはもちろん、最近では百貨店インショップでもナロウ&ディープに切り込むブランドが既存店売上を超倍ペースで伸ばしている。トレンドを生に取り込んで同質化する既成ブランド/SPAを尻目に、独自の“こなし”にこだわったブランドやセレクトショップが敏感な客を捉えて急伸しているのだ。 立地と顧客に対応して業態やタイプを再編し、独自に“こなし”たSB商品を拡充していけば、立地と顧客に相応したコスト構造を確立出来る。ターミナル並みに高コスト化してしまった郊外大型モールにあって利益を確保するにも、高感度なターミナルにあって顧客の支持を得て利益を確保するにも、差別化SBを中核とした高粗利益体質が不可欠だ。V字回復各社は、マーケット・ポジションとともにそのコスト構造までも手に入れた。まだ「ユニクロ」の幻影を吹っ切れずに回復出来ないでいる専門店の経営者は、対症療法を脱してこのV字回復の戦略構図を真剣に学ぶべきではないか。 |
![]() ※誌名のないバックナンバーは「ファッション販売」です。 | |
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| 『無印良品の復活は何時か』2001年12月号 | |
| 『価格破壊第三波の旗手、ダイソーはバラエティストアを超える』2001年11月号「商業界」 | |
| 『台頭する新世代専門店の本質』2001年11月号 | |
| 『SCの明暗を分ける要件・・・イオンSCと他量販店系SCの差』2001年10月号「商業界」 | |
| 『ファッション・バラエティストアを開発せよ』2001年10月号 | |
| 『大型専門店導入のキーポイント』2001年9月号「URERU」 | |
| 『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年7月号「販売革新」短期連載-最終回 | |
| 『アベイルはポストSPAの星となれるか』2001年9月号 | |
| 『絶好調ユニクロに死角はあるか』2001年7月号 | |
| 『最新リミックスMD技法のすべて』2001年7月号 | |
| 『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年6月号「販売革新」短期連載-2 | |
| 『イトーヨーカ堂“減収減益”は止まらない』2001年6月号「商業界」 | |
| 『小島健輔の百貨店ゼネラルマーチャンダイザー再生論』2001年5月号「販売革新」短期連載-1 | |
| 『価格競争の終焉でファッション消費が復活する』2001年6月号 | |
| 『郊外百貨店MDの問題と革新』2001年4月号 | |
| 『早くも撤退が危ぶまれるカルフールに学ぶべきこと』2001年3月号 | |
| 『個の多様化とバリュー革新の新世紀へ 今こそ反撃に転ぜよ』2001年2月号 | |